転 男転がし
広い脱衣室で一人、浩一は床に転がって、汗と恥ずかしい滲みで吸い付いた衣服と苦闘した。
ボタンを引きちぎってやりたくなるが、メイドに咎められるのを考えると、涙をぬぐって一つずつはずした。
冷たくなったズボンはごわごわになり、漏らした小水の匂いが浩一を悩ませる。
情けなくて涙が止まらなかった。
(と、とにかく、シャワーを浴びよう)
よれよれになったまま、浩一はシャワーを浴びることにした。
汗と、自分が漏らした小水、女の分泌まみれにされた体に、シャワーを浴びせる。
シャワーの湯気が、先程の痴態、一部始終を、ムワッと鼻先に吹き上げてきた。
思わず、顔をしかめてしまう。
風呂椅子に座ると、膝がガクガクとして笑う。
シンボルは見るに耐えないほど、赤く、よれよれに萎びていた。
触ると、ヒリヒリとし、熱くなっている。
冷水をかけてやると、幾分か、ましに感じられた。
浩一は石鹸を多めに使って、全て洗い流そうとするかのように、全身を念入りに洗った。
浴室から出ると、ミサトは着替えを持って現れた。
浩一の着替えと自分の着替えも抱えている。
メイドは、二人分の着替えを用意していた。
「ぼっちゃま、着替えをお持ちしました」
裸でよろよろとしている浩一に、バスタオルを持って近づいてくる。
「全部、替えてくださいな」
バスタオルで浩一を拭いてやりながら、意地悪な笑みを浮かべ、「スッキリされましたか?」
と、表情を覗き込む。
浩一は視線を合わすことが出来ず、俯いて黙ったままである。
クスッと鼻で笑われた。
ミサトの苛め心が、ムクムクと頭をもたげてきた。
「お召し物はこちらに」そう言って、着替えを積んだワゴンを浩一の前に引っぱってくると、浩一の見ている前で制服を脱ぎ始めた。
「わたしも、汗びっしょり」独り言のように言いながら、なんの遠慮もなく、目の前でスカートの下から、ストッキングを抜き取ってゆく。クシャクシャにして、脱衣かごにパサリと投げ込む。
チラッと、浩一の視線が、それを追いかけた。
「先程は失礼しました。ぼっちゃまが、可愛くて、つい・・・」
白の上品なブラウスの前を開くと、薄いシースルーの黒いブラが露わになる。
「でも、とても気持ちよさそうでしたよ」
細い紐が背中に食い込んで、扇情的だった。
「今度はおむつをつけてしましょうね〜フフフ」
浩一の顔がみるみる赤面した。
「残念だわ〜、もう少し早くくれば、一緒に浴びれたのに・・・ 」
メイドも汗びっしょりのはずである。
このまま、シャワーを浴びるつもりのようだ。
バレッタをはずし、汗で貼りついた髪を、両手で後ろに払うと、長い髪がバサッと後ろに解けた。
「あら? フフフ」浩一の視線を意識して、ミサトは艶っぽい声で笑った。
バスタオルを持ったまま、顔を真っ赤にして立ちつくす浩一は、涙ぐんでいた。
「じょうだんよ、フフフ、ごめんなさいね」
そう言って、ミサトは浩一に見えるように、わざと向き合って、ブラもはずしてしまった。
ギラギラと汗に光る、豊かな乳房が浩一を圧倒した。
ミサトは音もなく歩み寄り、浩一の鼻先で、指先に引っ掛けたブラをゆらゆらと揺らした。
シャワーを浴びて、嗅覚が元に戻った浩一には、たまらない香りがした。
浩一の小鼻がひくつくのを、ミサトはニヤリとみつめながら、そのまま浩一の足下に落とす。足の甲にフワリとブラが落ちると、浩一はピクリと反応した。
じっと、浩一の目を見つめながら、スカートに手を掛けてゆく。
焦らすように、ゆっくりとファスナーを降ろし、
体を折って、スカートを脱いだ。
黒い下着は細かい刺繍が施され、股間は透けるタイプだった。
黒いショーツだけになったミサトが浩一に迫る。
じっと目をみつめながら、浩一の首に両腕を絡めてきた。
「ンフフ・・・」妖しい笑みを浮かべてキスを仕掛けてきた。
柔らかいミサトの唇が浩一の唇に押しつけられる。
すぐさま、ヌルリとしなやかな舌が滑り込んできた。
女の汗と、香水の香りに、浩一はクラクラしてきた。
柔らかい、量感のある乳房は、浩一の胸にしっとりと押しつけられている。
体が沈んでしまうような柔らかい女の肉感に浩一は目眩を感じた。
