「フフフ・・・どうします? 犬になってくださいますか?」ミサトは意地悪い笑みで問いかけた。
 犬にされる。理性を失いつつある浩一に直感が警告を発していた。 
 メイドは、夢であろうが、お遊びだろうが、犬になれといっているのだ。
 浩一にとっては、想像したこともないお遊びであり、自分には越えられない境界線を感じた。
 父も選択を迫られたのだろうか。自分も苦渋の選択をするのだろうか。浩一はボンヤリした頭に、父がメイドの犬になっている姿を想像していた。

 ミサトは上機嫌で話しを続けた。
 「いきなりは、無理でしょうから、徐々に犬になる訓練をしましょう」
 ミサトが言っていることは、とても易しい提案に感じられた。ときおり意識がはっきりとしてくるが、それはミサトが話しているときだけだった。

 「徐々に、徐々に、ぼっちゃまはなんの抵抗も感じずに、気持ちよくわたしの犬になります」
 メイドがとても優しい調教師に思えてきた。ミサトの優しい口調に心がグラグラと揺さぶられているような気分だった。
 「徐々に、徐々に・・・」
 ミサトの口調が変化してゆく。それは、浩一の心理に働きかけるよう、意図的に変化してゆく。

 「きっと途中からは、自ら早くそうなることを望むようになるでしょう。最初はゆっくりと、だんだん、だんだん、それが、待ちきれなくなります。なんの心配も不安もありまませんよ。わたくしにまかせていただければ」ミサトはカウンセラーのような自身タップリの笑みをみせた。

 ミサトは浩一が犬になるものと確信している節が見られた。

 「犬・・・・」浩一は迷っていたが、メイドは時間など与えなかった。
 「犬に・・・」テーブルの下を指さし、行け、ばかりの仕草をした。

 「さ、覚悟を決めてもらえます?」その言葉に、浩一は抵抗を試みた。
 「あら?」浩一が、しわくちゃに丸められたズボンで前をおさえながらノロノロと立ち上がった。
 「まぁ・・・」得たいの知れない人間が突然現れるのだ。
 昼間から、いきり立った下半身を恥ずかし気もなくさらし、
 メイドのいいなりになり、そのうえ毛のない犬になってテーブルの下に潜るなど、あまりにもハードルが高かった。
 (犬になんか!)
 今までは、ミサトのいいなりとはいえ、まだそこまで墜ちてはいない。
 いきががりで、ミサトのいいなりだったが、この状況で全裸には従いたくなかった。

 「ぼっちゃま?」ミサトが小首を傾げる。
 メイドはコケティッシュな表情で問いかける。
 同時に下半身はスカートをまくり、裾をヒラヒラと仰いで浩一を挑発した。
 ミサトは意図的に抵抗を許し、再び主導権を奪い支配する。
 逆らっても無駄だということを、何度も教え込むためだ。そうすることによって従順な奴隷になる。
 インターバルを繰り返すことで、犠牲者は、一層深いところへ墜ちてゆく。
 
 (従いたくない!)しかし、このままでは股間のうずきは、治まらなかった。
 「ほ〜ら〜、メイドさんはぼっちゃまを待って居るんですよ」ミサトは浩一の気持ちなどお構いなしだった。
 ヒラヒラと揺れるスカートの裾が、チラリチラリとメイドの下半身をチラつかせた。
 「・・・」浩一は何も言えなかった。相手はメイドとはいえ、自分は今、ミサトに支配されているのだ。
 ただ、ミサトによって弄ばれ、惜しい快感に翻弄されていたいという気持ちが未練だった。

 「じゃ、もう、終わりにします?」ミサトは浩一がもっとも恐れている言葉を口にしてやった。
 浩一は躊躇した。この数日、自分が味わった体験は、今までで最高の快楽をもたらしてくれた。
 危険な罠と知りつつも、その快楽には抗えない魅力があった。
 甘美な毒薬。この味を一度味わってしまった以上、浩一ミサトの誘惑をきっぱりと絶つことができなかった。

 「終・わ・り・にし・ま・す?・・・」自信たっぷりのミサトは、浩一の表情を楽しんでいた。
 浩一の眉間は、深い苦悩の皺を刻んでいる。 ミサトは、これからもっと切り刻んでやるのつもりだった。
 そう、悩ましく苦悶の表情を刻まれた浩一を想像しただけで、ミサトの胸は高鳴った。

