転 男転がし
悩んだ。
股間が熱く、ヒリヒリと疼いた。
全身を映しだす鏡には、首から下、皮膚の薄い所はくまなく、ミサトの印しを施され、真っ赤に染まった性器をぶらさげた男がたたずんでいる。
長身で、筋骨たくましい肩に、げっそりと惚けた青白い顔が載っていた。 眉間に深いしわを刻み、その表情は、思春期の少年のように憂いに沈んでいた。
浩一はかっちりとのりの効いた服に袖を通し、下半身を最後に残した。
冗談に決まっている。
でも、冗談なら、自分の下着がどこかにあるはずだ。
浩一は悩んだ。
バスルームからはメイドの楽しそうな鼻歌が聞こえる。
ご機嫌のようだ。
本気なら、履かなかった場合、メイドは怒るかもしれない。
機嫌をそこねたら、何をされるか分かったものではない。
先程の様に、苛められるのはたくさんだった。
でも・・・・・と、浩一は悩んだ。 メイドに苛められるのも、異常に興奮した事実も否定できなかった。
落とされる気持ちよさが、忘れられない体験だった。
メイドのトロけるような匂いに包まれ、あの脚に締め上げられると、異常に興奮した。
意識がとんでしまう瞬間、あの、全身から魂が抜けるような開放感が浩一を虜にした。
全ての肉体的な制約を解かれ、思わず失禁してしまった。
薄れていく意識の中で、股間を覆ってゆくぬくもり。
浩一は失禁と同時に、射精もしていたことには気付いていない。
もっとも、幾度にも渡って、ミサトに絞り抜かれた後とあっては、射精の量など、わずかであっただろう。
ただ、快感の電気信号がシンボルをヒクヒクと震わせていたことは、覚えているはずである。
このショーツ、履いてメイドを喜ばせるか、履かずにメイドに・・・
また、締め落とされるのだろうか。
浩一は自分の脇腹に残るメイドの脚の感触に思いをはせた。
あばら骨がきしみ、心臓が悲鳴をあげていた。
メイドは電話をしながら、余裕たっぷりに、浩一を締め上げた。
浩一がどんなに、力をふりしぼっても、解けない強靱な脚力だった。更に力を加えられることを想像すると、背筋を冷たい悪寒が走った 大柄な体躯の浩一が本気を出して抵抗すれば、そんなことにはならないだろう。
しかし、何か、心の中に自分を縛り付ける潜在意識を浩一は感じとった。
その何かが、本来の浩一を押さえつけているのだ。
小便を漏らしてしまったのも、そのせいに違いない。 浩一は自分を責めるのをやめ、すべて、その何か、のせいにした。
落とされるのがあんなに、気持ちいいなんて・・・
これ以上、倒錯的な快感を覚えさせられては、ますます自分はアブノーマルになってゆくようで、不安だった。
その反面、ミサトはもっと、自分を気持ちよくする方法を知っているのかもしれない。
もっと、色々責められたいという、妖しい期待も抱いていた。
怒らせれば、想像もできない、苦しみを味合わされるかもしれないが、喜ばせれば、もっと、気持ちいいことをしてくれるに違いない。
とりあえず履いてメイドを満足させよう。
あとで、自室で履き替えればいい。
浩一は、そう、自分を納得させ、最善策とした。
女の下着は柔らかく、丸めると、手の平に小さく丸まる。
その可愛らしさは、これが、メイドの股間を包むのだと、想像すると、たちまち、淫らな女の肌の一部となって、浩一の倒錯心を煽ってくる。
脱衣室の照明にキラキラと光沢を放ち、繊細な縫製で縫い合わされた、生地は浩一の目にまぶしく写った。
浩一は恐る恐る、生地をひっぱると、鼻先を近づけ、そっと匂いを嗅いだ。
洗濯されている。
洗濯された、洗剤の匂いに混じって、ミサトの香水の匂いがした。
わざと、香水の匂いを残しているのだろうか。
ミサトの女の匂いは感じられなかった。
何度も嗅いで確かめてしまった。
ミサトの女の匂いを捜すように。
手をツルリと滑る手触りが艶めかしい。
浩一は顔が火照ってくるのを感じながら、片脚でバランスをとって、下着に脚を通した。
スッとふくらはぎを滑り、膝でつかえると、もう片方の脚も通す。
女物の下着。
気が狂いそうだった。
履いたら、もう・・・
引き返せなくなるような、不安がよぎる。
後ろ髪を引かれるような理性に逆らい、浩一は無我になって、下着を引き上げた。
ああ!
