承 挑発

 

深夜の淫らな奉仕

 

 「・・・・・・」
 浩一はどうにもままならない状況に陥ってしまったのだ。
 全てはメイドの思いのままになっているのだ。何を企んでいるのかは分からない。どうやって、この苦しい状況を切り抜ければいいのか。今からどういう選択を迫られるのか。浩一は興奮に酸素を奪われ、充分に機能しない頭脳を必死に働かせようと試みた。
 
 「いいんですよ」そんな浩一の思いを見透かしたように、メイドが声をかける。
 
 「出そうだったんですね? 」優しい笑顔とは裏腹に核心を突いてきた。
 「・・・」
 浩一は男の性を呪った。メイドの手の中で意のままになる肉棒が憎らしかった。
 
 その肉棒をメイドは優しくあやすように弄んでいる。暖かい手の平がしっとりと包んでくる。
ジーンとした疼きが下半身を覆い、芯を通したように硬い肉棒の奥では、欲望が未だに燻っていた。
 
 脱衣室の床に膝を突いている浩一をメイドは懐にかき抱くように体を密着させている。メイドの胸のふくらみは、いやでも視界に付きだしてくる。ローブの胸元から覗くその谷間は、うっすらと汗を噴き、その肌をみずみずしく引き立てていた。
 これ程近いと、その量感と匂い立つフェロモンに圧倒されるままである。
 浩一の心の中では理性と欲望が激しく葛藤する。
 この脱衣室で理性に加勢してくれるものはなにもない。
 建物の外で聞こえる蝉の声も。
 
 「ぼっちゃまのここ、ずっと堅いままですよ」メイドの指使いは実に巧みであった。男のツボを知り尽くした年上の女がこのメイドだった。
 欲望に加勢するものはいくらでもあった。
 メイドの艶のある声、下着、女の臭い、瞳、唇、ローブから覗くその肢体、頬をくすぐる髪の毛、息さえも。
 浩一を追いつめるメイドの憎らしい指使いに添えられるご馳走はいくらでもある。欲望が理性に圧勝しつつあった。 
 
 「このままじゃ、眠れませんよね。困りますよねぇ〜? 」
 浩一の心の葛藤を見透かすようにメイドはたたみ掛けてくる 
 
 「どうにかして欲しいんじゃありません? 」
  (え? )
 メイドは浩一に淫靡な笑みをくれると、胸から脇腹を撫でていた手を浩一の肩にまわし、頭を抱え込んだ。メイドの柔らかい胸の感触が浩一の顔を包んだ。
 「う? むぐ、うう」
 両手をついてバランスを取ろうと、もがく浩一を冷たい目で見下しながらメイドは唇を耳元にくっつけるようにして囁いた。
 
 それは悪魔の囁きだった。
 「わたしの手でスッキリさせてあげましょうか? 」
 
 メイドから信じがたいような事を言ってきた。
 
 失いかけていた淫らな妄想が、羞恥心の煽りの中、再びうねるように心の奥底から沸き上がった。
 
 「どうします? 」
 危険な誘惑だった。ますます深みにはめられるような予感がする。ボロボロにされた理性は危険信号を送ってくる。
 「・・・」
 メイドは浩一の理性などお構いなしに、浩一の欲望を危険な領域へと誘うように性感を責め始めた。
 
 浩一を胸に埋めたままメイドは肩に回していた手を解くと、うなじから、首筋、肩、背中、脇、胸、とスベズベとした指先を走らせた。ビリビリと寒気が走ったように肌が粟立ち、性感が全身を包み始める。
 
 目をぎゅっと閉じて官能に抗う浩一をものともせずに、股間を弄っていた指先も性感のツボを嬲り始める。
 
 親指の側面で裏筋から亀頭にかけてゆっくりと撫でてやると、シンボルはヒクヒクと泣いているように震えた。涙を流しているのだろう、ブリーフを突き上げるシンボルの先は、透明な染みがじっとりと拡がっていた。
 (あら、あら、この子も反省しているようねぇ、お仕置きが効いたみたいね。フフッ)
 
 (この子は素直だけど、パパはもう少しお話が必要みたいねぇ)
 メイドは胸を撫でていた指先を、浩一の鋭敏になった乳首に向かわせた。 そのくちばしのような爪先で軽くつまんでやると、ビクン、と浩一の肉体はのけぞって反応した。思わず顔を上げて喘ぐ浩一の顔をメイドが間近に覗き込んできた。
 
