転 男転がし
「私は、ここを動くわけにはいかん・・・。 そこをなんとかうまくやれ! いいか、うまくやれ、と言っているんだ。 無駄に高い顧問料を払っているのではないぞ!」電話だけでは、片づけられない難題が続々とつかえてきた。
メイドのミサトが寝室に入ると、浩一の父は、寝室のベッドに体を起こした状態で、電話先の相手に激をとばしていた。
朝食を下げていたミサトがそっとベッドに腰掛けてきた。プンと、例のミサトの匂いが浩一の父の嗅覚を刺激する。
「責任者に直接おっしゃってみては? 」ミサトが低い声で耳打ちした。 「責任者の・・・あ・・・誰だったかな? そうだ、奴に変わってくれ!」
建前がメイドの愛人とはいえ、身の回りの世話は、ミサトが全てまかなってくれた。 ミサトが用意した服を着、調理した食事、入浴、電話の応対。時には代理人として訪問者の受付、時には有能な秘書を務めてくれる。
そして、朝、昼、晩と、淫らな奉仕も。
本物のメイドでも、ここまでできるだろうか。
全てに於いて、ミサトが世話をしてくれるので、浩一の父は、だんだんと、自分で行動しないのが、当たり前になってきた。 体を動かさず、一日のほとんどを、寝室で過ごすようになった為か、体力が急速に衰えだしてきた。
ミサトは、体力の落ちてきた浩一の父の扱いも巧みだった。 経験豊富な床上手で、浩一の父が動かなくても、気が狂う程の快楽を注ぎ込んでくれる。 ミサトのテクニックにかかれば、瀕死の状態であっても、快楽は得られよう。
そんなミサトの夜とぎに、昨晩も翻弄され、朝は、スッキリしないままミサトに起こされた。
ベッドに寝間着のままで遅い朝食をとっていた。
朝食が済んで、一区切りつくと、ミサトの朝の奉仕が始まる。
そこへ、電話が鳴った。ミサトにまかせたかったが、ミサトはあえて浩一の父に、話しを聞いてやれと、促した。
全て、ミサトの意のままに従うようになった。
そうすると、ミサトは満足そうで、機嫌がいい。
そんな後は、決まって、格別の快楽を与えてくれた。
浩一の父は不承不承で電話を代わった。
これから、という時に。
ベッドで体を起こしている浩一の父に、ミサトが無言ですり寄ってくる。 朝食が終わったので、ミサトは食器をさげに来た、それだけではない。 着替えも手伝ってくれるのだ。
ほんのりと笑みを唇に浮かべ、独特の匂いが、周りを包み込み始めた。 ゆっくりと、寝間着のボタンに指をかけ、ほぐすように、一つずつはずしてゆく。 浩一の父は、目を合わせずに受話器を持ち替え、ミサトに協力した。
「(ア・)なぜ報告が遅れたんだ? (ウフ、)・・・な、なんだ! そ、そんなことは、ど・ど、どうでもいい!」ミサトが指をソロソロと動かし、浩一の父の寝間着のボタンをはずすと、滑らかな指が胸板に滑り込んできた。
「(ハァッ、)で・で、どう・・・するんだ?」
ミサトがクスクスと忍び笑いを漏らしながら、敏感に開発してやった浩一の父の乳首を、二本の指先でカリカリと弄んでいた。
「いヒ、イイ、いいだろう・・・言ってみろ」
浩一の父は、快楽に溺れそうになりながらも、ヒタヒタと押し寄せる危機感を感じていた。 このままでは、グループの経営がままならない。
毎日ミサトと淫らな睦言に耽っていては、何もかも失ってしまいそうだった。自身の体力の衰えも尋常でない。 不吉な何かが、雪だるま式に転がってゆくのだ。 この女は狡賢い人間だ、淫乱なだけではなく、何らかの目的を秘めている。
男を破滅させる魔性の女がいるとすれば、今、自分の目の前にいるこの女こそ、それではないか? この女は危険ではないか?
