「では・・・」ミサトが男根を解放してやると、浩一はベッドに沈んだ。
 「ハァハァ・・・」寸前で絶頂を奪われ、浩一の快感曲線は、ゆっくりと下降し始めていた。
 部屋の中では、空気がゆっくりと揺らぎ始めていた。
 どこからか、優しい風が皮膚を愛撫する。それは心地よく汗を奪ってゆく。
 窓の外に、闇色のセミの鳴き声が聞き取れた。
 少し、意識が醒め始めてきたのだろうか。浩一は周囲の感覚が戻りつつあるのを知った。
 しかし、そう思ったののもつかの間、
 「どこから始めましょうか?」耳にねばついたミサトの囁きが吹き込まれる。
 爛々と光るミサトの瞳が薄く細められた。
 ミサトが覆い被さってくると、浩一は更にベッドに沈む。例の媚薬の匂いが嗅覚に巻き付いてきた。
 浩一は再び快楽に沈められるのだと感じ取った。せつなくも、心が解放される感覚に周囲が霞んでゆく。
 自分は絶頂を奪われ、流れに翻弄され、浮いたり沈んだりの浮き草のようだ、と思った。
 耳からセミの声が再び遠のいてゆく。どうして、夜も鳴くのだろう・・・
 浩一は目を固く閉じた。 
 「あ、と・・・その前に・・・」ミサトの言葉にも浩一は目を閉じて聞こえないふりをした。
 浩一にも、だんだん、ミサトの手管が分かってきたのだ。
 あの目だ。見ると深みに嵌められる。
 吸い込まれるような鳶色の瞳に、精神が翻弄されるのだ。
 「ぼっちゃまは今から、私の許可なくイクことができなくなります」ミサトは再び宣告した。
 (そんなことあるわけない)、浩一は信じられなかったが、ミサトの自信たっぷりの笑みには、不安を覚えた。
 浩一がギュッと堅く目を閉じるのを見て、ミサトはあざ笑うように鼻で笑った。
 「んフフッ、否定してもダ〜メ、です。今ぼっちゃまは、受け入れました」ミサトの宣告に、浩一は思わず視線を合わせてしまった。その瞬間、ミサトの鳶色の瞳が、浩一の心を串刺しにする。
 「あっ、」ミサトがニンマリとほくそ笑んでいる。その目がキラッと光ると、頭の中に閃光が走る。
 「あ・・・」浩一の目がトロンとまどろんだ。
 (おばかさん・・・)ミサトにとって今の浩一のような抵抗など、慣れっこだった。簡単な一言で釣れるのだ。
 (う、受け入れていない・・・けど・・・あ・・・変だ・・・)変な気分になってきた。ミサトは揺さぶりに長けており、浩一はまだまだ経験不足だった。
 「昔むかし・・・といったとこかしら・・・」
 正気とは思えない状況から、ミサトは昔話を始めた。
 
 「え・・・」 ミサトからの責めが、ソフトになった。浩一は、まだ頭の中がはっきりとしている感覚に安堵した。
 「昔、昔・・・」ミサトの声がトロリとまぶたに重しをかける。ミサトが何か言葉を繰り返すと、まぶたが重くなる感じがした。
 「ある村に、成人してまもない若者がいましたとさ・・・」浩一は、既にミサトの術中にはまり、そこから一度も抜け出ていないことに気づいていない。ミサトがそう操作しているのだ。
 (あ・ある村・・・に・・・?) ミサトは、優しい癒しの手つきで、浩一の額を撫でながら、話を聞かせた。
 「そう・・・そうですよ。ある村のお話・・・」ニッコリと、やさしいメイドが、幼子に聞かすように額を撫で、話して聞かす。
 「その若者は、立派な体格でしたとさ・・・」まぶたを閉じると、ミサトの息が胸や、うなじに感じられた。
 「そう、まるで、ぼっちゃまのような・・・」ミサトは爪の先で、乳首をカリカリとくすぐった。
 「あ・・・・ふぅ・・・」アイの呪縛、リングがチンと、かすかな音をたてた。
 「ある日、若者は両親に、旅に出たいと申し出ましたとさ・・・」
 旅・・・ミサトが一言、一言語りかけてくるたび、何かに感覚を包まれていく感じがした。

