転 男転がし

 「ところで、旦那様?」ミサトが顔を上げてニッコリ笑う。
 「?」浩一の父はのけぞったままで構えた。
 「私、お手当のことで、少しお願いがありますの」
 「ま、またか」天井を見たままの浩一の父の顔に、むっくりとミサトが顔を寄せてきた。
 「そうだったかしら? 」ミサトは、のほほんとしらを切った。
 浩一の父は先月も、その先々月も手当の割り増しを要求された。もう、当初の契約条件の四倍以上に更新している。 こんなに高くつく女は初めてであった。
 ミサトの手当は、新しいメイドでこの館を埋め尽くせるほどの額に膨れ上がっている。 契約を結ぶ時も、破格の手当には内心憤慨していた。 しかし、いずれ飽きてしまうので、必要なくなれば、捨ててしまえ。 そのときは契約など反故にしてしまえ、と高をくくっていた。

 高をくくっていた、それが間違いであった。 飽きるどころか、麻薬に溺れるように、病みつきになってしまった。
 ミサトは男を泣かせる小技を、少しずつ小出しにしながら、延々と契約を更新していた。 

 「毎日こうやって、こ〜〜〜〜やって、特別にいいことをしてさしあげているんですが、」ミサトが浩一の父の耳元に甘い猫なで声で囁きかける。 手は下、下半身を優しくくすぐっていた。
 羽のような軽やかなタッチが、性感を巧みに高みへと扇いでゆく。
 

 「ああ、」唇を小刻みに震わせながら、浩一の父は否定できず、返事をした。
 「その気持ちよさを、お手当に反映していただきたいのですが? 」 来た。 値上げの要求だ。 浩一の父は、不機嫌になり、つい、ぞんざいに吐き捨てた。
 「あとにしろ」今回は何か適当な物をボーナスに買ってやり、うやむやにしよう、そう考えた。 が、ミサトは、納得しなかったようである。

 「・・・・・・」ミサトは無言で責め始めた。
 うつむくと髪の毛に小面が隠れ、表情は掴めないが、その指使いで、ミサトの気持ちは理解できた。
 指使いが荒々しく刺激したかと思えば、極端なフェザータッチで焦らし、口に含んでは泣き所をこれでもか、と責めまくりだした。
 あっというまに絶頂に突き上げられ、迸る瞬間、全てを止めてしまう。
 そして、また、初めから繰り返した。
 そのインターバルはどんどん短くなり、浩一の父は快楽の激しい高低差に悶絶させられた。
 時折、らしくもなく、糸切り歯を立てられると天国から、地獄の底に一瞬にして墜ちる恐怖を感じた。
 浩一の父は、後悔した。 ミサトを不機嫌にしてしまった。
 竿を横銜えにしゃぶられ、尿道に爪の先を突き立てられ、カリカリと刺激されると、浩一の父は体をよじって悶絶の喘ぎを上げながら、考え直した。このまま、寸止め地獄を味わわせて、ずっと嫐りものにするつもりらしい。 気が狂いそうだった。
 ミサトが手を止めて、また地獄に墜としにかかる頃合いを見計らって、浩一の父は切り出した。
 

 「い、今でないとだめなのか!」
 「ハイ、駄目です」ケロリと言い放った。

 「旦那様がトロケている今だからこそ、フフフ」ゾクリとくる、妖艶な流し目でねめつける。
 「小ずる賢いまねを! 」
 「はぁい?」ミサトが片眉をつり上げた。思わず恫喝する浩一の父を屁ともせず、ミサトの指が快感を紡ぎ出すと、
 「あぁぁぁぁ〜 」哀れな悦楽の声を上げた。
 フッフッフと、ミサトは笑いながら、ゴシゴシと亀頭を手のひらでこすったかと思うと、優しく包んでやり、転がすように愛撫した。

 「ひえ」脚をつっぱらせて、腰をよじるが、肝心の刺激は巧みにはずされる。 女の手のひらで弄ばれている。

 「駄目ね。イケませんよ、このまま・デ・ワ・ 」ミサトはきっぱりと宣告する。

 「お返事をいただくまでは・・・ 」目が涙でかすんできた。
 (イカせませんからね、フフフ)

 「いく、いく、いぐ〜 」 ミサトが軽やかな手つきで上下に扱き出すと、浩一の父は、意のままに欲望の言葉を口にした。

 (だめだめ、だぁ〜め!)キュッと、根元を締め、肝心の刺激を取り上げてやる。
 「うぉ・・・」歯をむき出して身悶えした。
 「お返事は? 」ポツリとミサトが漏らした。
 (ほら、返事! )チラッと目くばせされる。