妖しい快楽のうねりに比例して、不安が大きく沸き上がってきた。
ゾクリ、と怖気が走り、身震いがした。
浩一の父は、ミサトの指から逃れるように体をよじった。
が、ミサトは妖しい笑みを浮かべながら、今度はブランケットの裾に手を潜らせ、浩一の父の脚に指先を這わせ始めた。
見えないところで、ミサトの淫らな指使いが内股の性感を刺激してくる。ミサトはじっと、快感に打ち震える浩一の父の表情をのぞき込んでいる。 ミサトの鳶色の瞳が、必死に電話に集中しようとしている、壮年にさしかかった男の表情の微妙な変化を読み、蠢く指達が、男を抗えなくさせる泣きどころを、巧みに責め嫐ってくる。
「アッ、ハァ・・・」 ああ、この快楽は何物にも代え難い、しかし、この女は毒だ。きっと、毒なのだ。私は毒に犯されている。
経営の難題について頭を悩ませながら、浩一の父は、原因はこの女にあるのではないか、という不安が今更ながら脳裏をかすめる。
そもそも、ミサトを連れてきたのは、自分ではなかったか。
いや、それ自体、ミサトに仕組まれていたのかもしれない。
スルスルッ、と寝間着の下が脱がされた。ブランケットの中からしわくちゃになった、寝間着の下を指先でつまんでブラブラさせてニンマリとしている。
無垢な笑顔、にも見える。
ミサトは、着替えのズボンを手にすると、如何? と、浩一の父に伺うように頭を傾げ、広げて見せる。
ミサトはブランケットを一気にめくって、浩一の父の下半身をさらした。 寝間着の下を引き抜く際、下着が半分ずり下がってしまった。 ごま塩の陰毛に覆われたシンボルは、淫らな条件反射によって、やんわりと膨らみ始めていた。 ミサトは、笑みを浮かべながら、下着を脚から抜き取ってゆく。
浩一の父は電話に耳をかたむけながら、内ももに感じる、女の絹のような肌に発情のうずきを覚えた。
電話先の相手が萎縮しながら、訥々と話すのを必死の思いで聞きとりながら、浩一の父はだんだんと、快楽が全身に広がってゆくのを押さえられなくなってきた。
何という、甘美な毒なのだ。 フッ、と意識が飛んでしまいそうになる。 気がつくと、ミサトの鼻息が、浩一の父の頬を生々しく撫でている。
気づかないうちに、電話の内容よりも、ミサトの息づかいに心を奪われていた。 ミサトの指が上半身をはい回り、うなじから、こめかみ、髪の毛へと進んでくる。指が髪の毛をすくように愛撫し始めると、目の前をミサトの雌豹のような肢体が、淫らな香りとともに、すり寄ってくる。 何を考えていたのか忘れてしまった。
ミサトが髪の毛を櫛ですくように愛撫すると、頭の中の糸がもつれて、電話の内容がさっぱり分からなくなってきた。
電話の相手が、何度も浩一の父の返答を伺う言葉にハッと、我に返るが、もう、何を言えばいいのか分からなかった。
両者に気まずい空気がたちこめた。
「お、おまえの言うことは、わからん!」思わずカッとなった浩一の父は、声を荒げて返答を突き返してしまった。
ミサトはそんな浩一の父の対応っぷりには、まったく気色ばまず、
尚、指を這わせ続けた。
「ウッ、ハァ・・・」
電話の相手は、そちらに出向くので、対応を検討して欲しい、と訴えかけてきた。相手は不安気に気遣うような口調から、少し呆れた、といった口調に変わってきた。
浩一の父は、電話に熱くなった。
「ここに来るのもならん、マスコミに嗅ぎつけられるだろう!」
スッと、股間にミサトの手が触れてきた。
「う・・・」
「アラ〜? フフッ、旦那様、もう、こんなになって・・・」高い声で聞こえよがしにそう言うと、ミサトはメイド服のまま、身を乗りだしてきた。浩一の父の腰にまたがり、首に片手をかけ、腰をくねらせて、浩一の父の下半身に股間をすりつけてやる。 耳元に唇を寄せ、熱い息を吹き込んでくる。
「いけませんわ、こんなに、ほ〜〜ら、こんなに、こぉんなに堅くなさって〜」ミサトが後ろ手に、浩一の父の股間を指先で嫐る。
電話中の浩一の父は、しどろもどろになって、取り乱した。
電話先の相手が急に沈黙した。 聞き耳を立てているのだろう。
浩一の父は、受話器のマイクを手でふさぎ、声を潜めてやめさせようとした。
「ほ、本上、い、今はやめなさい、ウフッ、や、やめないか!」
ミサトは聞く耳を持たず、急激に堅さを増してゆくシンボルを下着の間から指を差し入れて掴むと、ゆるゆると上下に扱きだした。
丁寧に形を整えられた爪の先の堅い感触と、滑らかで暖かい指の腹が交互にシンボルを刺激する。
