転 男転がし
半月程たったある日、
浩一の父はいつものように、ミサトに責められていたが、
ミサトが見たこともない、ベルトをスカートの下につけているのを見ていやな予感がした。しかし、尋ねる気にもならない。
快感が佳境に達した頃、ミサトはぐったりとマグロ状態の浩一の父を見下ろし、冷たい目で、
「ソロソロいいわね」と独り言のように呟いた。 ミサトはブランドもののコスメボックスから、黒い警棒のような道具を手にした。 それを、股間にスナップホックでパチンと取り付けると、流し目で浩一の父と目が合うと、ニヤリとほくそ笑んだ。
「ご存じかしら? これ?」
二本の指でつまんで、股間の警棒をプルプルと振ってみせる。
警棒ではない。 男根を模した責め具だった。
「今からこれで可愛がってあげる」
「あ・・・? な、何だって・・・?」弛緩して恍惚としていた表情にみるみると恐怖が皺を刻んだ。 夕方、ミサトは外出から戻ったばかりである。珍しく二日程、休みを取って、帰ってくると、服も着替えず、寝室で休んでいる浩一の父を起こし、建前の挨拶もそこそこに、浩一の父を責め始める。 その責めは有無を言わせない、慌ただしさであった。 このとき、浩一の父は、激しい中毒の禁断症状にに苦しみ、ぐったりとベッドにのびていたところだったのだ。
ミサトは戻ってこないかもしれない、そんな不安に押しつぶされそうになっていた。 そこを一気に、大量の麻薬を呷ったように、急激な快感が全身を陵辱した。 浩一の父は、二日ぶりの責めに、息も絶え絶えにベッドに仰向けになって喘いでいた。 ミサトはそんな浩一の父を手際よく縛りあげてゆく。
寝室内は荒れていた。カーテンは閉じられたまま。 床には空になったティッシュケース、グラスの破片。 枕は部屋の隅、大鏡の下に落ちていた。 ブランケットは抱枕のように丸められ、ベッドの脇に寄せられ、ベッドサイドの屑籠は、丸められたティッシュで溢れかえっていた。 部屋全体に生臭い匂いがこもっていた。
「苦しかったようね・・・」
ミサトがチラリとベッドサイドに視線を走らせると、ミサトのショーツが丸められたまま、無造作に放置されていた。 ベッドのシーツはしわくちゃで、しみだらけ、すえた生臭い匂いが部屋によどんでいた。 ミサトの唇の端が耳に向かって妖艶につり上がった。 ミサトは出掛ける前に、浩一の父に自分の下着を履かせ、もうひとつ、おまけだと言って、目の前でスカートの下から抜き取った、タップリと匂いの染みついた履き古しを預けた。 使い道は聞くまでもない。 あえて何に使ったのか問いただして、ネチネチと責める段階はとっくの昔に通り過ぎてしまった。 浩一の父はそれを嗅ぎ、ミサトの匂いで手慰みに耽っていたに違いない。苦しい二日間をどうにか凌いだのだ。 これほど豊かで贅沢な暮らしにありながら、ミサトが二日間留守にしただけで、浩一の父は遭難者のように、衰弱しきっていた。
ほとんど食事らしい食事はとれていないようだった。
それは、食べても消化不良を起こし、ただちに吐き出される為だった。ミサトの咀嚼したハーブ入りの流動食しか体が受け付けなくなっていた。 水は呑んだ。水ばかり呑んでいたので、体内の老廃物は砂抜きされたように綺麗に抜けていた。ミサトの予想した通りの状態であった。 直腸内も綺麗になっているだろう。粘膜の状態も整っているはずである。 精神状態は不安定で、朦朧としていれば、操作しやすい。 頃合いやよし。ミサトは上機嫌で下ごしらえにかかることにした。 準備は全て揃った。 あとは思う存分腕をふるえばいい。 いよいよ、ミサトが楽しむ番がきたのだ。
ミサトは横向きで立ち、その太さと長さを誇示した。
「これでよがり狂わせてあげる・・・」
求めてやまないミサトの責めをタップリ堪能させられ、激しい恍惚感に浸っているときであっても、ミサトの宣告はショックであった。 館の主は一瞬にして素に戻ってしまった。 贅を尽くした寝室は、淫らな欲情に空気が重くよどんでいる。二日ぶりに舞い戻ったミサトにとってそれは、獲物を狩る雌豹の嗅覚を刺激してやまない匂いだった。 その獲物の匂いに今、恐怖の分泌を嗅ぎ取ったメイドは、ニヤニヤしながら自分のシンボルを扱いてみせる。冗談ではないようだ。本気の目をしていた。