 「両親も、我が子が外の世界を見て回るのはいいことだと思い、旅立ちに必要なものを買いそろえてやることにしました」
 ポタ、ポタリと、その感じは浩一のある感覚だけ残し、少しずつ包み込んでゆく。

 「家は裕福なので、立派な服、充分なお金と食べ物を用意することができましたとさ」
 「更に、父親は、彼に上質の皮で作られた靴を与えました」皮の匂いがした。浩一は、下駄箱の靴の皮の匂いを感じ取った。
 どこに、皮があるのだろう。浩一はつたなげに天井をみまわした。
 ミサトは、浩一の嗅覚の微妙な動きに気づいていた。幻臭に感覚を惑わされ始めているのだ。

 「父親は、息子に、旅先でトラブルには、決して関わらないように注意しました」トラブル・・・
 (トラブルにもいろいろあるわ・・・今のぼっちゃまがそうでしょ・・・) ミサトは主観をつぶやいた。

 「若者は、両親に見送られ、朝早くに旅立ちましたとさ、」
 (と・こ・ろ・で、朝立ちって、ご存じでしょうか?) メイドは小さくつぶやいて、スーッと、しなやかな指先で、男根をなぞりあげてきた。
 「!」電撃のようなショックだった。 性感帯が無防備になっていた。ミサトの指は、そのむき出しの神経を直接刺激してきたような快感だった。
 「く・・・」トク、トクと、男根が、絶頂に到達しようと、背伸びをしているようだった。
 (朝っぱらからこんな風になってるんですって・・・)ミサトは人差し指一本で、竿の部分をくすぐった。
 「ああ・・・」クックックッ、とミサトは陰険に笑った。2、3回の刺激で浩一はイキそうになった。
 自分の男根の先から、熱い汁が垂れたのが分かる程、鈴口が熱く、ヒリヒリするぐらい感覚は鋭くなっていた。 

 「暖かい季節でした。(アアア)空は晴れ渡り、森はところどころが若葉で華やぎ、(アアア〜)目を楽しませてくれました。にぎやかな小鳥のさえずりは、耳を楽しませ、旅を容易なものに思わせました。どこまでも歩けそうでしたとさ・・・」
 (ハァハァ・・・)
 ミサトが一気に言葉を続けると、なぜか浩一は、快感が息つく暇もなく、トクトクと、注がれているような気分だった。
 ミサトが言葉を続けて口に出すと、快感に息が止まりそうになった。
 (おかしい・・・からだが、おかしいよ!)
 「世界が自分を歓迎してくれているのだ、若者は、意気揚々と小道を進んでゆきましたとさ」
 (ああ・・・もう、もっときつくしてくれなきゃ、イケない・・・)
 ミサトはわずかな刺激しか与えなかったが、ぐんぐんと快感が男根に集まりだしていた。
 (メイドも、ぼっちゃまを歓迎しますよ。メイドの快楽地獄へようこそ・・・)
 「ああっ、も、もう!」ノロノロと、スローモーションのようにゆっくりと、ミサトの指先が快感を紡いでいる
 「次の目的地である村まで、半分とさしかかったところでした」
 「うぐぐっ!」ミサトはまたしても、残酷な寸止めをかけた。
 (く、くるしい、)汗ではりついたシーツが邪魔だった。

 半分、半分、浩一には、ミサトのその言葉が、遠い道のりに思えた。
 (ああ、早く・・・)
 自分が、何かの半分にしか到達していないような、焦燥感を覚えた。
 ミサトの指のくすぐりに、男根はトクン、トクンと、のけぞり、そのたびに鈴口から、熱い汁が垂れる。
 時間の針を、みずから進めようとするかのごとく、浩一は、ミサトの指に身をよせようともがく。
 (もっと、強い刺激が欲しい、もっと、早く・・・きつくして欲しい・・・)
 ミサトは声にだして、クスクスよく笑うようになった。 とても楽しそうなその笑いは、浩一にとって、心地よい鈴の音のように耳に響いた。
 もがく浩一の体は、汗を帯び、目をウットリさせるまばゆさがあった。
 夜のメイドは、淫靡な興奮に笑みが押さえられなくなっていた。

