エアコンの止まった部屋の空気は、ミサトの使う媚薬の香りと、二人の汗、息で、べっとりとまとわりつくようだった。
「どうなさいます?」。浩一はガクガクとうなずくが、夜のメイドは了承しなかった。
ミサトは、指先をスルスルと浩一の男根に滑らせている。浩一を歌わせる為だった。
「ぼっちゃま?」巧みな竿裁きで、クイクイと浩一を釣り上げてゆく。
「ひ、きっ、き、聞きます!き、ききゃせてくだしゃい!」ミサトの指にたぶらかされていては拒否などできない。
ミサトの目が満足気に細められた。浩一はまた一段、ミサトの手ぐすねにたぐり寄せられたのだ。
「フフフ・・・では・・・」過去の犠牲者達と、幾度となく繰り返されてきた展開に、ミサトは満足だった。
早くイカせて欲しい。浩一の欲望はそれだけだった。
「そして、若者はけがをした足をかばいながら、犬を探しました。辺りはとっぷりと暗闇に包まれてしまいました」
メイドは妖しい手つきで浩一の脚をさすりながら、続きを語り出した。
しなやかな指は、筋肉にそって滑り、脚の付け根をくすぐり、臨界に達したほとばしりを巧みに焦らした。
下腹部から袋の脇を、爪による微妙なタッチでくすぐられると、浩一の中の淫靡な蛇は、発狂せんばかりにのたうった。
「・・・」半眼になった浩一の表情は、口角からブクブクと唾液の泡を噴き出していた。
メイド得意の料理は、グツグツと煮立った音をたて始めていた。
「河原にでると、」浩一に快楽を与えながら、ミサトはゆっくりと、話しを続けた。
浩一は話など聞いてはいなかった。聞いてられる状態ではなかった。
麻薬のような快楽をおあずけされたのではたまらない。
それが今は、悦楽を与えられ、猫のように喉を慣らさんばかりに、快楽を享受していた。
メイドの指が描く快楽の紋様と、今、この状況をまったく無視した昔話が、浩一の脳内をかき回す。
媚薬が奏でる快楽のレシピは 脳みそを毒で煮詰め、スポンジのようにスカスカにしてゆく。
「木を積み、火をおこして、そこで一晩を過ごすことにしました。 一晩休み、朝になれば、けがもよくなり、靴もみつかるかもしれません。 若者はなんとかなると思っていました。
しかし、闇の濃くなった真夜中、若者は足の痛みで目を覚ますことになります。
けがの処置が甘かったのでしょう。傷口は膿んでいました。
一刻も早く次の村を目指すしかありません。若者は身支度をすると、出発することにしました。
更に悪いことは重なります。若者は先を急ぐあまり、近道を選択しました。
近道は、細く険しい道のりですが、足をかばいながら歩くのは、すぐに限界を迎えるでしょう。今は時間が大事です。
川にさしかかったところで、橋が流されていることがわかりました。
若者は泳いでわたりますが、荷物が流されてしまいます。 荷物には地図も入っていました。
川を渡り終えたところで、若者は道に迷ってしまいました。
道のりは険しく、若者は道に迷いました。 かくして、若者は半日で次の村に着くはずが、
(深い、深い)浩一の頭の中に、声が近づいてくる。
「深い樹海に迷い込んでしまいましたとさ」
(深〜い、深い森の奥に・・・)
どこからか低い声が囁く。同時にぐんぐんと快感が下半身の一転に集まってきた。
浩一は目を見張った。そこには、暗がりにキラキラと光る目があった。
息がかかるほど近づいていた。ミサトの匂いと、髪の毛の触れる感触。ミサトの息の匂い。
柔らかく暖かい女独特の肌が、汗でヌめり、浩一のはだけられた胸をねぶる。傷口の痛みはもう感じられなかった。
柔らかいミサトの乳房の弾力が、浩一の心臓を締め付けた。
ミサトは上半身は裸、浩一の股に、太ももをこじいれるように押しつけ、浩一の男根を圧迫した。
無惨にはち切れそうになっている先端を、先走りを指先に絡めながら、花を摘むような繊細なしぐさで刺激した。
(迷い込んだら最期)ひっそりと闇の声が囁いた。同時にググッ、と、男根に絡みついた指が絞り上げるように締め付けてきた。浩一の男根に巻き付けられた指が締め付けてゆく。ビロードの渦に巻き込まれてゆくようだった。
「ああぁっ!い、イ、」一点に押し固められた感覚が、弾けようとしていた。
