「わかりました」ようやく返事があった。
「ミサトお姉様に惑わされないで」無理をして体を起こそうとすると、意外にも谷川は、アイの体調を気遣ってか、寝かしつけようとする。
「ご褒美はあとで、いつか、で結構です」ユーモアだろうか、似合わない、とアイは感じた。
この男がミサトとのプレイに、興味ないはずがない。
ミサトの部屋に忍び込んで変な気を起こされたくなかったが、今は谷川に頼むほかない。
谷川はアンプルをとった。
「今は眠られたほうがよいかと、」
そう言って谷川は、薬をアイに注射した。
アイは再び眠りについた。
後はわたくしにおまかせあれ
(浩一は私めが、逃がしてやりますよ)
(あんな若造になんか、アイ、様を・・・)
谷川もアイに施されたマーキングがあり、それがひどく疼いた。
「ハァハァ、アイ、様・・・」看護婦姿のアイに施された「治療」が、トラウマになっていた。
次々と患者、看護婦を手込めにしてきた自分が、意外な看護婦に言葉巧みに誘われ、変わったプレイを教えられ、
ついには、職場の分娩に使用する治療台に、大開脚で拘束された。
そして、手慣れた手つきでメスを操るアイに、下半身を剥かれ、一生脳裏に焼き付いて消えることのない「治療」をされたのだ。
自慢の肉棒を、耳かきのような金属棒で内側から嫐られた。
そのときから、谷川はアイなしでは生きられない、アイの肉奴隷に墜ちていった。
坂を転がるように、というよりは、崖から突き落とされたように、といったほうふさわしい。
悪魔のような笑みを浮かべるアイに嫐られると、頭の中が真っ白になり、セックス以上の快楽が得られた。
恍惚とした表情で見下すその眼差しが、網膜に焼き付き、目を閉じると谷川を悩ました。
そんな谷川は、浩一の全身に施された傷をみたとき、激しい嫉妬にかられた。
自分は少しづつ時間をかけて改造されたのだ。
知らぬ間に調教は始まり、気づいたときはアイの奴隷に染められていたのだ。
なのに、浩一はたったの一日で自分を追い越した。 アイが浩一を虜にしためくるめく快楽の責めは、
あのころの自分に施した経験があったればこそだ。
自分だけが、苦痛の果てに得られる究極の快楽を、アイはいともたやすく、たった半日で浩一に与えたのだ。それが我慢ならない。
谷川はミサトに嬲られたアイの下着を、ポケットからとりだすと、汗と香水の入り交じった生臭い匂いを餓鬼のごとく、むさぼった。
「アイ様・・・」病院では死に神のようだ、と陰口をたたかれる表情が、一転、だらしなくたるんだ。
それは、飼い主にだけにしっぽを振る、番犬を思わせた。
アイは夢の中で、廊下をたどって、浩一の部屋に向かった。
浩一の部屋のドアは薄く開いており、そこからミサトの声が聞こえた。
アイはそっとドアの隙間から中をうかがう。
うめき声を出しているのは浩一だった。
よく見えない。
浩一はベッドの下にいて、ミサトはベッドに腰掛けている。
ミサトは背中しか見えなかった。
ミサトの背中が蠢くたび、ベッドのしたから浩一の呻きがあがった。
ミサトがクルリと振り返り、アイと視線がぶつかった。
ミサトの唇が、声に出さず言葉を投げつけてきた。
「オ・タ・ノ・シ・ミ!(にこやかな笑みだった)」
ミサトが立ち上がってスカートを落とした。例のディルドがベルトで装着されていた。
両手にたっぷりとローションをとり、股間からつきだした責め具を前後にしごいた。
ミサトはもう一度アイに向かって、ニンマリとほくそ笑んだ。
アイを指さし、挑発するように人差し指で誘う仕草をした。
ローションに糸ひく指先が怪しい光沢を放っている。
たっぷりと塗り込められたディルドの先からも、透明なしずくとなり、ポタリ、ポタリ、と、絨毯に吸い込まれてゆく。
もう一度ローションを両手にまぶすと、それをたっぷりと浩一の後ろに塗り込む。
「アアアアォオオッ!」浩一は奇声をあげて腰をうねらせた。
浩一が犯される。
アイは部屋の中に入ろうとした。
が、ドアはびくともしない。
押しても引いてもドアは彫刻のように微動だにしない。
細身のアイでも、半開きの隙間を通れない、ミサトはそれを充分承知で、アイに見せつけるようにベッドの下の浩一の腕をとると、ベッド上に引きずりあげようとしている。
腕は赤いローションにテラテラとぬめりを帯び、ぐったりと力無くしている。
四肢にミサトの下着が絡まっており、バネ仕掛けのような男根は、ミサトの下着でジットリと包みあげられていた。
限界まで張りつめたソレは、浩一の股間で、繰り返し、繰り返し、跳ねあがるそぶりを見せていた。
ミサトがディルドの先端を浩一の後ろに押しつけた。
ズゥッ、ミサトが半分まで挿入すると、浩一の背中が弓なりにのけぞった。
「グングアァァ〜〜〜」
嬌声があがる。浩一は感じている。
ミサトがニヤニヤしながら、細かく前後に腰を揺すってやる、グァッ!グァッ!と、浩一は、聞くに堪えない哀れな嗚咽を漏らした。
雄の、敏感なしこりを、先端で、攪拌しながら押しつぶすように腰をつかうのは、ミサトの得意とするところだ。
「ふぐぁぁぁああ〜」
浩一の表情を見ようと、アイは瞬きひとつできなかった。
ベッドにあがった浩一は、目からドロドロと、白い涙を流していた。
飛び出した目は、グズグズと揺れ、半熟の卵のようだった。
そこでアイは、自分が夢の中にいることを思い出した。
が、目が覚めない。
谷川の薬のせいで、アイはこの悪夢からでることができなくなっていた。
夢だと分かっていても堪えられなかった。
アイは異様な光景に、興奮を覚えていた。
猟奇な幻想に溺れ、下半身に異様な感覚が拡がっていた。
アイは目の前に光景から目をそらさずに自分の花心に指を滑らせていた。
その夢は、ベッドの上、悪夢にうなされるアイの股間に淫靡な染みを拡げてゆく。
ミサトの犠牲者達は、迷路の中をミサトの仕掛けた目印に従って、
更に奥深くへと導かれているとは気付かない。
ミサトが創造する快楽の迷路に出口などないのだ。
みな、しかけ扉を作動させ、後戻りはきかなくなる。
行き着く先。それは、ミサトの責めからなる快楽地獄。
もうたくさん、と思っていても断れない。
ミサトは甘い濃厚な蜜のような快楽を、心の器に並々とついでくる。
一滴たりともこぼすことは許されない。
主体性をミサトに預けてしまった以上、自分に選択権はなかった。
快楽が溢れてきた。それでも、ガブガブと口を付けて呑むしかないのだ。
ミサトと名乗る淫婦が生み出す快楽が、艶美な杯を無限に満たす。
ギリギリいっぱいまで全身に満ちてくると、中身が押し出されてくる。
中身の空っぽにされた人間は、ミサトの操り人形となり果てる。