転 男転がし

 「ふ、藤崎さん! ちょ、ちょっと、あの、 」
 「ンン〜?」浩一は覆い被さってくる藤崎を必死につっぱねた。
 「こ、こんな場所だし、そ、その、車を、車を移動させなくちゃ! 」
 「フ〜ンン?」甘い鼻にかかった声で、藤崎は浩一の首筋に唇を滑らせる。
 ほどけた髪が甘く浩一の首筋をつたい、くすぐってくる。
 首筋を滑る女の唇は熱い。 藤崎は舌を使って浩一の性感を煽っていた。
 「ああ・・・ふ、藤崎さん、ち、ちょっと待って! 」浩一はヘナヘナとしながらも、どうにか藤崎をつっぱねた。
 「ウンン! 」藤崎は、少しすねた顔をしてから笑った。
 「ば、場所を変えよう、ね? 」
 「ウ〜〜〜ン」藤崎は、唇を付きだすと、ばったりと助手席に戻った。
 
 浩一はエンジンをドライブにシフトさせると、すぐさま車を発進させた。
 どこへ行こうか。 このまま藤崎を送り届けるだけなどできそうにない。
 いきりたった肉欲を開放したい。 そうしたくて気が遠くなるほど苦しんでいた。
 ミサトのマーキングが、ショーツが、邪魔をする。 浩一は藤崎を欲しているのに、それが叶わない苛立ちを味わっていた。

 浩一は車を転回させると、祭りから反対方向に向かって車を走らせながら考えた。
 手に力が入らなかった。 笑い転げたあとのように、握力がでない。
 しかも頭の中は真綿を詰められたようにスッキリしない。
 ミサトの意地悪な笑い声が聞こえてきそうだった。 
 車を運転出来る状況ではない。 浩一は先ほどの続きがしたくてたまらなかった。
 シンボルは既に臨界に達していた。 ジンジンと切ない疼きをはらみ、雄の情欲がシクシクとこぼれだしていた。
 触って確かめるまでもない。 汚すなと言われているミサトのショーツを、ベットリと先走り汁が濡らし、体温に蒸れているのが感じられた。

 ホテルでもあれば、そこで下着を隠すこともできよう。 照明を暗くすればマーキングもごまかせるかもしれない。
 しかし、ここからは遠い。 あいにくそこまで運転できそうにない。
 浩一はどうしようもなくせっぱつまった気分で、冷静になろうと努めるが、山火事にコップの水をかけているような無力感を味わっていた。

 隣に座る藤崎は、ゆかたの乱れを直そうともせず、ハァハァと悩ましい息づかいで浩一を見つめている。
 露わになった太股は絹のようななめらかさで、浩一の視線を惹き付けてやまない。
 藤崎はモゾモゾとたえず体をうねらせ、欲情の疼きに身悶えているようだった。
 運転席の浩一は、前を見ながら、それ以外は全て藤崎に引き寄せられた。
 ベンツは、何度も道の端にはずれそうになりながら、浩一は必死に車を走らせていた。 
 隣の藤崎が頭をかしげ、そのまま浩一にしなだれかかってきた。
 (わ! )
 浩一は思わずハンドル操作を忘れそうになる。 
 「フ〜ン・・・」甘えるように鼻を鳴らしながら、藤崎は浩一の腿に両手をつくと、そのまま首筋に顔を埋めた。
 助手席から藤崎が上体を浩一に預けているのだ。
 
 猫を膝にのせているような温もり、生暖かい濡れた女の匂いが浩一を悩ます。
 「コウイチサン・・・」夢見るような声で藤崎が下から問いかけてくる。
 「どこへイクの? 」浩一は気が狂いそうになりながら、運転に集中しようと努めた。
 (どこへ? どこへだって? どこへイケばいい? )
 藤崎はウットリとしながら、クンクンと鼻を鳴らし、浩一の匂いを嗅いでいた。
 (ミサトの匂いにハマっている・・・ ) 浩一は確信した。 藤崎はミサトの匂いで異常に欲情しているのだ。
 ゾクリと股間に怖気が走った。 チラリと見下ろすと、藤崎は手のひらで浩一の太股を愛撫しだしていた。 

 敏感な性感神経の糸を、クイクイと指先でたぐるような微妙な手つきだった。
 細い女の指で毛皮を愛でるように撫でられると、浩一のステアリングを操る手元はガクッと応える。

 二人の乗ったベンツは、田舎道をすれ違った人間が、思わず振り返ってしまうほど、不自然な挙動で走り抜けてゆく。

 「どこへイクの?」藤崎が何度も同じ事を繰り返し尋ねる。
 浩一に答えは思い浮かばなかった、答えられる余裕もなかった。
 藤崎に下半身を刺激され、浩一は、目を閉じたり開いたりと、瞬きを繰り返していた。
 藤崎の指が再びズボンを突き上げるシンボルに集中しだすと、浩一は口を半開きにし、ハンドルを握る手はブルブルと震えだした。
 その様子を見て藤崎はいたずらっ子のように忍び笑いをもらし、
 猫が玉にじゃれているような仕草で、カリカリと生地を引っ掻いたり、転がすように手のひらで弄んだ。
 (ハ・・・ア・・・)
 「・・・・・・イクの? 」 小さい声で藤崎が尋ねるので、浩一には「イクの? 」だけが、ことさら強く耳に響いた。
 (出したい・・・ )浩一は心の中の叫びを押し殺した。