 「つまらないわ・・・せっかく・・・」ため息が悩ましく感じられた。
 ミサトに従わなかった場合、ひどい罪悪感に襲われる気がした。
 言いなりになって、従えば、最後の快楽まで与えてくれるだろう。
 しかし、快楽と引き替えに何かを失う。
 失うのは一度では済まない。何度も、そしていくつも失うことになるだろう。
 浩一は、またもや自分に突きつけられた選択に、異常な興奮を覚えた。

 正しい選択はわかっていた。
 正しい選択には極上の快楽があるのだ。
 浩一はなんとしても、快楽を得たかった。
 (ハァハァ・・・・正しい選択・・・)
 今や、この快楽をいかに享受するかが、浩一にとって最大の行動指針になっていた。

 (で、でも・・・)
 そこまで結論に達していても、これが日常化するのはためらわれた。
 ミサトの言いなりにされると、みんなこうなるのか。
 自分も父のようになるのだろうか。
 浩一は、ミサトの術中にあって、それ以上は何も考えられなかった。
 ミサトの声が聞こえないと、意識は扇情の泥沼に沈んでゆくのだ。
 ミサトはツカツカと浩一の前に立つと、肩に手をかけて、手のひらで浩一の太い腕を愛撫した。

 「昨日は言うことを聞いてくれたのに・・・」
 (座って・・・)ミサトは浩一を椅子に座るよう、促した。
 浩一を座らせると、浩一の前、テーブルに腰をもたせかけて立った。
 浩一の目を見つめたまま、浩一の両手から、丸められたズボンを引き離した。

 「下だけ裸で・・・」ミサトはおおいかぶさるようにかがむと、いきり立った浩一のシンボルを見つめた。

 「昨日だって、四つん這いになったでしょ?」ミサトは指を絡めると、軽くストロークした。
 そして、下半身に指を滑らせ、シャツに滑り込むと、そのまま、胸に這い上がってきた。

 「それとも〜・・・」爪の先が男の乳首を捉えると、カリカリと焦らすような刺激を加えてきた。

 「わたしに、脱がされたいのかしら?」
 ミサトは浩一の耳元に囁いた。声が脳内に直接響いてくる。
その声が再び浩一の頭の中をボウッとさせた。

 メイドの手はゆっくりとシンボルを愛撫していた。
 ミサトは浩一の顔を正面から見据えた。


 なぜ脱がないんですか?
 おとついの晩、昨日はわたしに全てをさらけ出していたくせに・・・
 あの看護婦のせい?
 そんな、はずは・ない・ありえませんよね?
 目の前にいる、わたしをさしおいて、それは・・・
 ついさっきまでわたしの足下で口にストッキングをくわえて、クネクネしていたのはだあれ?

 甘い毒薬が、浩一の耳から頭の中に注がれてゆく。

 メイドはグルリと浩一の周りを回り、顔を近づけて、迫った。 
 「ありえませんよね?」鳶色の瞳が、意地悪くのぞき込む。二重の瞼が卑猥に思えた。

 「んん?まだ迷ってる?、困った人。ぼっちゃまのような人は、誰かの助けで心の壁を取り払ってしまわないと、本当に気持ち良くなれませんよ?」親指と人差し指で堅くなった浩一の乳首をつまむように見せかけて、指で弾く。肩をピクピクさせる浩一の反応を楽しんでいるようだ。

 「そう、ぼっちゃまの心を解放するには、催眠術など有効かしら」ミサトの指による刺激で、浩一の両乳首は、赤く染まり、コリコリと堅く尖ってきた。
 「ぼっちゃまを解放する、催眠術よ」浩一の息が荒くなる。

 「ちょっぴりエッチな催眠術・・・(フフ)」ミサトは浩一の耳に、たっぷりと息を吹き込みながら囁いた。
 「ちょっとやってみましょうか、催眠術ごっこ!」パチン、ミサトのスナップを聞くと、浩一の呼吸が変化した。
 ミサトに合わせて大きく深呼吸する。シンボルはミサトの指を求めてヒクヒクと跳ねる。
 浩一は気づいていないが、既に暗示を刷り込ませてあった。ミサトは更に深い奴隷化を浩一に施すつもりだった。