「ハッ、アフ! 本上!」脚をばたつかせた浩一の父は、電話先に聞かれないように声をひそめた、つもりである。 唇を噛んで、声を押し殺そうと試みるが、むなしい努力であった。
「アアッ、やめ、う、やめ・・・ろ・ホォ・・・」
「だぁ・め!で・す、フフフ、やめられるもんですか、こんなに堅くされてるのに・・・フフッ、」
「ア、ほ、本上〜、や、やめ・・・さい・・・」
「いかが? フフフ、ホラ? ほら?」
ミサトの指の動きがだんだんとピッチを上げてきた。
快感の波紋がぞくぞくと、肉体の奥に向かって広がってゆく。
ヘッドボードに上半身をもたせかけ、受話器を持っていないほうの手でミサトを押し返そうとするが、今や脚を浩一の父の下半身にがっちりと絡みつかせ、意気揚々と乗馬気分で腰をゆすっているミサトは両手でも押し返せそうにない。
亀頭の先が先走り汁でヌメり、潤滑油を注したように、どんどん指の動きが複雑で早くなる。 繰り出される刺激も強くなってきた。
逝きそうになり、浩一の父の声がうわずってきた。
「あ、ほ、本上、ほんじょ! ホンジョ! ホッ!」昇天の視界が広がる。 その瞬間に備え、四肢に緊張が走った。
「アッ!」
ピタリ、と、浩一の父が迸る寸前、ミサトは指の動きを止めた。根元をきつく握ってやった。 「あぐっ」ビクビクと動くシンボルを力任せに押さえつける。
「ムガ・・・アア・・・」
絶頂の一歩手前を浩一の父は彷徨った。 首の後ろが砂をつめたように怠い。 頭の中が真っ白になりそうな仕打ちであった。
そんな哀れな、親子ほど年の離れた小娘に、翻弄される浩一の父の表情を、ミサトが嫌みたっぷりに歯を見せてあざ笑う。
「やめました」小首を傾げて、片眉をつり上げる得意の仕草で、 「よろしいんですよね? フフッ」口の端を意地悪につり上げクスクスと忍び笑いを漏らしている。
「う、う、うぅ・・・」
苦悶の呻きを漏らす浩一の父の耳に、受話器から回線の発信音が無情に聞き取れた。 受話器を持った手から、パタリと力が抜けた。
途中で電話は切れてしまった。
「・・・切れたぞ」
大きく息を荒げ、浩一の父は真っ赤に充血した目で、ミサトを睨んでみる。 ミサトは笑いをかみ殺し、含み笑いをしていた。
その表情は、悪戯好きの少女のように、無垢な笑みを装っているが、口元に添えられた、長くしなやかな指先でしていたことは、男をあえがさずにはおかない、淫ら極まりない大人の女の悪戯であった。
「? やめましたよ? 」白々しくミサトはとぼけて見せた。
じっと睨む浩一の父の視線をよそに、何食わぬ顔で、ミサトは着替えを手伝ってやる。
「まずかったのでしょうか?」
「も、う、いい・・・」
「?お腰、上げていただけます? 」ミサトは、遠くを見つめるような眼差しをしている浩一の父に、下着を履かせてやる。 下着を脚にスルスルとくぐらせると、ミサトの暖かい指先が触れ、欲望の証が反応した。 クスッとミサトが鼻で笑う。
「さ、」ミサトに促され、ベッドに腰掛けさせられると、ミサトが膝を突いて、下から、ズボンを履かせにかかった。
薄いウールのズボンがスルスルと上げられ、敏感になった脚をサラリとくすぐる。ポケットに指を差し入れ、しわを直してやる。
リンパ腺を刺激するように指先がコチョコチョと蠢くと、憂鬱な顔をしていた浩一の父の眉間の皺が、ゆるんだ。
跪いたミサトが、下から蠱惑的な眼差しでじっと見上げてくる。
浩一の父は、あえて、遠くを見たまま、目をあわさないようにしている。 ミサトがファスナーに指をかけた。
「もういいんですか?」
ジジジ、ジッ、ジッ、とファスナーの振動が、その下を突き上げているシンボルをなぞるように刺激する。
「・・・」浩一の父は答えなかった。
ファスナーは突き上げられたシンボルの先で、つかえ、窮屈に閉じられようとしていた。 ミサトは、浩一の父の頬に表れた小さな反応を見逃さず、追いつめにかかった。
「このままでいいんですか?」
クスクスと笑いながら、ズボンのファスナーを開いたり、閉じたりして、刺激する。
「ひっかかってしまいます」
ゆっくりとミサトを見ると、ミサトは爛々と目を輝かせ、口元には淫らな微笑を浮かべて、浩一の父を見上げていた。
「よろしければ、わたしがお手伝いしてさしあげましょうか」
あごを突き出し、スッと目を細めて、ミサトは低い声で尋ねた。
「わたしが、気持ちよくヌイてさしあげます」