 アクセルを操作するのも、ブレーキをかけるのも、力が入らず危険このうえなかった。
 対向車が向かってくると、浩一はアクセルをふかしてすばやくすれ違った。 誰にも見られたくなかった。
 「これ・・・・・・カチンカチン・・・・・・」そう呟きながら、藤崎がはちきれそうになった雄の触覚の感触を計ると、ゾクゾクと背筋が震えた。
 ベンツが大きな水たまりを激しく蹴散らした拍子に車内が揺れた。
 ステアリングの操舵システムが驚いたように目覚め、運転を補う。
 
 (あああ、ああ・・・あぶな・・・い・・・ )
 藤崎がズボンのファスナーを開こうとしている。
 (あっ)
 浩一は片手ハンドルで、藤崎の手を掴んだ。
 (だっ、ダメだっっっって! あああ! )
 「ア〜ン・・・ 」
 藤崎はファスナーから手を離そうとしない。
 (や、やめて・・・ )
 ニンマリと淫らな笑みをたたえ、挑発的な目で浩一を見上げている。
 (も、もうやめてくれ! )
 この一線だけは越えられない。 今はどうしてもゆずれない。
 「フフッ・・・ 」
 藤崎は手を離すと、ゆっくりと上体をもたげ、浩一が握る手を、片方の手でかき抱くと自分のゆかたの胸元に引き寄せた。 そっと押し当てられると、女の乳房の弾力が優しく浩一の手の甲に感じられた。
 (し、し、死ぬ・・・・・・ う、は、ハンドルが・・・)ステアリングを握る手がブルブルと笑い、手を離してしまいそうだ。
 藤崎の異常な求愛に、ますます浩一は追いつめられた。 
 浩一が手を引き離そうとすると、その手に合わせて藤崎は浩一に迫り、浩一の肩に顎をのせた。
 浩一の目に速度計の針先が尋常でない状態を示していた。
 しかし、ソレを見ても浩一はアクセルペダルを起こせなかった。
 ドッ、とタイヤが轍に落ち込むと、ベンツは挙動を制御しよと、大きく揺れた。
 
 藤崎の鼻息に首筋をくすぐられる。
 すぼめた唇で甘い吐息を吹きかけてくる。 浩一を悩ます性感のうねりは、運転など出来ない状態にまで達していた。
 (ハァ〜〜・・・・・・ )
 「フフフ・・・」藤崎はまた、妖しい忍び笑いをもらした。
 助手席と運転席を隔てるセンターコンソールが唯一の防壁だった。
 シフトレバーがなかったら、藤崎は運転中でもおかまいなしで跨っていただろう。
 股間の奥深くまでもぐらせた指先で男の会陰部を強く押し揉みしてやると、浩一の膝は細かくフルフルと震えているようだ。


 一車線の暗い林道をベンツが飛ぶように駆け抜けてゆく。
 ときおり、道をはずれそうになると、小枝や、雑草が車を激しくむち打つ。
 藤崎は異常な興奮状態にあるこの状況に、ようやく危機感を拾った。
 浩一がときおり目を閉じているのを見て、全身を針刺されるような悪寒が拡がった。
  
 「浩一さん・・・」
 浩一は目を細め、必死に快楽に抗っている。
 「浩一さん・・・」
 浩一は藤崎の刺激と車の運転に精一杯で、返事がない。 藤崎は愛撫を中断することにした。
 「コウイチサン・・・」藤崎は頬をピンク色に染め、ジッと浩一を見つめている。 その表情に緊張したこわばりがわずかに浮かぶ。

 「車を停めて・・・」
 浩一はとにかく運転に専念して、冷静になりたがった。 年下の若い女の誘惑に対して冷静に対処したかった。
 せめて二人きりになれる場所につくまでは、大人の男らしくふるまおうとしていた。
 しかし、誘惑者は、それを阻止する。
 車を止めて運転をやめさせようとしている。 やめたら、もう、目の前の誘惑に呑まれるだけである。
 獣のように、理性を失って自分はこの女性に性欲の限りをぶちまけてしまうだろう。
 そんな展開がありありと浮かんだ。
 浩一は運転に専念しようとすることに腐心し、運転そのものにはらんでいる危険に気づかなくなっていた。
 
 「停めて・・・ネ? 」
 緊張した面もちの藤崎は、指先に力を込め、男の急所、玉袋を強く握った。
 二つの肉玉がグリリッ、と、浩一の痛感をたたき起こした。
 (イタッ )
 浩一は息を止めてブレーキペダルを強く踏みつけた。
 シートベルトをしていない二人は大きく前にのめり、アンチロックを働かせながらベンツは急停止した。 そのまま浩一はやけくそになりながら、ハンドルをきった。
 ベンツは狂ったように、エンジンを唸らせ、本道をはずれると奥まった横道をかきわけ、草木の生い茂った林の中に潜り込んだ。

