転 男転がし
「さあ・・・ 今度はちょっと辛抱してくださいね」
ミサトは浩一の窄まりから、指を引き出すと、軽く挿したままで、人差し指を添えて割り込ませてきた。
辛抱、無理な言葉である。 ミサトがなぜきつく縛ったかを思い知った。 女の指とはいえ、二本の指が肛門を隆辱しようとしているのだ。 先ほど初めて指一本を全部突き込まれて、天国の享楽を味わった。 が、今度は地獄だった。 女の指が二本に増えただけで、表と裏がひっくり返る程状況が逆転した。 すぐ二本はきつかった。 股の間から全身を引き裂かれるような痛みがこみ上げてくる。 とろけていた感覚が、恐怖と痛みを訴えだした。
ミサトを不機嫌にしたくはないが、痛みに体は正直に反応する。
体が本能的に逃れようと暴れる、関節がギリギリと軋み、戒めは肉に食い込んでくる。
「い、いいいいい、やめ、いい、痛い・・・痛い!」
「フンン? 力を抜いて・・・」真っ赤になりながら、醜く歪んだ男の表情に、ミサトは平然としていた。 束ねた指をドリルのように、ねじ込もうとしているようだ。 股間を肛門から袋まで、冷たい滴が垂れる感触。 ミサトが例の黄色いジェルを、たっぷりと垂らしながら、指を突き入れようとしている。
「凄い締め付け・・・もっと開くでしょう?・・・」
やめさせようにも、言ってやめてくれるような女ではない。
ハサミは冗談・・・いや脅しであっても、今度は本気が感じられる。
メロメロにとろけさせておきながら、あえてきつく縛る理由が他にあるだろうか。 逃げようにも、手足の自由を奪われ、這いずることもできないではないか。従順になってされるがままになるしかない。 拷問を受けているような痛みが更に厳しくなった。
悲鳴をこらえようとするが、もう、こらえられそうになかった。
「ギッァ〜〜〜〜、み、ミサトお姉様、お願いです、裂けます! 裂けてしまいます!」ミサトを刺激しないよう、懇願したつもりだった。
「そんな気がするだけよ・・・力を抜・い・て・・・」ミサトの反応は冷たかった。 目を伏せたまま、まったく取り合わない。メリッ、と、悲惨な音が耳に聞こえたような気がした。
同時に火がついたような激痛が全身を隆辱した。
「ギッ・・・ア・ァ・ァ・・・」顎がはずれんばかりに口を大きく開け、かすれた声で精一杯、悲鳴を押さえた、つもりだった。 しかし、自分の声が部屋の壁から跳ね返って聞こえた。 脂汗がドッ、と、全身から噴き出してきた。
「ちょっとだけ痛いでしょうけど・・・」ひっそりと独り言のように呟いている。
「今だけ・・・すぐ治まります・・・じきに麻痺します・・・」その言葉を信じるしかなかった。
「むぐ! うぐ!」口に何かが突きつけられた。
「しばしの麻酔がわりよ・・・口にいれておきなさい・・・」
ミサトは上履きの片方を浩一の父の口にかませた。
口の中に堅い靴底が舌に当たった。と、同時にミサトの足の匂いが、麻酔のように、嗅覚をとろけさせた。
女の足の汗をタップリと吸った靴を口にほおばっている。
なんという惨めな有様か。
しかし、あまりにも無惨な扱いが、肛門の痛みを紛らわしてくれた。
「痛かったら、かまわないから、それで歯を食いしばりなさい・・・」
「グ〜〜グゥゥー、ムゥ・ウ・ウウ・・・」
麻酔だと言われれば、麻酔だから痛みはなくなる、と信じて浩一の父は必死にかんで、味わった。 不思議なことに、ミサトの言葉通り、噛んで匂いと味を堪能していると、肛門の痛みが和らいでゆく。 女の履き物は魔法のような麻酔効果を発揮した。 ミサトが麻酔だと言ってくれたおかげで、なんとか耐えられそうな気がしてきた。