 「小道は曲がりくねった坂道にさしかかり、うっそうと茂った木立に囲まれ、辺りは薄暗く、すれ違う人もありません」
 (お願いだっ!)浩一が、大きく腰をせり上げようとすると、ミサトは浩一にまたがって抑え込んだ。
 「ああああっ!」ずっしりと、柔らかいヒップは、重しのように浩一をベッドに沈めた。



 「若者の前に、(ウフフッ)山猫が現れました」浩一を跨いで、ミサトは可笑しそうに笑いながら、続けた。

 「山猫はたいそうおなかをすかし、弱っていました。やむにやまれず、人間である若者に声をかけたのです」(昔話って不思議ね、動物が普通に人と喋るお話って多くありません?)
ミサトは浩一と向かい合う格好でまたがっていた。

 (や、山猫? ヤマネコって・・・アアアッ!イ、イ・・・)ミサトの話しに頭を使おうとすると、ミサトは、浩一に絶頂を与えるような指の動きで、思考をかき乱してきた。

 「お願いです」(オ、オネガイデス!)浩一も復唱していた。ミサトはゆっくり、ゆっくりと、浩一を上下にしごいていた。

 「何か食べられるものをわけてもらえませんか、と言いましたとさ・・・」(い、イカせてっ!)が、浩一が望むと、すぐにやめてしまう。 冷たく光る目で、浩一の欲望を見透かし、焦らして弄んでいた。

 (イ、イカセテ・・・)浩一は懇願させられている状態だった。もう、ミサトは完全に浩一の快感を支配していた。

 「ハァゥッ!」ときおり、羽根のような軽やかな刺激が、敏感な箇所をチラリとかすめてゆく。
 きわどい状態だった。メイドが触れたところは、、一瞬のタッチであっても、余韻が残されてゆく。
 そして、この瞬間にかすめた刺激は、、絶頂に達するきっかけに成り得た。下半身の奥で、ブッツリと太いこよりのちぎれる音がした。

 「イ、イグッ!あああっ!」ズキンとこみ上げる瞬間をミサトは許さなかった。
 「ぐぇへ〜〜〜!」またも、あの音だった。雪を固める音。それは、ガツンと頭の後ろを殴られるような衝撃を伴っていた。

 ミサトに何度も寸止めを繰り返されているうちに、そのときのショックが、だんだんと強く感じられるようになっていた。
 こうして、犠牲者は、ますます、ミサトの地獄に堕ちてゆくのだ。

 「若者は考えました。自分の持っている食料がある」(ウグググ・・・)殴られたように、頭の中がグラグラしていた。
 「しかし、この山猫に餌を与えてなんの得があろう。いや、むしろこの山猫は元気になって、自分に襲いかかるかもしれない」

 「あつっ!」ガリッとミサトが爪をたてて引っ掻いた。ミサトは浩一が気を失うことを許さなかった。
 「(クスクス)山猫は、弱った旅人が動けなくなるのを待って、襲いかかると聞いていましたとさ」
 「ハァハァ・・・」ミサトは、浩一の乳首にかしめられたリングを指先で弄ぶ。
 「若者は機知を働かせ、自分も食料がつきて困っているのだと、嘘を言いました」

 「ウッ、クッ・・・」ミサトが、リングを揺すっているだけで、乳首は、ジーンと疼き、堅くなった。

 「山猫は、若者の嘘にひどく傷つきましたとさ」
 ミサトは浩一の顎に手を添え、目をのぞき込んできた。
 (嘘、裏切りは、人を傷つけるわ・・・特に見破られるような幼稚な嘘は)
 ミサトの目が一瞬、浩一を責める目つきになった。
 「嘘、裏切りは許せません・・・」その眼差しに浩一は畏怖の念を覚えた。

