転 男転がし
看護婦が出ていくと、メイドはニヤニヤしながら、小首を傾げて浩一の表情を覗き込んだ。
再び食堂にメイドと二人きりになった浩一に白い蛇のような美脚が忍びよる。その妖しい気配に浩一は異常に興奮させられた。
メイドは小さくため息をもらして、気分を変えると、口をつけていた卵をほおばった。
蠱惑の瞳でじっと浩一を見つめる。 浩一の頬はのぼせたように赤らみ、唇を微かに開いて息をしていた。 メイドの目はだんだん薄く細まり、ついにはメイドは声にだしてクッ、クッ、クッと笑い出した。
「取り乱してたわよ、ぼっちゃま」
「気が小さいのね」一瞬、蔑むような目をして、メイドは冷たく言い放った。
「可愛い人でしょう? 」ニヤリとメイドが流し目をする。
「え? 」いきなり話題がそれて、何を言われているのか分からなくなっていた。
「藤崎さん。 看護婦の・・・」藤崎? あの看護婦の名前か。
学校を出て間もない幼さの残る面影も印象的だった。
「たまらないでしょう? 」メイドは意味あり気に両手を前で組んで見せた。綺麗な指達が複雑に組み合わさる。
「ムラムラしてきたんじゃないかしら? 」ズボンの裾を足先で引っかけてゆっくりと焦らすように吊り上げてくる。
ナイロンのストッキングの肌触りがふくらはぎを撫でる。
膝下まで這い上がったところで、つま先がズボンの上を滑ってくる。
ゾクリとくる淫らな期待に浩一の心臓はトクトクと早打った。
淫らなつま先が浩一の太股にまで這い上がってくる。
あと少しで浩一は更なる倒錯の悦楽を得るだろう。
「ぼっちゃま、昨晩のことでしたら、お気になさらないでくださいな」また、話題が逸れた。
今度は気にしていることを気にするな、と言って口にする。
メイドは浩一が返答に詰まることばかり口にするようだった。五感を刺激する淫らな糸にどんどん縛られていく。
メイドの言葉が抗おうとする思考までも攪乱してくる。
ただ、感じさせられるだけにされつつあった。
やさしく太股を撫でる足先は股間まで後少しのところでじっくりと刺激を暖めている。
「溜まったら・・・」じわりと、太股に当てられた足の裏からメイドの体温が伝わってくる。少し汗ばんでいるのか、じっとりと湿ったぬくもりに感じられる。
「いつでもおっしゃってくださいね」
ザラザラとした薄い膜の感触はズボンの生地越しでも淫らな摩擦を浩一に与えてくれる。摩擦がふんわりとメイドの脚の匂いをまきあげ、浩一の股間から新聞を伝って女の匂いが漂う。
「スッキリとお世話しますから」
メイドはゆっくりと塩のはいった小瓶に指を運ぶと、すぐには手にしないで、浩一の男根に見立てて、かすかに指を絡めて弄ぶ。
テーブルの上に浩一の男根が生えたような不思議な幻覚。
テーブルの向かいに深く座ったメイドだけが見えて、他は真っ暗な闇になったような感覚にめまいを覚える。
「わたし、ぼっちゃまのお世話もさせていただきたいんです」
つま先が亀頭にすっと届く。
「う・・・ 」
もはや浩一は動くことも忘れ、メイドの淫らな妄想に飲み込まれてしまった。自分の股間に白いナイロンのストッキングに包まれた淫靡なメイドのつま先が届いているのが見えた。その柔らかいつま先の下で、猛り狂った野良犬のように飛びだそうとしているシンボルが踏みつけられている。
浩一にもズボンの中で勃起したシンボルがズキズキと動いているのが分かる。メイドのつま先に倒錯的な喜びを覚える自分に驚いた。自分がフェチズムの気があったなど考えもしなかった事実に浩一は激しく興奮した。
あまりに大胆な挑発にどう対処していいのかわからない。
特に浩一のように,若く社会的に信頼される立場にある人間は,感情的な行動に走りにくい。自制心がそれを抑制してしまうのだ。
そんな浩一の自制心をあざ笑うかのごとく、メイドのつま先が、その綺麗なナイロンの薄膜に包まれたその指先が浩一を挑発する。
「もっと、お世話をして差し上げられるんですけど・・・」
トントンと足の指が巧みに浩一の股間をノックしてくる。
トントンと浩一の潜在意識に信号を送ってくる。
カタン、とメイドが塩の入った小瓶を倒した。木製のこけしのような形をした小瓶で、色はローズウッド、ちょうど勃起した浩一のシンボルと同じくらいの大きさである。
ハッと浩一が視線を上げると、メイドの指が横倒しにされた小瓶の形をなぞるようにゆっくりと指先でなぞっている。
浩一を悶絶させた指使いで焦らすように指を絡めると、クイクイとレバーを操作するように弄ぶ。
起こすかと思えば、カクンと寝かし、また、ゆっくりと起こして、寝かす。
浩一の視線を釘付けにしたまま、ゆっくりと起こしてゆく、メイドが唇をペロリと舐めて、蠱惑の瞳で視線を放っている。