 「ホラ、ホラホラ」ミサトが薄く細めた眼差しで見つめながら、無情にも亀頭の敏感なカリを責めてきた。
 「ああああ 」痺れるような快感が背筋を伝って上ってくる。

 ミサトがゆっくりとストロークを再開した。 最初はゆっくりと。
 「フッフフフ、ホラ、イキたくてイキたくてタマラナ〜イ 」
 浩一の父の目に、ミサトの冷たい眼差しがゆがんで見える。


 「ほら、ほら、イケるかしら? 」どんどん早く。
 「旦那様はイケるのかしら〜 」更に早く。

 「イカないんですか〜? 」機械のように、規則正しく。

 「我慢なさってるんですか〜? 」カチリと手の動きが切り替わる。 

 「フフフ、ひょっとしてイケないのではぁ? 」ゆっくりと扱く。

 「イキたくても、イケないんでしょう〜? 」更にゆっくりと。
 (イカせるもんですか)

 「私のお願いをききとどけていただけるまでは、イケませんね〜」
 ニヤリと意地悪い笑みでミサトが小首を傾げる。

 「あああ、いか、いかせてくれ! 」懇願した。

 「では、聞き届けていただけるんですね?」パッとミサトの顔がほころんだ。
 「わか、わかった」これ以上焦らされてはたまらない。

 「具体的におっしゃってくださいな」ミサトはうれしそうに、目を輝かせ、いよいよ、本格的な刺激を送ってきた。
 「あげる、ハウゥ、あげる、フゥッ、て、手当をあげるから!」
 とにかく、今はミサトに扱かせるのだ。 このまま奉仕させて、話はそのあとだ。 このままイケルようにと祈った。

 
 しかし、ミサトは納得していない。
 「具体的にって言うのは・・・そう、たとえば、こんな風に」

 ミサトは吹き出しそうになりながら、実況を口にした。
 「今、旦那様の勃起したちんぽの先から、ヌルヌルの先走り汁が大さじ一杯程、流れ出ています」
 浩一の父は目をむいて天井を仰いだ

 「なあにこの有様。 いやらしいわぁ」

 「フフフ、ダラダラと締まりなく垂れ流しているわよ。このままだと、コップに溢れるぐらい出るんじゃないかしら 」 

 「え〜、指が滑って、とても、滑らかに扱けます。 これは天然の潤滑油です。 どんどん溢れてくるので、いつまでも扱けます。 旦那様はもう、イキそうです。 でも、数字のお話を、まだ聞かせてくれません。 聞かせてくれるまで私は待つつもりです。 こうやって、フフフ、こ〜〜やって! 敏感なところを責めながら扱いて待ちます。 とても滑りがいいので、手が楽です。これなら、一時間でも扱けます。 旦那様はとても気持ちが良さそうです。 片手で扱けば、両手で二時間は扱けそうです 」 
 「やめろ! 」思わず叫んだ。

 「止めてご覧なさい。 メイドの指をこんににヌルヌルにしてどうなさるおつもり? 」ミサトはコロッと態度を豹変させてねめつけた。 速く扱いて喜ばせたり、ゆっくりと袋に指を滑らせて焦らす。
 「あああ、ホンジョ! タノム! 手、手当は5割増しにしよう! ど、どうだ? は、早く逝かせてくれ!」

 「フフフ、五割ですか・・・」ミサトの顔が髪に隠れて見えない。
 ただ、幾分機嫌はいいようだ。 扱くテンポが俄然速くなる。
 「ひ、ひぃ、ひぃ、いぐ! 」全てをさらけ出すように、喘いで、全身に緊張が走った。 が、またしても、ミサトは止めてしまった。
 「ア? ホンジョ〜〜〜〜」歯の間から絞り出すような声であった。

 「五割だと、ここまでですが、」まだミサトは不満なようだ。
 「い、いい加減にしないか・あ・あぁぁぁは〜ん」なすがままだった。

 「フフフ、どうですか?」カクカクと口を開けながら、浩一の父は顎をのけぞらせている。
 「こんなに気持ちいいのに、五割ですか?」もう、何がなんでもイキタイ、そう思えてきた。
 

 「ヒェ! ば、倍にする! 倍にするから、イカセてくれ!」
 思わず、うわずった声で叫ばされていた。 おそらく今回もどこかにマイクを用意して会話を記録しているに違いない。 しかし、わかっていても、声が出てしまう。 歌わされてしまうのだ。

 「フフフ、愛してますわ、旦那さま、優しくて、気前がよくて・・・」ミサトが歌うように感謝を口にしながら、いよいよ浩一の父が望む指使いを開始する。
 「おほ〜ぉぉ〜」
 (いやらしくて、変態で、淫らで、どうしようもないほど好き者で、この為なら、なんでも捧げたくなるでしょう? )

 さあ。
 お礼よ。 たっぷりとイカせてあげる。

 ミサトはギラリと歯を見せて笑うと、指先に気をこめ、迸りの快感を送ってやることにした。

 

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メイド 魔性の快楽地獄