深夜の淫らな奉仕
浩一はメイドの下着を堪能中だった。
最悪の瞬間ではないが、ブリーフ一つの半裸で、メイドの下着を手にしているのだ。 しかも股間のシンボルはみっともないほどに勃起しており、ブリーフのデザインをだいなしにしていた。
明るい脱衣室の照明の下に、一歩踏み出すメイドのその表情は無表情で冷たかった。
これはメイドが仕掛けた罠である。
見事にひっかかった獲物に、内心メイドはほくそ笑んだ。思わず、唇の端がつり上がりそうになるのを必死で押さえつける。
「あの、ぼっちゃま、それ、わたしの洗濯物ですよね。 なにをなさっていらっしゃるんですか? 」
おしまいだ。
こうなったら、強引に突っ走るしかない!
緊張した面もちで後じさるメイドに浩一は用心深く近づき、
「あんたが悪いんだ! 」荒々しく抱きつくと、彼女の体をローブの上からまさぐった。壁に押しつけようとするが、メイドは意外に強い力で抵抗してきた。
「ぼっちゃま、な、何を。う、や、おやめください! 」 自分の両腕のなかで、くねくねと抵抗されると、その柔らかい肉体ともんもんと包まれてゆく甘い香りに浩一は激しく欲情した。
「うう、本上さんが悪いんだ。思わせぶりなことばかりやるから! この下着だって、こんなとこに置きっぱなしだし、いつも、いつも、こんな香水をぷんぷんさせて、本上さんがわるいんだ! 」
「う、ぼっちゃま、やめなさい。やめて、お願い、お願いですから、落ち着いてください」彼女の息が耳にかかる、低く、なだめるような口調で説得しようとしている。
しかし、そんな声を耳元で吐息混じりで囁かれたら、ますますたまらない。
「だめだ、好きなんだ。本上さんがたまらないんだ。もう、畜生! 」乱暴に胸に顔をうずめ、勃起した股間の高まりをメイドの股間にグイグイと擦りつけてゆく。
「いいだろ?もう、がまんできないんだ!」
激しく震える手をメイドのローブの下に潜り込ませ、そのなめらかな柔肌の感触に感動しながら、片方の手はメイドが離れないように背中にがっちりと回し、指先をさらに女の股間に向かって這わせてゆく。
「う、 」と、突然メイドの唇が浩一の唇に吸い付いてきた。
同時に、メイドの股間に這わせた手はそのなめらかな感触の太股にぎゅっと挟まれ、動きを封じられてしまった。
ぬるり、とした甘い唾液は浩一の唇を溶かし、グニュっと強く吸い付いてきた唇の中からメイドの舌が浩一の口中に侵入してきた。はあ!
「ん、んん〜〜 」
メイドの思いもよらない思い切った行動に出鼻を挫かれた浩一の気持ちをよそに、メイドはその舌をグネグネとくねらせながら、浩一の口中を撹乱し始めた。暖かくぬめった侵入者が浩一の口中の性感帯を妖しくみそめ、ざらついた感触の表面をこすりつけて浩一の舌に求愛行動を始めた。
年上の女の熟練したキスのテクニックの前に浩一の攻撃的感情はあっけなく籠絡した。荒々しい浩一の行動が落ち着きを取り戻し、メイドとの甘いキスは浩一の心を奪った。キスをしながら、メイドは積極的に両手を浩一の首に絡め、ぐいぐいと彼女のほうに引き寄せてくる。
指が浩一の頭髪に潜り込み、浩一の頭の中をかき回すように愛撫する。さらには全身の緊張を解き、浩一に自分から体を押しつけてゆき、柔らかい太股を浩一の股間に割り込ませると、熱くなった高まりにその感触をごちそうした。
股間から全身に甘い官能的な感覚がひろがり、浩一は全身の力が抜けてゆくのだった。ああ、ああ、あ〜 メイドの濃厚なキスは浩一の口中を様々な角度から責め、ときおりメイドの柔らかい頬が浩一の鼻をふさいで窒息させた。
「んぱっ・・・ 」一つになった唇が再び二つに離れると、二人の唇の間には水飴のような唾液の糸がつっとアーチを描いた。
ふう、はぁ、あ、あ、浩一は軽い酸欠状態で息を切らしていた。
「大丈夫ですか? ほら、深呼吸してください。ほら、スウーゥウ」メイドの唇がすぼまり、息を吸い込む、同時に浩一もつられて、息を吸い込む。
「吐いて〜〜フウゥ」メイドの唇から香しい吐息が浩一の顔にサァーっと吹きかけられる。
「落ち着きました? 」ぴったりと体を密着させたまま、、上からメイドが優しく問いかけてくる。浩一は知らないうちにメイドの前に膝をついていた。
メイドの唾液でキラリと光る唇に浩一はボーっとなって見とれてしまう。
「急に抱きついてくるんですもの。もう、 」と、微笑む唇が浩一に語りかけてくる。浩一は今やメイドに濃厚な口付けによって、機先をそがれたうえに、脱力状態にあった。そんな浩一の隙をメイドが狙わないわけがない。
「いったい、どうなさったんですか? 」
浩一の前にたたずむメイドはその美しい脚線美を浩一の間近に突きつけ、浩一はその神々しさに手を触れることもできず、ただメイドの表情を仰ぎ見た。
「こ、これは、その・・・」言葉が続かない。
「わたしの汚れ物を・・・」メイドが間髪を入れず言葉を差し挟む。恥ずかしさでヒリヒリと全身が熱くなる。冷徹な問いかけとは裏腹に、メイドは女神のように慈愛に満ちた眼差しで浩一を見下ろしてくれる。