 メイドの瞳は浩一の目を間近に捉えると、瞬き一つせずに見つめてきた。鳶色の瞳が、その奥に浩一を吸い込んでゆく。
 
「どうですか? このままじゃ、スッキリしないんじゃありませんか? もっと気持ち良くして差し上げられるんですけど・・・」
 メイドはブリーフ上のゴムから潜らせた三本の指でガラス玉を弄ぶようにコロコロと転がすように亀頭に刺激を送った。
 
 くちばしについばまれた乳首を、ゆっくりと引っ張り上げられる。
「つ、んんん! 」
 たとえようもなく、甘く切ない官能の痛みが走る。
 メイドは浩一の反応を伺いながら、そのまま乳首にじわじわとひねりをくわえてくる。
 
 「あ、あぁぁ! あ、やめ! 」きわどいメイドの責めだった。
 浩一は首を振って抗う。
 
 「目をそらさないで・・・」
 意外な展開に戸惑いながら視線を逸らそうとする浩一をメイドの手のひらが優しく阻む。メイドがうっすらと目を細めると、力が抜けてゆくようだった。魔法をかけられたように体が動かなくなる。
 
 「一時の気の迷いですわ。たまってくると、男の方は衝動を押さえられなくなるんですよね」
 
 「すっきりすればそんな気にならなくなりますよ・・・」
 もっともらしい理由をつけてメイドは誘う。メイドの砂糖でくるんだ甘い甘露のような声色が浩一の頭の中を染めてゆく。
 
 「メイドさんにすっきりしてもらいたいって・・・」
 メイドの指がじっくりと焦らしにかかる。
 浩一の豆粒のような乳首がメイドの指先の下でコリコリと転がされると、浩一は息が詰まった。
 
 「おっしゃってくださいな・・・」
 再度メイドが耳打ちをかける。吐息は発情した女の香りがした。
汗、体臭、香水、線香の香り、全てが渾然一体となって、嗅覚を刺激する。それは味覚までも浸食し、唾液の分泌を過剰に刺激する。唾液が浩一の弛緩した口の端から、喘ぎとともにこぼれた。
 
 建物の外ではセミの鳴き声が聞こえるはずだが、浩一の聴覚はそれを認知していなかった。聴覚はメイドの囁きだけを拾い、視覚は
メイドの唇、瞳だけを描き、触感はメイドの肌、とりわけ指先のタッチに過負荷をかけられ、オーバーワークに悲鳴をあげていた。
 
 
 「すっきりしたいって、おっしゃってください・・・」小指の先、指の腹で尿道のあたりを擦ってやると、下着越しに透明な染みがじっとりとどんどん広がってゆく。
 
 袋に爪を這わせて軽くかするようにくすぐってやる。
 (フフッ皮袋の中身がグツグツ煮立ってるわよ)
 
 「すっきりしたいって・・・」
 メイドはゆっくりと指先を絡めたり、撫でたりする。繰り返し、繰り返し同じ言葉を囁いてくる。それは魔法のキーワードのように、だんだんと時間感覚までもあやふやにしてゆく。
 
 
 「すっきりしたいって・・・」裏筋の敏感な部分を爪の先でカリカリと掻いてやると浩一は猫のようにのけぞった。
 (ほらほら、フフッ可愛い子猫ちゃんだこと)
 
 「う、」白い指がシンボルをくすぐるように扱く。
  メイドの指から紡ぎ出される、射精を促す合図によって、奥底から迸りがこみ上げてきた。
 
 「しこ・・・しこ、フフッ」メイドの唇が小さく囁く。イキそうになる寸前でメイドは刺激を中断する。
 「ああぁ」浩一が喘いだ。
 
 「ふふふっ、ぼっちゃま可愛い」チュッと乳首にキスをくれてやる。
 浩一の感覚は五感までメイドに覆われてしまった。
最後の第六感は浩一に警告を発した。第六感はその特異な性質ゆえ、具体的な行動に結びつきにくかった。第六感は浩一の選択にブレーキをかけるしかなかった。
 
 「シコ、シコ」
  (言ってごらん)
 
 「シコ、シコ」メイドが妖しく囁くたびに浩一の目はとろりと弛緩し、メイドが自分の心の一部になったような気がしてきた。
  (ほら、イってごらん・・・)自分の心の一部が話しかけてくるように、その声は浩一の心をゆっくりと揺らしてきた。
 