(深ぁ〜〜〜い、)男根がシュルシュルと幾本もの舌に嬲られているようだった。しなやかなミサトの指が絡まり、浩一の男根、シンボルそのものをせめぎあうように、絡み合い、包み、絞り上げる。
ジュポッと何度も淫靡な音色が響き渡る。
「いっ(いぐ!)」捻られながら、しごかれた途端、ぐっ、と浩一はそのときを迎える体勢に入った。
同時に浩一の顔が醜く歪んだ。
(逃げられませんよ)浩一の耳元にポツリとメイドが囁いた。
「あぁ!」絶頂。
ピタリと、シゴくのをやめたミサトの指が、管を強烈な締め付けでせき止めてしまった。
いくら待ってもその先はなかった。
(逃げられませんよ)クスクスと淫靡な忍び笑いと囁きが、頭の中をかき混ぜる。
中毒症状に陥っていた。
(イキそうだったのにね)
「あぁ〜〜・・・」
クスクスと、メイドが忍び笑いが、頭の中をグルグルまわる。
(まだですよ。あともう少し、)
(あともう少しですよ、ぼっちゃま・・・)
「あぁ〜〜、あぁ〜〜〜」口を開けて浩一は泣いていた。
ミサトは、耳までさけんばかりに、つり上がった笑みを浮かべていた。
人前で恥辱の涙に屈することなど、おおよそありえない人間の誰も見たことのない顔をみた気分は、何度味わっても飽きることはない。
浩一の太ももに押しつけられた花心は、火のように熱くほてり、肥大した肉の花びらは、蜜にまみれ、浩一の大腿部を股間に挿んで、粘着質な音を立てて前後に擦りつけられていた。浩一はもとより、ミサト自身も、腰から頭の先を冷たい快感が貫く。 相手をとことん痴情の快楽のに溺れさせる拷問まがいの責めは、セックスでは得られない希有な感覚を味わえた。
「そして、2回目の朝、若者は自分の脚が痛みを感じなくなっている事の意味が分かりませんでした。
痛みと悪寒は、全身に広がり、もはや、脚の痛みどころではなかったのです。
そして、傷口は腐り始めていたのです。
そこへ、いつかの山猫が現れましたとさ。
山猫は若者がけがを負ったことを察し、あとを追いかけてきたのでしょう。
山猫がみた若者は、別人のように、消耗しきっていました。
土気色の顔は目がくぼみ、木陰に腰を下ろし、紫に腫れ上がった脚を投げ出していました。
山猫は言いましたとさ。
「その足は、悪い毒が入ったようですね。わたしが悪い毒を取り除いてあげましょう」
若者は震え上がりました。きっと悪いところだけではすまないでしょう。
腐りかけていても、まだつながっている自分の足です。医者か、祈祷師にかかれば、治せるかもしれません。
ここにいてはあぶない。
若者は歯を食いしばって歩くことを選びました
こんなところで、山猫の餌食にされてはたまりません。
山猫にとって、若者の足は久しぶりの肉に見えたに違いありません。若者の後を、山猫がついて行きます。
山猫はおなかがすいているのは仕方がありません。
山猫としては、腐った部分だけを食べるつもりでした。命まで奪うつもりはありません。
むしろ、若者に助けを呼んでやってもいいと思っていました。
山猫は黙って若者の後をついて行きます。若者は必ず自分と取引をかわすと踏んでいました。
山猫と若者の奇妙な旅になりました。
しばらくゆくと、年老いて、群れを離れたオオカミが現れました。
オオカミも肉に飢えていました。
オオカミは若者が手負いとみるや、襲いかかってやろうかと思いましたが、知り合いの山猫が側にいました。
山猫に声をかけました。
「我々で手を組みませんか」
そう持ちかけましたが、山猫は、若者のあとをついて行くだけだと答えました。
オオカミはあきれました。なんと頑固なヤツでしょう。
しかし、山猫の気概に心打たれたのも事実です。
オオカミは群れない山猫に一目おいており、山猫をさしおいて餌にありつこうとは考えませんでした。
やがて、オオカミも旅の仲間に加わりました。
若者はどうあっても歩き続けるより他、ありません、歯をくいしばって、昼も夜も歩き続けました。
足の傷はますます腫れあがり、痛くて歩くのが困難になってきました。
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