 「わたし、見たことがありますから、ちょっとまねしてみますね」
 メイドは魔法使いのように、両手を前に出して魔法をかける振りをしておどけて見せた。
 ミサトは浩一の前にゆっくりと手をかざした。
 ミサトの指からは見えない魔法の糸が何本も出ていて、それが顔にゆっくりとまとわりついてくるような感覚だった。
 「見て・そして集中して・・・」ふわり、ふわりと、何かが顔にかけられ、絡みついてくる。
 くすぐったいような、心地よい気配。
 パチン、
 ミサトは意味ありげに指を鳴らす。
 (うっ!)
 その音は異様に響いた。ビーンと浩一の心の琴線を共振させる音だった。
 (ああ・・・)
 媚薬と暗示の効果か、浩一はすぐさま浅い催眠にかかった。
 その目から、意志の瞬きが消える。
 意志を失っても、股間のシンボルははち切れんばかりに堅く勃起していた。
 今からメイドのしてくれることに、淫らな期待をふくらませるだけだった。
わかってはいても、メイドはその淫らなアンテナに含み笑いを漏らさずにはいられなかった。

 「フフフ、大丈夫こわくありませんから。遊びですから、ぼっちゃまはかかったふりでもしてくだされば・・・」 そう言ってミサトは、浩一の目をじっと見据えた。浩一が怖がっているのではなく、興奮しているのは明らかだった。
 浩一のまなざしははなんの疑いも不安もなく、ミサトの目をじっと受け入れていた。 
 ミサトはうっすらと目を細めた。 例の目つきだ、頭の中を甘く痺れさせる鳶色の瞳。
 ミサトの支配が、溶けたキャラメルのようにドロドロになって浩一の心に流れ込み、混ざり合い、心を甘く犯してゆく。

 「見なさい」パチン、ミサトは指をスナップさせた。
 その瞬間、ハッと浩一はミサトに心を奪われた。ミサトはジッとこちらを見据えている。

 「私を、そう、私の目をみるの」パチン、メイドが指を鳴らすと、部屋の空気が震撼する。
 パチン!
 「そーう、目をそらさないで〜、ほ〜ら、吸い込まれそうでしょう?」またうっとりするような眼差しに、浩一は捕らえられてしまった。
 「そう、目をそらしてはだめよ」パチン、指が鳴らされると、ピーンと部屋の空気が張り詰める。
 「まるで催眠術をかけられたみたいでしょ・・・」暖かい和むような声色だった。
 「もっと気持ち良くなる為に、心を解放してゆきましょう、そう、もっと気持ちいい世界にご案内しますわ」ミサトの妖しい指使いが、ジワジワと乳首をくすぐってくる。

 パチン!
 「いい気持ち・・・」ミサトは、指を鳴らす。
 パチン! 何かがこみあげてくる。 
 浩一の目がトロンとしてくる。
 「これは、ぼっちゃまを気持ちよくする催眠術・・・」
 パチン、
 「とっても・・・気持ちいい催眠術・・・」
 今から五つ数を数えます、メイドはそう宣告した。

 「ひとーつ、そう、心を開いて・・・」
 パチン、メイドのスナップのたびに、深く墜ちてゆく感覚があった。
 パチン、スナップのたび、ポキッと何かが折れ、支えを失ってゆく。
 傾き、崩れてゆく、スナップの魔法にかかってゆく感覚。

 「ふたーつ・・・抵抗しないで・・・」
 パチーン
 ユラユラと、海の中に漂っているような気分だった。

 「みぃっつ・・・とぉってもいい気持ち・・・」
 目を閉じているのに、目の前は様々な色が踊っている。
 パチン、
 「とってもいい気持ち・・・」

 「よぉっつ・・・・・・わたしの言葉が魔法の呪文のように、坊ちゃまを気持ち良く支配します」
 パチン、
 「ぼっちゃまは私の声、魔法の言葉で、催眠にかかります」
 パチン、
 「いい気持ち・・・とぉ〜〜ってもいい気持ち・・・・・」
 パチン、メイドから催眠術をかけられている感覚に甘い陶酔感を覚えた。
 甘い恍惚とした気分に居心地の良さ。心が癒されるような安心感に包みこまれ、抜け出せなくなってゆく。