袋を優しく、滑らかな生地がピッタリと吸い付くようにフィットする。
パチ・・・
小さく貼りつく音を響かせると、小さな、艶やかなショーツに股間を包まれた男が鏡の中にいた。
目はトロンとしてうつろになっている。
これが自分とは、信じがたかった。
昨日までの自分は、どこへ行ってしまったのだろう。
柔らかい股間を、控え見に押し揉むように、テカりのあるシャンパン・ゴールドの生地が包み込んでいる。
少し、縁から袋がはみ出しかけているので、位置をずらしてやると、よく伸びる生地がピタリと吸い付くようにフィットした。
その淫靡な美しさに浩一はウットリと見とれた。
いつのまにかメイドの鼻歌が聞こえなくなった。
見やると、バスルームのガラス戸にぼんやりとシルエットが浮かぶ。
浩一はハッ、として、ズボンを手にした。
「ぼっちゃま、もう出ますけど」
バスルームのドアが開き、髪をアップにかためたメイドが出てきた。
早い。 髪は濡らさず、汗を流しただけのようだ。
バスマットに立つと、バスタオルを取って体を拭いだした。
「あら、フフフ、気に入ったみたいね」
全身に玉のような滴をしたたらせながら、メイドは上機嫌に笑った。
腕をぬぐっている。桃のように豊満な胸の膨らみが、ゆらゆらとゆれている。
メイドの肌は海豚のように、生々しい光沢を放ち、筋肉と脂肪が、絶妙のバランスを保っていた。
ズボンを途中まで履いたまま、浩一は女の裸体に見とれた。
じっと、自分に魅入る浩一の視線を、ものともせず、メイドは全てをさらけ出して、滴をぬぐっていた。
メイドが腕を開くと、脇の下が見えた。 見て改めて、淫らだ。と、思った。
女性には珍しく、メイドはむだ毛を処理していなかった。
黒々と濡れ光る脇をメイドはバスタオルで拭っている。
メイドは下は剃毛していながら、脇はそのままにしている。
どちらも、男に見せるためにあえてそうしたのだろう。
背を向け、体を折って、脚を拭っていると、バスケットボールのようなヒップが圧巻だった。その割れ目にある淫らな肉びらも、浩一には丸見えだった。
男であれば、シンボルが付いている場所が、女の場合、何もない。
ツルリとした肉のたるみに刃物を入れたような鋭い切れ込みが開いている。
メイドは体を起こすと、振り返って、微笑した。
「ん? ちゃんと履ける?」
流し目に方眉を吊り上げて、浩一に声を掛けた。
ツルツルとした女性物の下着の生地がシンボルを、股間に魔性の滑らかさで吸い付いてくる。
「どれ、メイドさんが見てあげる・・・」
「ぼっちゃま、ここにいらして・・・」妖しい流し目で、人差し指を立てて、孝一をたぐり寄せる。
孝一は素直に従った。
「ちゃんと履けているか見てさしあげます」
ミサトは、孝一の前に跪き、股間に顔を近づけ、まじまじと眺めた。
「キチンと履けた? 」太ももに指を這わせ、下から見上げてくる。
「フフフ・・・お顔が赤いわねぇ?」浩一は、恥ずかしそうに顔を反らした。 膝が小刻みに震えている。
ミサトがとろけるような笑顔で笑う。
「興奮してらっしゃるの?」親指と人差し指で柔らかいままのシンボルを優しく揉みほぐしてやる。
「いやらしい」と、手の平でさする。
「さぁ、メイドさんによ〜く、見せてくださいな」
そう言って、浩一の腰に手をかけ、そのまま、後ろを向かせた。
細くなった生地が、男の臀部にきつく食い込んでいる。
片方の尻たぶには、ミサトの手形がくっきりと、浮かんでいる。
ミサトのしるし。
「そうそう、それでいいのよ」ミサトはうれしそうな声で、食い込んだ生地をクイクイと、引っぱった。
股間に吸い付いた生地が、後ろから、更に、締め付けてくる。
「う・・・」
「とってもお似合いよ」もう一度、浩一を前に向かせる。跪いたミサトの乳房が、腕の動きに合わせて、控えめに揺れる。
木にぶらさがった果実のようだった。
立たない・・・こんなに欲情をたぎらせる全裸の女を、間近にしているのに、一向に立たない。
「サイズもピッタリ。 小さくても、よく伸びるからぼっちゃまにもピッタリ 」ショーツのラインに沿って、指を軽くくぐらせて、敏感な性感帯に爪の感触を滑らせてくる。
くすぐったいが、幸せな気分にしてくれる快感でもあった。
ミサトは浩一の目をじっと覗き込みながら、手の平で下着をくるむと、柔らかく揉みほぐしてやった。
玉、ひとつ、ひとつを指先で弄ばれるように、転がされると、羞恥心と、男のプライドの二つが、転がされているような感覚に、雄の自我が、フワフワと揺らいでゆく。
「このことは、ぼっちゃまと、メイドの二人だけの秘密よ」
「誰にも見られてはダメ」
そういって、股間を撫で回した。
二人だけの密かなお楽しみ
わかった?
約束よ? いい?
そう、吹き込みながら、ミサトの指はやさしく、玉をくすぐってくる。