完全に起こすと、浩一のズボンの中でジワッした先走りの漏れる甘い切ない快感が走る。名残惜しそうに小瓶を指が離れてゆく。
メイドの指はゆっくりと 浩一の視線をたぐるようにメイド自身の胸を通り過ぎ、更にその上の唇へと浩一の瞳を誘う。白い綺麗な指先が、淫らな唇から覗くピンクの濡れた舌先にねぶられる。
浩一は更にその先、メイドと目が合った。鳶色の瞳が浩一を捉え、絹に包みこむように滑らかに吸い込んでゆく。
メイドがスッと目を細めると、ジ〜ンと体が疼いた。メイドがゆっくりと長い睫毛を伏せると、つられて浩一も目を伏せた。
「ぼっちゃま・・・」浩一がゆっくりと目を上げると、鳶色の瞳が漆黒の闇のように浩一に迫ってきた。うつろになった目はメイドの瞳から目が逸らせなくなっていた。メイドがゆっくり瞬きをすると、浩一は同じように従い、またメイドの瞳を見つめ続けている。
メイドとは別の淫らな生き物に股間を弄ばれているような気分である。 その生き物は浩一の性感帯を知り尽くしていた。
「なにかしら、これ?」フッフッフッ、とメイドはおかしくてたまらないとばかりに肩を震わせて忍び笑いを漏らす。
浩一は唇をぎゅっと堅く結んで、官能に肩を震わせる。
「やっぱり何かいるみたいよ。ぼっちゃま? 」
チラリと浩一の顔を覗き込むように小首をかしげてみせる。
その瞳がキラリと妖しく光る。その流し目は浩一の欲情を激しくかき立てる。股間を嬲るつま先の感触とメイドの瞳、唇、指先しか分からなくなってゆく。それだけが存在する闇に沈んでしまったかのような不思議な感覚に浩一は閉じこめられてしまった
闇がじわじわと内側にまで忍び込んでくる。闇の中からメイドの艶のある声色が響いてきた。遠くから話しかけるようにも、耳元で囁いているようにも感じられ、頭がクラクラする。
「わたしの足にあたっています」メイドの足の指が袋を掴むようにゆっくりと食い込んできた。
羞恥心が背中からゾクゾクと這い上がってくる。 浩一は荒い鼻息を漏らして、欲情に呑まれつつある。
「長くて・・・」ツツツッとつま先がシンボルをなぞる。
「ぶふっ! う、うう・・・」思わず唇から息が噴き出してしまう。
「あら? フフフ・・・」
人差し指を唇に含ませ、淫らな音をさせながら、メイドはウットリとしてみせる。浩一の開かれた口はメイドの指先でかき回されているような感覚を覚え、唇がゆるんでゆく。
「ふっ・・・とくて・・・」足の指が器用に二本の指で挟むとシコシコとしごく。
「ア、ああ、アフ、あぁ」メイドの鳶色の瞳から目を逸らすことができず、自分の股間を見ることが出来ない。
そのもどかしさと見えない刺激が浩一の官能を一層淫らにくすぐり、浩一は情けない喘ぎを漏らし始めた。喘ぎに繋がったように唇から暖かい唾液が漏れてくる。それは、ゆっくりと唇から垂れると、テーブルにこぼれた。
「堅く・てぇ・・・・・・ンフフフッ」柔らかい足の裏、土踏まずでそっとほぐすようにふみつける。
「熱くて・・・」ピタピタと足の親指でシンボルの頭をたたく。
「・・・・・・」ハア、ハア、と浩一は息を荒げ、目はうつろにメイドの眼差しを見つめたままである。その目は中毒患者の禁断症状にもにて、切なげで、救済を求める目だった。
(欲しくてたまらないんでしょう?)
ネットリと唇を舌でなめずり、メイドはうっすらと目を細め、長い睫毛の奥からブラウンの瞳でとろけるような視線を放った。
「フフ、それに、ピクピクしています」足の指全部でわしづかみにするように乱暴につま先を押しつけてやった。
「はうぅ!」
ブルブルと肩が震え、脂汗が顔面に噴き出してきて、チクチクした。無数の蟻が這っているような旋律が肌を粟立たせる。
口の端からよだれがだらしなく垂れてくる。
そんなことはどうでもいい、頭がおかしくなりそうだった。
浩一は昨夜の淫らな指先を味わいたくて、口を震わせながら言葉を紡いでいた。
「どうしましょうね。これ」ネットリと視線を絡めながら、メイドは浩一のシンボルをピタピタと繊細なタッチを駆使して、どうしようもない程追いつめる。
「ミ、ミサトさん・・・」
(ほ〜〜〜ら、自分から言い出した、フフッ)
「はい?」言ってごらん、と、小首を傾げてメイドは優しく微笑んだ。
「す、スッキリしたい」
「はい?」
「スッキリしたい」
「フフ、そのつもりです、では、今夜も・・・」
メイドのつま先がせわしく小刻みに振動を送ってくる。
そのバイブレーションがビリビリと股間全体をグラグラと揺らし、浩一は上半身を落ちつきなくくねらせた。
「い、いや、その、今・・・」浩一は語尾が聞き取れないほど掠れた声で懇願した。