ミサトは、浩一のうなじから、胸に鼻をクンクンさせながら、匂いを嗅ぐ。
「匂いが落ちてるわ・・・」 そう言って、浩一を睨んだ。
「えっ?」
「メイドの匂いが・・・」小さくポツリと呟いた。
「ぼっちゃまの大好きなメイドの匂いが・・・」妖しい企みを実行に移すとき、ミサトは、鳶色の瞳が黒く染まるのが常であることを、浩一は今になって、ようやく覚えた。
ミサトは、浩一に抱きついたまま、下着を脚から抜きとり、全裸になると、いっそう、体を擦り付けてきた。
メリハリのある肉体で浩一を圧倒し、壁に押しつけると、
浩一の太股を股間に挟んで、熱い肉ビラを擦りつけてきた。
ズリズリと摩擦してくる。
息がかかるほど、顔を寄せ、浩一に微笑する。
体を擦りつけながら、指を浩一の股間に滑らせると、萎えたシンボルを揉みほぐしてくる。
「う、うぅぅぅっ」浩一は、腰を引いてむずがった。
「もう、立たないのね・・・」ズキズキと疼いてはいるものの、シンボルは不能状態だった。
「フフフ、」
ミサトは勝ち誇ったように、笑った。
「ぼっちゃま、これから山車のひきまわしが始まるみたいよ、」唐突にミサトが話題を振ってきた。
「今晩からお祭りですものね」話はよそに、二人は抱き合ったまま、その感触を堪能する。
電話は地元の人からか? 誰なのか、浩一は気になった。
「さ、さっきの、で、電話ですか?」ミサトの乳首が堅くなり、浩一の胸板を小悪魔のように嫐る。
「まあ、そんなところです」ミサトは、吐息混じりにはぐらかした。
会話を続けながら、ミサトは浩一を、さり気なく洗面台そばのワゴンに誘導してゆく。
「ごらんになっては?」ミサトの肉びらが、浩一の太股を熱く濡らしてゆく。
「夕方までお時間もあることだし、お祭り見物でもされては・・・」
濡れた肉びらがヌルヌルと滑り、恥骨の堅い感触が太股をくすぐったくさせる。
「あ・は・・・」
「気分転換になりますよ。それから、夜は・・・」ミサトはスッと浩一の耳元に唇を寄せ、息を吹き込んでやる。
お楽しみよ・・・小さくひっそりと囁くと、メイドはクスクスと笑う。
ミサトが両手の平を、軽く肩に載せただけだが、浩一はミサトの意図するところを察した。
浩一はワゴンにそっと、腰掛けた。
ドイツ製の、しっかりした作りのワゴンは、僅かにきしんだが、壊れることはないだろう。
洗面台備え付けの鏡に、二人の姿が写っている。
腰掛けた浩一が、正面から写っている。
鏡の中から、ミサトが浩一に振り返ってニッコリ微笑んでいる。
ミサトが跨ってきた。
全裸の女の、白い滑らかな後ろ姿が、浩一を覆ってゆく。
鏡の中で、白い女のヒップがクネクネと動き、なすがままになっている浩一自身の顔が、女の肩越しに、こちらを見つめ返していた。
「ぼっちゃま、あなた、女にどう見られているか知ってる?」
「え?」何を言いたいのだろう?
「女が食べたくなる、おいしそうな男よ・・・」
ミサトは囁きながら、浩一の耳を甘く咬んだ。
首筋、肩と、唇を這わせながら、下では股間をズリズリと擦りつける。
股間に指を這わせ、愛液をたっぷりと指にすくった。
それを浩一の顔になすりつけてきた。
「な、何を・・・」反射的に顔を背けようとするが、浩一の顎を、片手で掴んだミサトがそれを許さない。 目は黒々と漆黒の闇をたたえ、じっと浩一をみつめている。
吸い込まれる、浩一はそう思った瞬間、ミサトに引き込まれていった。
浩一の目ミサトの瞳に魅了されたように、トロンと弛緩する。
瞳孔が散大している。
「匂い付け・・・」ミサトは優しく浩一に教えてやる。
「匂い付けをしてあげるの・・・」口元に淫らな笑みを浮かべながら、耳、首筋、胸とヌルヌルと指先をなすりつけてゆく。
「!」口に指を差しこまれた。
ミサトの味が口中に拡がる。
(ア、ア、ア、)舐めるのよ、と、ミサトが小首を傾げて促す。
「メイドの物って印!」もう一度たっぷりとすくい、脇の下、腕を背中に回し、擦り付けてゆく。
「ア、ァァ〜、ちょっ、ちょっと、ミ、ミサトさん、やめて・・・」
いやなの? と、ミサトは眉を片方吊り上げた。
「いいでしょう? 」なすりつけながら、ミサトは浩一に迫った。