ミサトのもう一方の手が袋から、ちまきにかけて、優しくさすってくれた。激しい嵐のような痛みの中にあって、それは雲の間からさした太陽の光のように希望を照らした。この先に晴れ間が拡がっている。 もう、すぐそこまで。
「ふん、フグググ!」
「そう・・・もう少し・・・」ミサトの静かで優しい言葉が、浩一の父を励ます。
メリメリと拡げられるアナルに、痛がる浩一の父を、快楽と言葉で翻弄しながら、ミサトは指を更に押し込んできた。
「ヒィ〜〜〜!」浩一の父は耳まで真っ赤にして痛みに耐えた。
「シ〜〜ッ・・・騒がないの・・・ほら、力を抜かないから痛いの・・・」
「ハッ、ハヒ!フンッ・・・・クッ!」深く入れるのは無理である。が、ミサトはお構いなしである。浩一の父は思わず口から落としそうになったミサトの上履きを必死に噛んで歯を食いしばった。
「そう・・・いい子ね・・・そのままよ・・・」
全部入ったようである。肛門が破れたように熱く、ヒリヒリした。
暖かい何かが股間を伝っている。出血したのかもしれないし、ミサトの例のジェルかもしれない。 しかし、見ることができなかった。 耐えられそうにない結果を知りたくなかった。
「ほ〜ら・・・二本・・・余裕ね・・・? 入るじゃありませんか・・・」ミサトが指を軽く倒したりすると、穴が更に拡げられるような痛みが感じられた。
「フゥ!ウルウルウルウ!」浩一の父は狂ったように首を振ってやめてくれるよう懇願した。
「駄目・・・締め付けては・・・力を抜くの・・・深呼吸しましょう・・・ 」
ミサトは締め付けを楽しみながら更に指を開こうとした。
「ギィヤ!」ついに、浩一の父は涙を流し始めた。
まだ三本目があるのだが、次回に見送ることにした。
今はコレくらいにしてやろう。ミサトは次にまわすのが名残惜しいが、浩一の父の涙で我慢することにした。 三本目は必ずカメラに残しておこうと心に決めた。
邪魔は入らない。タップリ時間もある。開拓しがいのある体にミサトはメラメラと燃え上がる興奮を感じていた。
目の前に転がる男は、崩壊寸前と見た。 ミサトは、そろそろ次の刷り込みを行うにはいい頃合いだろう、と、片方の腕を伸ばして、浩一の父の頬を手で優しく撫でてやりながら、目を見つめた。
「旦那様・・・こっちを見て・・・」
苦汁の涙で潤んだ浩一の父の目に、バサリとほどけた髪の間から、ミサトの鳶色の瞳が見つめ返している。 その視線は、目から心の中まで射抜くようなオーラが感じられた。 顔を歪めながらミサトの目に見入る浩一の父の顔には不安と苦しみが無数に刻まれていた。ミサトは優しい声で静かに話しかけた。
「抜いて・・・力を抜くの・・・もう、力は必要ありませんから・・・ 」
首を振って抗う浩一の父の口から、麻酔を取り上げてやる。
「ウ〜〜〜・・・」
「駄目・・・目を逸らさずにこっちを見て・・・」
ミサトの目に捉えられた浩一の父の目がゆっくりと和らいでゆく。 深い眉間の皺が消えてゆく。 ミサトの眼差しが痛みを吸い出しているようで、浩一の父はウットリと魅入られたように、見つめ返していた。
うっすらと目を細め、ミサトは優しく、ゆっくりと話し始めた。
「旦那様は誤解しているようです・・・」
「・・・痛いと感じるのは錯覚です・・・」
「旦那様は・・・最上の快楽を、誤って痛みに感じているのです・・・」
「私が・・・旦那様に酷い仕打ちをするはずがありません」