しかし、言葉は冷たく、浩一に突き刺すように投げかけてくる。浩一は母親に間違いを咎められ、詰問されるように萎縮していた。
メイドは容赦しなかった。
「メイドの汚れ物を・・・」
わからないの? とでも訴えるように再び突き刺してきた。すっとかがんで浩一の顔を間近でじっと見つめてくる。フワッと花のようにローブがなびいて、メイドの匂いが浩一を包む。浩一の伏せがちな視線の隅には、メイドの艶めかしい太股が、その奥の暗がりがちらつく。一瞬、メイドの瞳がチラとわずかに浩一の視界の隅を覗くように揺れた。
なにをみているの? とでも言うように・・・
メイドは少し躯をよじってローブの裾を直してしまった。浩一は全てを見透かされたような気がして、押しつぶされそうな羞恥心を味合わされていた。今は慈愛に満ちた穏やかな表情がいつ、怒りと侮蔑をあらわに自分を責めるのかと怯えていた。
「何をなさっていたんですか? 」あくまでもその表情は穏やかである。
「・・・・・・」浩一はメイドの鳶色の瞳から目を反らした。理性を取り戻した今の浩一に言えるわけがない。
(言えるわけないわよねぇ)フッとメイドは冷たい笑みを漏らし、
「おっしゃってくださいな」と、語気を荒げるでもなく、冷たい口調で追いつめてゆく。
「ぼっちゃま、わたしの目をみてください」
やさしく手を添えて浩一を向かせる。メイドは浩一の目をじっと見つめたまま、浩一の足下に散らばった布きれをたぐり寄せた。
「ぼっちゃま・・・これはなぁに? 」
すっと浩一が漁った布きれを見せる。
「洗濯物・・・」浩一が小さな声で答えるが、
「汚れ物です」メイドはきっぱりと言い放つ。
「・・・」自分が暗闇に沈んでゆくような、ひどく惨めな気分である。
「違いますか? 」
「・・・」
「汚れ物で、女性の下着でしょう? 」メイドは浩一と鼻がくっつく程に顔を寄せて浩一を責めにかかった。膝をついて床にへたり込む浩一にメイドが被さるように迫ってくる。
「・・・」浩一の顔色は青白く血の気を失っていた。
「ご自分でキチンと話せないんですか? 」
「・・・」心なしかメイドの口調がきつくなる。浩一は冷たい汗をかいていた。メイドがみつめる浩一の瞳には明らかな怯えが浮かんでいた。メイドの瞳を見ているとその奥にどんどん頭の中が吸い取られてゆくようだった。何もかも見透かされるようで恥ずかしかった。嘘をいって誤魔化そうにも言葉がここにない。全てメイドの鳶色の瞳が吸い取ってしまった。事実しか残っていなかった。
欲情に我を忘れ、倒錯的で異常な興奮に溺れた事実しか。
理性を取り戻した今の浩一にその事実はあまりにも残酷な告白となるだろう。
「・・・」言えない。
「・・・全部私に言わせるおつもりですか? 」
メイドの口からは絶対、聞きたくない事実である。
メイドの顔色は上気したようにすこし赤味がさしてきた。
「誰の汚れ物ですか? 」
「ほ、本上さんの・・・ 」浩一は必死に答えた。できれば事実の核心は濁しておきたかった。
「そうです。わたしの下着で、わたしが履いていた汚れ物です」
ブスリ、とメイドの指摘が浩一の心臓に突き立てられた。
「それが、どうして、今、ここにあるんですか? 」
「バスケットの中に固めてあったメイドの下着が、汚れ物が、どうしてぼっちゃまの手にあるんですか? 」
「興味がおありなんですか? 」
ブスリと、突き刺さる。
「メイドの下着に? それともわたくしの下着だから? 」
「何をなさっていたんでしょうか? 」
羞恥心で全身を真っ赤に染められた哀れな浩一に、メイドの容赦のない言葉が次々と突き立てられてゆく。
「匂いを嗅いでおられたように見えましたが、そうなんですか? 」
「なぜそんなことを? 」
「ぼっちゃまはわたくしの汚れ物の下着でなにをさるおつもりなのでしょか? 」
「あの後どうするおつもりだったのですか? 」
「下着を盗んだ変態のように恥知らずな行為に耽るつもりだっだんですか? 」
「ここを、こんなに」メイドは脚をグイと浩一の股間に割り込ませ、堅いそれに押しつけてきた。
「あう! 」乱暴に押しつけられた脚に浩一は声を漏らした。
「これ、何ですか?」
「こんなに恥ずかしくなったあそこに、何をしようとしていたんですか? 」ぐいぐいと脚で嬲ってきた。
「ぼっちゃまはそれがしたかったんでしょうか? 」
「何も言えないんですか? 」
浩一に息する暇も与えずに一気にメイドはまくし立てた。メイドは一度もまばたきをせず、浩一にもそれを許さなかった。終始、浩一の目を見つめたまま滝のように言葉を浴びせた。
「・・・は、う・・・ 」
(もう、おしまいだ)
浩一の人格に大きな穴が空いてしまった。
メイドは今や明らかに上気した顔で大きく深呼吸をすると、さっと立ち上がった。背中を向けて今浩一のもとから立ち去ろうとしていた。
「あの・・・」床に膝を付き、メイドに声をかけようとする浩一は哀れの極みであった。声はうわずり、目は涙で潤んでいた。
「もう、聞きたくありません。その先はおっしゃらないで! 」
メイドは浩一から顔をそむけたまま、ぴしゃりとはねつけた。
「本上さん!」メイドは廊下に向かって歩き始めた。