 行き止まりで止め、ギギギ、と、浩一がせわしくサイドブレーキをかけると、藤崎はそれを合図になだれ込むように覆い被さってきた。
 浩一も無言でそれに応じた。

 藤崎は更に下半身を密着させ、浩一の股間に太股を差し入れてきた。 下から見つめる目は薄膜がかかったように潤んでおり、
 髪が一房、額からはずれ、汗に輝く頬に貼りついていた。
 肉感的な唇は薄く開き、白い歯が覗く。 唇は粘膜に覆われたような光沢を放ち、愛液の溢れた女性器を思わせた。

 「ンンン・・・」
 激しく唇をむさぼりあった。
 鼻から漏れる息が、お互いの顔をねぶるように唇を吸いあった。
舌とともに、女の唾液が口中を満たした。
 ハァハァと、湿った息とともに、ヌルヌルとした分泌液が口中で混ざり合う。
 なぜか熱く、ヌメリのある微かに甘い女の唾液に浩一は興奮し、堪能した。
 「ンアッ! 」
 浩一がゴクゴクと喉を鳴らすと、藤崎は更に唇から唾液を注ぎ込んでやった。
 浩一は目をつむってひな鳥のように、それを鵜呑みに嚥下する。
 (ああ、あああ・・・ )
 パッと藤崎は唇をはがし、浩一を見上げてきた。
 口を半開きにして、苦しそうに息を弾ませている。 
 「ちょうだい」うっとりと目を潤ませ、半開きの唇をつきだした。
 「浩一さんの・・・私に・・・」
 唇から、ピンクの舌が覗いている。それはたっぷりと唾液にぬめり、ヒラヒラと浩一の情欲をねぶりあげる。
 「ん・・・な、流し込んで。 いっ、いっぱいにして・・・」
 ピンクの舌がそそる。
 浩一は意図するところを理解した。 唇をすぼめ、今し方藤崎が注いだ体液を自分の唾液とともに、お返ししてやった。
 「あ、ああ・・・」藤崎は歓喜の喘ぎとともに、舌をつきだし、透明な粘液を享受した。その表情は喜びに満ち満ちている。 透明な滴がタラタラと糸をひいて雄と雌の間を繋いだ。
 再び、二人の唇が隔たりを詰め始めた。
 その肉の花びらが触れる寸前で、何か言葉をかわし、唇をそらし、互いを焦らして楽しんだ。 どちらからともなく、笑みを交わす。
 笑みを浮かべたまま、二つは一つに結びついた。
 口を開き、お互いの内側を結びつけるようなキス。
 藤崎は浩一の下唇を軽く噛んだ。 噛んで舌先でヌルヌルと舐める。
 「ん〜〜〜〜〜 」藤崎は上唇を突き出し、浩一の口中に押し入った。
 同時に、女の指が浩一の股間のふくらみをなぞりだした。
 らしくない、自然で淀みのない、指使いだった。
 同時に藤崎の舌が口中を泳ぐようにヒラヒラと動きだす。
 咬んで、味わいたくなるほど、美味であった。

「う・・・ 」パッと、藤崎が唇を離すと、ハァ〜、と息を吐いた。 
 そして、浩一が息を吸い込むよりも早く、藤崎は唇で塞いだ。
 「ンン〜〜」 プゥ〜〜ッと、しぼんだ肺の中に息が吹き込まれる。 あっという間に浩一の胸の中は、藤崎の甘い息吹ではち切れそうになった。
 藤崎の息が血流に溶け出し、数秒で脳内まで到達する。 みるみる力が抜けてゆく。
 「ああ・・・」
 浩一はか弱い声をもらして、うっとりと弛緩した。
 「フフッ・・・」クスッと藤崎は笑い、舌をヌルヌルと滑り込ませた。
 絡みついた藤崎の長い舌は、浩一の舌を引き抜いてゆく。 ガクッと浩一は頭を仰け反らした。 看護婦の舌先から、二人の唾液がトロリとこぼれた。
 すかさず、看護婦の舌は、顎を伝っているところをすくい取った。
 「ハァン・・・」

 (? )下半身から衣服の感触がなくなっていた。
 (あっ、)
 (あっ、)
 二人ともほとんど同時に絶句した。
 藤崎は浩一の履いているショーツに。
 浩一は、いつのまにかズボンを下げられていることに。
 藤崎は、浩一のズボンに爪先をひっかけ、器用に膝までズリ降ろしていた。
 藤崎はとろけるようなキスを味わわせながら、浩一の気づかないうちに、衣服を脱がしていたのだ。
 

 薄いテラテラと光沢を放つ、金色のショーツ。 いきりたったシンボルは、小さな三角の生地からにょっきりと亀頭を突きだしていた。
 浩一は気まずい沈黙が車内一杯になるのを感じた。

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メイド 魔性の快楽地獄