誘惑
 




2階の商談室に向かう途中、廊下で女性用の香水の香りがした。
ムスクやジャコウ系の香りに近い、とろんとさせられる香りではあるが、
それとは何か違う、植物系の不思議な香りだ。
(社内の女性社員ではない。
ということは、O商事の例の営業担当か?
香水をかえたのか。)


O商事の営業担当は女性で谷玲子といい、
少しキツイ感じはするものの、身長は140センチくらい大変小柄でバネのありそうなしなやかな肢体の持ち主だ。
手と足が纏足をはき続けたように小さく、肌がきめ細かくしっとりとしている。
手の指は指を揃えると、獲物を取り込む海の悪魔のように柔軟そうで、
食中花のように淫靡なオーラを発している。
きれいにピンク色にマニキュアを施した様子は指輪をつけずとも、
宝石をあしらったようでもある。
少しつきだしたような唇といい、銀のアンクレットでアクセントをつけた、
艶めかしい脚とハイヒールの組み合わせは見てるだけで変な気分になってくる。

商談相手でなければ、とっくに口説いていただろう。
しかし、商談の進め方に多少、強引なところが、感じられるので、
 前回の話し合いではこちらがつっぱねた形になったいきさつがある。


              
(今回は出方を変えてくるつもりか。ひょっとして色仕掛けもあったりして・・・・
いやありえるぞ。そういえば前回も思わせぶりで、挑発的な仕草が印象的だった。)

峰は前回、危うく先方の要求を受け入れそうになった。
彼女が蠱惑的な瞳で峰の目をみつめたまま、髪をかき上げて
艶のあるピンクの唇をつきだして吐息でくすぐるように顔を近づけて 話をしていると、
冷静を保つのが難しくなり、思わず要求を飲みそうになってくる。

彼女自身の膝やスカートを撫でる白い指の仕草も扇情的だ。
彼女の香水の薫りとともに何か魔法をかけられたように、うっとりしてくる。
他の男ならいとも易々と丸め込まれてしまうだろう。

しかし、峰はビジネスに徹して一歩も譲らなかった、
(こんな小娘になめられてたまるか。)
鉄の精神力で彼女の魅力に抗い、先方の強引な要求を退けたのだ。

鉄といえば、峰のアソコが、彼女のかぐわしい香水の匂いや、
女が男を惑わすような仕草にジンジンと反応して、
商談を終え席を立つ際は、ごまかすのに冷や汗ものだった。

身体の血液が全て勃起したアソコに流れ、頭がクラクラしてしまった。
(要求を飲みたい・・・・)、
要求を飲む条件として、

男として、一個人としては、


(彼女の色香に溺れてみたい。)
峰はそんな妄想を必死で否定した。



そんな峰の内心を見抜いてか、
商談室の並ぶ廊下を二人、玄関に向かって歩いていると、
つと立ち止まり、
「また、お時間をとっていただけますか?」そう告げた後、
彼女は妖しく微笑しながら、、
峰に体温が感じられるほど近くに進み、
小柄な彼女は小悪魔のように下から峰の目をじっと見つめながら、「この次は・・・」
彼女の両手はゆっくりと動き、

そのゆったりとふくらんだ胸の前で合わさり、
左手は白い人差し指から小指を女性特有の柔らかさで細くすぼめ、

それを右手で軽く握って、「絶対・・・」
撫でるように往復させながら、
唇を突き出す仕草で吐息まじりの囁き声で

「堕としてみせますわ。」

「あなたを・・・」
 

そう囁いて握った右手からつきでた、左ての指先にピンクの唇で軽く
フッと息を吹きかけて微笑した。ピンクの唇から
少しのぞいた、白い歯が真珠のように峰を魅了した。
さらに甘い女性特有の香しい吐息にめまいを感じ、
何かが峰の心の奥でじわっと染み出してきた。

(なっっっ?ちょっっっ)
返答につまった峰を、
谷玲子は彼の内心をみすかしたように目を細め、
したり顔で唇の端をつり上げて微笑しながら、
「では、失礼します」
さっと彼女が身を翻した瞬間、彼女の髪が峰の鳩尾を撫で、、
彼女の香水の匂いを嗅いだそのとき、

白い指が峰の股間にツイッと触れた。
 (うっぅ)
偶然といわれるだろうが、ほんの一瞬の、その刺激で峰のアソコは
ズキンと脈打ち、寒気のするような快感に身体は震えた。
幸い、最後の一線は越えなかったものの、
峰の思いこみと、片づけられない印象に残る出来事だった。





(む、いかん、思い出していたら、起ってきた。
まずい、静まれ、静まれ・・・・)

( 今回は上司を同伴してきているんだ。
前回のような思わせぶりな態度はとれまい、
立場だってこちらが買うほうだ。
優位にってやる。)


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やり手営業ウーマン