ミサトの眼差しをみていると、拒むことなどできない。
あらがえない力を心の奥に感じた。
( ア・・・ア・・・・)
「ねえ?」ミサトがたたみ掛ける。
いいでしょう? 艶のある媚びを含んだ声が、心の鍵穴に滑り込んでくるようだった。
「ア・・・ハ・イ・・・」 浩一は鍵を開いて返事をした。
この匂いはメイドの香り、
ぼっちゃまを支配するメイドの匂いよ。
いつも、この匂いをさせておくのよ。
ミサトが低く、小さな掠れたような声で耳元に囁いてくる。
淫らな指が這い、全身にミサトの肉感を感じ、ミサトの中で囁かれているような不思議な感覚で浩一は黙って、ウン、ウンと頷いていた。
もう、自分はこの人に支配されているのだ。
支配。浩一は、この甘い響きに、ずっと浸っていたくなっていた。
うっとりと、匂い付けを享受する浩一に、ミサトは満足そうに微笑みながら、更に強力な印を施しにかかった。
「そして・・・これは・・・」
指を胸板に這わすと、乳首を軽くつまんだ。
クルクルと嫐り、堅くしてから、舌を尖らせ、払うようにチロチロと刺激する。
「はぁん!」
「フフフッ、マーキング・よ・・・」
唇を吸い付かせると、そのまま噛んだ。コリコリとした男の乳首の歯ごたえを、ミサトは歯ぎしりをして楽しんだ。
「ひっ!」
「フフッ、ちょっと痛い? 」
もう一度吸い付けると、痛い程、強く吸い上げる。
チュ〜〜〜、と、長く吸い続ける。
「ひぃぃん!」気が遠くなるほど気持ちがいい。
ンパッ、と唇を離すと、ピンクのキスマークが鮮やかに残った。
「気に入ってくれたかしら?」
ハッハッと、喘ぎながら、浩一は黙って小さく頷いた。
「もっとつけてあげる」
ミサトはそうやって、浩一の至る所に刻印してゆく。
ここも、あそこも、こんなところまで、はっきりと、鮮明にマーキングを施してゆく。
浩一は、ミサトの物、にされることに、甘い幸福感を覚えた。
うっとりと、ミサトのしたいままにさせた。
魂そのものに、ミサトの印をつけられているような、奧深い行為に陶酔した。
浩一の全身に印しを施すと、ミサトは満足そうに一回頷き、浩一を立たせてやる。
「全部、わたしの物ね」
全身、ミサトのマーキングを施された浩一は、メロメロの状態でフラフラしている。
「これで完璧よ」ニヤニヤしながら、浩一の後ろに回り込むと、
パシーン! と、浩一の尻に平手を打ち付け、浩一をシャンとさせた。
小さく浩一が悲鳴を上げた。
浩一の尻にみるみる赤いミサトの手形が浮き上がってくる。
炙り出しのような、ミサトの手形は、浩一の肉体の奥深く、潜在意識にまで、焼き付いた。
夢から醒めたような浩一に、ミサトは普段の声を掛けてやった。
「全部、着替えてくださいね」
浩一と自分の汚れ物を洗濯機に放り込むと、さっさと、水を送ってしまった。
「早く服を着なさい」
そう言ってミサトはバスルームの向こうに言ってしまった。
すぐに、シャワーの音が聞こえてきた。
せっかくシャワーを浴びたのに、ミサトに汚されてしまった。
軽く拭くだけなら、と、浩一はバスタオルで体を拭い、服を着ることにした。
浩一は着替えを手にして、驚いた。
これって・・・
間違いではないか?
靴下、シャツ、アンダーシャツ、ズボン、は、ある・・・
・・・・・・が、ない、どこにもない。
ミサトの着替えも調べるが、浩一の捜しているものは見あたらない。
間違いではないのだ。
用意されている下着は、派手な光沢の小さな布きれ。
下着は女物であった。
「それ、ぼっちゃま、お好きだったでしょう?」
バスルームから顔を覗かせたメイドが、ショーツを手にして立ちつくす浩一に、悪戯っぽく笑いかけた。
「フフッ、一番お好きな色をお持ちしましたわ」
ミサトは、浩一に、このシャンパン・ゴールドのショーツを履けといっているのだ。
「あとで、キチンと履けているか見てあげますね」
(ア、ア、ア・・・)
「もう立たないんだから履けるでしょう? 」
(アァァ・・・)
「女の子みたいにあえいじゃう子にはお似合いよ、フフフ」
クスクスと笑いながら、ミサトはバスルームに引っ込んだ。
浩一の困惑をよそに、中から、楽しそうな鼻歌が聞こえてきた。