 
 「いつーっつ、わたしの言葉に従いましょう」ミサトは浩一の目をそっとふさいだ。
パチン、
 「気持ちいい・・・」ミサトの手の平のぬくもりが、目に心地よかった。

 「ほーら、気持ちよくなる!ジーンと気持ちよくなる」
 パチーン!
 ジーンと音が心地よく響く。

 媚薬、照明、リズム音、匂い、ミサトの愛撫、声、全てが浩一を完全にコントロールしていた。
 
 パチーン、 
音がスイッチのように、浩一の中を操作する。
 「さあ、聞いてください」

 「今はメイドの声だけしかわからない」
パチン、
 「私の声。声よ・・・ ぼっちゃま?声。わたしの声・・・」
 メイドの声は滑らかに浩一の頭の中に滑り込み、かき回す。

 「私の絹のような声で、ぼっちゃまの体は気持ちよくなります」
声が微妙にビブラートしていて、その振動が脳を心地よく刺激する。

 「とても・・・とても、とっても気持ちよくなります・・・とても・・・そう、いいわ、そのままよ・・・」

 「ぼっちゃまは私の声だけが聞こえる部屋にいます。」

 「とても良い匂いがして、暖かくて、気持ちが良い」

 「いえ、暖かすぎる、たぶん暖かいのではなく熱い。私に見られていると、体が熱くなる」

 「やはり熱い、熱くて服が気持ち悪い・・・」
 そう、じゃ、脱いでしまいましょうか。
 かまいませんよ。

 「メイドの前でなら服を脱いでもいいんですよ」

 「そうそう・・・気にしない・・・メイドの前なら気にならない。 何のためらいもありませんよね?フフフ」

 「着替えるときにためらう必要などありますか?」
 ミサトは浩一に、再び自分の目をみつめるよう促した。
 
 浩一が足に絡まっている、ズボンをモタモタと脱いでいると、
 「上も・・・上もですよ、ぼっちゃま?」
 浩一がボタンをむしるように、シャツを脱いだ。
 「フフフ、では、四つん這いになって、こちらへ・・・」
 
 「もう私たちは・・・・じゃありませんか」

 このままだと、昨日と同じでしょ? でもそれではだめ。
 そうでしょ?
 ぼっちゃま(パチン)
 ン・・・
 ぼっちゃま、犬になりなさい・・・(パチン)
 ア・・・
 ぼっちゃま、ワタシノペットになりなさい!(パチン)
 ン・・・

 「ぼっちゃま?」ミサトは続けて指を鳴らしながら、浩一の反応を見守っていた。

 浩一は、ミサトのスナップと同時に、反応していた。
 予想通りの成果である。
 ツゥーッ、とシンボルの先から、淫らなしずくが糸を垂れた。
 そのしずくは、ろうそくから垂れる溶けた蝋のように熱く堅いシンボルをつたってゆく。

 パチン、
 ミサトのスナップは、ズキズキと快楽を刺激してくる。
 耳だけになったような気分だった。
 耳だけになって、耳だけの性感帯を刺激されているような気分だった。
 
 
 もう、ぼっちゃまは、物足りなくなっているはず。
 どうですか?もっと気持ちよくなりたい、そうですよね?
 なら、汗を吸った服は脱いでしまいましょ。そして生まれたままの姿で犬になりましょう。


 浩一は迷っていられなくなった。
 何も考えられなかった。何もできない。できるのはただ、メイドの言いなりになることだけだった。
 浩一は、だまって足に絡まったズボンと下着を脱いだ。
 浩一は、全裸になった。 昼間の食堂で、服を着たメイドと、全裸になった若い男。
 ミサトは笑みを含んだ眼差しで浩一に指示を与えた。
 それを理解した浩一は、ミサトの顔色を伺いながら、四つん這いになった。
 下腹部にそそり立つ、堅く勃起したシンボルが、そこに看護婦によって施された傷跡が、アブノーマルな世界に踏み込んだ男に、奴隷の刻印のようにふさわしい。

 「ほーら、脱いだ、フフフ・・・あなたみたいに、世話のかかる子って堕とし甲斐があるわ・・・」
 メイドは椅子に座ったままで、脱ぐ気配はない。
 スナップだけで、浩一を自在に追い詰めていた。

 そろそろ新しい刷り込みをしておこう、ミサトは次のステップに進むことにした。 
 「ところで、わたしが差し上げたショーツ、どこかしら」


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メイド 魔性の快楽地獄