 次に、ニッコリほほえんで、浩一の両方の乳首をかしめているリングを指先につまんだ。
 「ああっ!」両手で汚いものでもつまむように吊り上げてゆく。
 「山猫には、若者をかみ殺す牙がありましたが、狩るのは、自分が食べられる分だけと決めていました。 だから、若者を襲う理由はありませんでした」
 「アアッ!アアッ!ヒッ!」パチン、パチンと吊り上げては離す。
 「うっ、裏切りませんっ!」浩一の乳輪が真っ赤に腫れ上がり、リングにかしめられた傷口から血がにじむ。
 「ふん? そう?」ミサトはウットリと目を細め、乳首を責め続ける。
 「アアアッ!」血の臭いにミサトは興奮を覚えた。ミサトのショーツは、汗以外の体液でぐっしょりと濡れ、浩一の足にすりつけてやると、快感がゾクゾクと背筋を伝い、ブルブルと震えが走った。
 「ウフフフ・・・」クルクルと指で捻っては離し、引っ張ってはパチンと離した。
 「うっ、裏切ってませんっ!」浩一はそう答えることが、救いになる、と思った。
 「何の事です? ぼっちゃま?」しかし、ミサトは受け付けなかった。パチン、パチンと繰り返された。
 「アッ!ヒッ!ヒィッ!」パチン、パチンと頭の中でフラッシュが焚かれる。

 「嘘をつかれたのに、礼儀正しい山猫さんは、若者に「旅の安全を」と、言い残して立ち去りました、とさ」 
 「うっ、嘘なんかっ!アアアッ!」キリキリと乳首をつねりあげられた。

 「若者は、山猫が礼儀正しく近づいてきたことに何も感じませんでした」
 「ご、ごめんなさいっ!」何がなんだかわからないが、浩一はあやまっていた。
 ミサトはタオルで浩一の胸ににじむ血を拭き取ってやった。
 (わたしは山猫に味方するわ。 若者はホント世間知らず)

 (痛かった?)
 ミサトは再び男根をしごきだした。

 「はぁぁぁ〜〜!」
 触れるか触れないかのユルユルの指の輪が、快感のボルテージを上下させる。

 「やがて、小道は下り坂に入りました」スッ、スッと、つたない摩擦が快感を堆積させてゆく。
 (アアア・・)

 「若者は、山猫が後ろをつけてきているような気がして、不安でした」
 指がかすかに雁首をなぞってくる。

 「ア〜イイ・・・」ウットリさせるような指使いだった。
 「次の目的地までは、まだだいぶあります。 夕闇が迫り、辺りはどんどん暗くなります」

 「アアアッ!」ゆっくりと、ジワジワと雁首から鈴口をなぞってゆく。
 「馬があればいいのにぃ〜、と思いました」(ア・ア・ア)

 「フフフ」ミサトが上体を倒してかぶさってきた。自分とミサトの狭間で、男根は激しく脈打っていた。

 「アゥッ!」ミサトの豊かな胸が制服を通してズッシリと感じられる。柔らかく弾力に満ちていた。ミサトの顔がすぐ側まで迫っていた。甘い息の香り、艶めかしい唇。薄闇の中、汗の浮かぶ肌が光っていた。

 「ぼっちゃまも馬がお好きでしょう? あなたのお父様、旦那様もわたしの馬になるのが、お・好・き・でしたから、」クックックッと、ミサトは笑った。

 (ぼっちゃまも私の馬にして差し上げます、そ・の・う・ち・に)クスクスとメイドは耳元で囁いた。

 ミサトの耳元での低い囁きは毒だった。囁かれた者の頭の中をドロドロにとろけさせてゆく。
 (楽しみね)軽く唇が触れあった。パチッと頭の中で火花が弾けた。

 「犬があらわれました」


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メイド 魔性の快楽地獄