「う・・・あ・・・」 茫然自失でうろたえる主人に、メイドは残酷な笑みでたたみ掛けた。
「聞こえなかった? 旦那様の下のお口、オ・ケ・ツ・マ・ン・コ、の、具合にあわせたハンドメイドの一品よ、お味の方はこのメイドが保証するわ」
メイドはそう請けおうが、それは誰がどのように見ても、凶器としか見えない代物であった。 その形状は醜く、表面は鈍い光沢を放ち、色はどす黒く、自分の肉棒より大きく、グロテスクな突起が施してあった。人間の狂気が生み出したとしか言えない代物であった。 浩一の父にしてみれば、ミサトの狂気が生み出したとも言えるだろう。
「フンン? 旦那様の逸物より立派でしょう?」
腰を突き出し、グラビアモデルのように、手を腰に乗せ、肘を張って立つ姿は両性具有の女神だった。 どんな男も圧倒される迫力を発散していた。 それが、今の浩一の父にあっては、自分を喰らう捕食動物に対峙したような気分にさせた。 体から汗にかわって恐怖が、ジワジワと浸みだしていた。 フンと鼻を鳴らし、ミサトが一歩迫る。
「わ、わわわ・・・」怯えた目で恐怖と不安にかられ、震えている浩一の父の表情に、ミサトは大いに満足した。
「フフフ、今とってもいいお顔なさってます」ミサトは、脇によけたブランケットを荒っぽく掴むと、ベッドの下に放り投げた。
ミサトが動くたびに凶器はブルン、と揺れた。
わざと、いきなり使うにははばかられるサイズにあつらえておいたのだ。 今や、ミサトにすっかり開拓され、指四本をくわえ込めるようになった浩一の父を、痛みのどん底まで墜としてから、魔性の快楽の頂に突き上げる為に、故意に太くしてあった。
最初に犯す時は獲物を心底震え上がらせて、最大限の陵辱を味合わせてやる。内臓をえぐられる程の痛みと恥辱の地獄を味合わせた後、魔性の快楽をもって、そこから救い出してやる、それが、筋書きだ。それこそが本当のミサトの悪癖だった。 (気持ちよくなる前は、地獄の苦しみを味わっていただきませんとね!)今まで何人の男が、この筋書き通りの餌食となって快楽地獄に身を投じさせられたことか。ミサトは快楽にとどまらず、苦痛さえも自在に操って男を虜にしてしまう。
「アハ・・・ゾクゾクしてきたわ・・・」腰と妖しくくねらせ、頭に両手を載せたミサトが半歩踏み出すと、ベッドの上の縛られた浩一の父は、芋虫のように、モゾモゾと後ずさった。
「あら、怖いの?」ミサトが舌なめずりしながら、邪眼の眼差しでねめつけてくる。 この目が男を意のままにしてしまう。 睨まれたら、逃げることもかなわない。 ミサトが膝立ちでベッドにあがり、怯える獲物に馬乗りになった。ドスンと胸に跨った。
「今までタップリと気持ちよくしてあげたんだから、私にもお返しがあってしかるべきでしょう? さあ、今度は旦那様の番よ、私のも、気持ちよくしてちょうだい」ウットリするような妖艶な眼差しで上から見下ろしてくる。
「フフフ・・・」
浩一の父の口元にシンボルを突きだした。
「さあ・・・」怯える顔をうっとりと見下ろしながら、かまわずグイグイと口に突きつけてくる。 ハーブの匂いがした。 使っている。 例のハーブが使われているのだ。 口にしたいが、口にしたらとんでもない、その先が待っている。 今度ばかりは度が過ぎる。 浩一の父はどうにか口を閉じることで、ささやかな抵抗を試みた。
「あらん? 気に入らないの? わたしは、いつも旦那様にして差し上げたでしょう? その時を思い出して感じさせてくださいな・・・さあ、旦那様?」
無理矢理口を割って突き入れるが、浩一の父は顎を開かない・・・