「私は・・・旦那様に気持ちよくなっていただきたいだけです」
「でも・・・旦那様は私に・・・不安を抱いておられるようです」
「不安は・・・ここに抱いておられますね・・・」
ミサトはそっと浩一の父の胸に手のひらを這わせ、手のひらの温もりをしっとりと、伝えた。女の柔らかい手のひらがじんわりと温もりを伝えてくる。心にまで温もりが伝わるような慈愛のこもったタッチだった。
「不安が旦那様を地獄の痛みで苦しめているのです」
ミサトがゆっくりと手のひらで小さい円を描くと、手のひらの下で、男の乳首が真珠のように堅くコロコロと踊った。
「あ・・・」
「私はその逆・・・旦那様を、歓喜の世界へ、ご案内しようとしているのです」グリッ、と、アナルを責めてやる。
「ンッ!」忘れようとしていた痛みを思い出される。
「痛いの?」
「ン〜〜〜ング〜〜〜!」浩一の父は歯をむき出して顔を歪めた。
「痛く感じるのは・・・私に心を閉ざしているからです・・・」
ミサトの手のひらがうなじ、胸、脇、腹部、その先、とゆっくりと這ってゆく。
「止めて欲しい?」
ミサトの片手が体を撫で回すだげで、股間の疼きがジクジクと淫らな痙攣を始める。ちまきにされた肉棒はもはや、痛みに苦しみを感じていなかった。痛みに甘い蜜の味を見つけた。毒花に危険を冒してでも味わいたくなる甘い蜜を見つけたのだ。
「ここまで来て止める?」
毒と紙一重の蜜の味は、知ったが最後、そう簡単に止められるものではない。ミサトの言葉は頂上の手前まで案内しておきながら、頂上を指さし、「引き返すか?」と尋ねているようであった。
「もうすぐそこまで来ているのよ・・・」
味わえるうちに、とことん味わいたくさせられた。
「ここまで来たら、あっという間にそこについてしまいます・・・」
返答を望んでいるのだろうか、ミサトは更にたたみ掛けた。
「それとも・・・痛くて、苦しい目に遭ったまま終わりにしますか?」
「ヒッ!」ミサトがアナルを一拍だけ痛めつける。
「旦那様は待つだけ・・・」
「全てを私に委ねて、そのときを受け入れるだけでいいのです」
「私が運んでいってあげます・・・」
「すばらしい歓喜の感覚を味わいたくないの・・・?」
アナルから指一本を抜き、前後を同時に感じさせてやった。
「ア・・・・アハッ・・・」素晴らしい開放感だった。苦痛のあとに味わう快楽は格別に淫らな快感をもたらしてくれる。
「もっと気持ちいいんですよ・・・」
「ア〜〜、ア〜〜〜、」
「グャッ!」突然、痛みを喰らわされた。
ミサトが再び指を束ねて押し込んできたのだ。同時に乳首をきつくつままれ引っ張られている。
「ヒ!イィィィ〜」
「私に全てを委ねないと、痛く苦しいままが、ずっと続きますよ・・・」アナルを責める指は苦痛を、もう片方の這い回る手のひらは、それを癒すような快楽をもたらした。ミサトの両腕は陰と陽、善と悪、毒と薬、表と裏、そして快楽と苦痛を体言していた。
「フギャッ!お、おねぎゃいしますっ、ハァッ!ア〜、ど、どうすれば?」
「・・・指先に身を任せてください・・・ 」
「わたしの指先は旦那様を気持ちよくしてくれます」
・・・私に身も、心も委ねてください・・・
・・・苦しい痛みは、気持ちいい痛みに変わります・・・
気持ちいい痛みがやがて、旦那様に最上の快楽を教えてくれることでしょう・・・・・・
だんだんと分かってきましたか・・・?
無償の快楽など存在しません・・・何かを差し出し、身を裂かれるような苦しみを乗り越えてこそ、最上の快楽が味わえるのです。