こればっかりは、受け入れられなかった。ハーブを使ったコレを口に含んだらもう終わりである。きっとその先まで受け入れてしまうに違いない。朦朧としながらも、本能の警告のままに、浩一の父は頑として拒んだ。ミサトが小首を傾げて片眉をつり上げた。例の表情である。浩一の父はチラリとそれを見て慌てて目を閉じた。
ミサトがスッ、と鼻から息を吸い込んだ。
「しゃぶるのよ!」甘い猫撫で声から一転して、ドスの効いた低い声で命令した。命令された方は、臆病な子猫のように、震え上がった。 ミサトは指でハサミを作って威嚇していた。 ハサミのサイン。 恐怖が鮮明に蘇った浩一の父は、観念したように、その醜い先を恐る恐る口に含んでゆくのだった。
ピタピタと猫がミルクをごちそうになるような舌使いが響いた。
「ウフン、そぉう、そぉう、そう、いい子・・・いい子ね・・・」
「んん、私はもっと舌を使ったわよ・・・ン?・・・もっとよだれをたっぷり絡めておきなさい、理由は分かっているでしょう? タップリ舐めて、ヌルヌルに滑りを良くして置いた方が、旦那様の為よ? フフ・・・」
ミサトが団扇で扇ぐようにスカートでヒラヒラと浩一の顔を扇ぐ。 二日ぶりのミサトの生の匂いが、頭の中を綿菓子のように、甘い雲に変えてしまった。 脳みそが空っぽになり、思考しないモクモクとした綿にされてしまいそうになる。 そうなれば、逆らえない魔力に従うしかなった。 新鮮なミサトの匂いに、ミサトの言葉に、ミサトの瞳に、そしてミサトのシンボルが現在進行形で、浩一の父を追いつめてゆく。 そしてタップリとまぶされた例のジェルの味は、舌にジンジンと染み渡り、心の奥深くから淫らな欲情が膨らみだした。しゃぶればしゃぶるほど、その味は恐怖を払拭してくれる。 浩一の父は不安と恐怖から逃れようとするかのように、目をつぶって一心にしゃぶり倒した。 その有様にミサトはニヤリとほくそ笑んだ。
「フフフ、いがが? メイドのオチンポのお味のほどは?」
「はふ、はふ、いい、いいです」上瞼と頬を赤く染めながら、浩一の父は答えた。
「フフッ、お気に召したみたいねー、食べず嫌いはイケマセンよ?」 「ハヒ、」今や浩一の父は、飢えたように、自ら擦り寄って口を使って奉仕した。 舌を淫らに使ってミサトのように、巧みに舐めしゃぶった。
「フッフッフ・・・アァン、いいわぁ、旦那様、お上手よ・・・」オーバーに、顎を仰け反らせつつ、ミサトは手元のぴぺったーを握って、スコスコと空気を送ってやる。ピペッターは黒いゴムでできたゴルフボールのような丸い玉で中が空洞になっている。 片方に逆止弁のついた穴が開けられており、反対側も同じように穴が開けられ、ディルドーの根元に向かって細いチューブが接続されていた。ピペッターを押しつぶしてやると、中の空気がディルドーの内側に送られる仕掛けになっていた。
「ハワワ・・・」ディルドーは、みるみると表面の突起が膨らみ、付きだしてきた。突きだした突起は先ほどより更に凶悪なオーラを帯びだした。 ミサトは自慢げに誇って見せた。
「どう? 隆々として頼もしい限りでしょう。 そのうち、これをしゃぶるだけで、犯される瞬間を思い出してイクかもよ」
ミサトはもう一本別の容器を手にすると、見せつけるように、中身を手のひらに垂らして見せた。 初めて目にする真っ赤な半透明の水飴のようなジェルが、トロトロと手のひらに盛り上がってゆく。 握り締めて指全体になじませると、ゆっくりと自分のシンボルに巻き付け、扱くように突起を弾いた。 ブツッ、ブツンと、弾力のある突起は、ミサトの指の下で跳ねた。
「この突起の一つ一つが旦那様を夢のような快楽の世界へと連れて行ってくれるわよ。フフッ、」
更にミサトが低い声で凄みを効かした声で毒づく。
「なーんてね。 今から悪夢のような快楽地獄よ。旦那様をね、更に深い、ふか〜〜〜ぁい、快楽の地獄へご案内よ。 ゆっくりと繰り返し、繰り返し、どんどん恥ずかしい格好で犯していってあげる。 そのうち、恥ずかしい格好がたまらなくなるようにね。うれしい? ンン〜?フッフフ、そうよ、ますます変態に墜としてあげる、楽しみにしてなさい!」