 「シコ、シコ、フフッ」(ほ〜ら、イキそうダァ)
  またも、イク寸前で中断。「うぅぅ! 」浩一が焦らされて悲痛な喘ぎを漏らす。
 
 (言うまで続けるわよ・・・)
 
 浩一は頭の中は、ぼうっと、霞がかかり、ぐらぐらと揺すられているような感覚に陥っていた。後頭部が熱く、なげやりな気分になってきた。理性を投げ出したくなってくる。
 
 「スッキリ・・・スッキリシタイッテ・・・」頭の中が真っ白で何も思い浮かばない。なぜ今ここにるのかさえ。
 脱衣室は明るいはずなのに目の前は真っ暗で、メイドの眼差しと、金色の光沢を放つ唇だけが浮かんでいる。暗闇にくっきりと浮かぶそれらは、まぶしい光沢を放ち、網膜に焼き付いてくる。
 
 スッキリ・・・ (おっしゃい・・・)人差し指で肉棒をなぞってやる。
 スゥッキリ・・・ 人差し指と中指で蟹ばさみをして上下に扱く。
 スゥ・・・キリ・・・ス・・・(はやく・・・言いなさい・・・)
 ス・・・・・・キ・・・リぃ・・・・・・(もっと焦らされたいの? )
 

 「・・・オッシャッテ・・・クダサ・・・イ」

 (このままがいいの? ) 浩一の迸りは噴き出す寸前で焦らされ続けていた。

 
 
 「ス、ス・・・キ・・・シタイ・・・」弛緩した浩一の唇から、ポツリと言葉が漏れた。浩一はがっくりとメイドの胸に顔を沈めた。
 メイドは心の奥で小躍りしてほくそ笑んだ。
 

 浩一は悪魔の申し出に屈した。第六感もメイドの毒手には抗えなかったのだ。全ての感覚がメイドの支配下に堕ちた瞬間であった。 

 (フフフッ、ついに堕ちたわね)

 
 「かしこまりました。ぼっちゃまも、お世話してさしあげます」
 
 ブリーフの生地越しに弄んでいた指が内側にゾロリと入り込んできた。乳首を弄んだ指も続いた。
 メイドは両手の指で股間のツボを責め始めた。
 
 直に絡みついてくるメイドの指使いは最高に気持ちよかった。
 
 (フフフッ、まずは、前菜を ど・お・ぞ・・・ )
メイドの片方の手が蟻の戸渡りにあるツボに深く食い込んできた。
 「ウ? 」浩一の迸りがぐんぐん先を目指して進んでくる。
 (召・・・し・上・が・れ! )メイドが指先をクン、と強くツボを刺激して合図を送った。
 「くっ! 」浩一が声を漏らした。
 ピクッと小一つだけ痙攣が走る。
 浩一の尿道から迸りが・・・垂れてきた。
 それは射精に・・・近いが絶頂はなかった。
 亀頭の先からダラダラと精液が垂れる感覚・・・
 
 「あっ! あら〜、あらあら、限界だったんですか? 」 
 あえてそうした。俗にいうお漏らしをさせたのだ。
 
 絶頂を迎えないまま、男の生理を知り尽くした指使いに操られて、白い精液がダラダラと垂れてくる。 
 疼くような快感はあるが、それ以上ではない。
 異常な射精である。焦れったさに、身悶えさせられる射精だった。
 「うううう・・・ 」浩一が望んだ射精ではなかった。不本意なまま、意識とは裏腹に精液は流れ出てくる。
 止められないのだ。
 ブリーフが見る見ると精液を吸い、ホカホカと暖かい、お漏らしの倒錯的な感覚が浩一の下半身を包んでゆく。
 
 浩一は、絶頂をお預けされたままのお漏らしを、味合わされたのだ。
 
 「限界だったんすね〜、こんなに・・・ 」
 メイドはクスクス笑っているが、浩一はブリーフを履いたままのお漏らしのような射精によって、羞恥心に押しつぶされそうだった。
 
 (フフフッ、どうだったかしら? 絶頂を奪われたままのお漏らしのお味は? 珍味でしょう? 初めてでしょう? すごく物足りない気分でしょう? ますます欲しくなるでしょう? 
 でも、これは前菜よ、このあとはメインディッシュを、たっぷり堪能させてあげるからね。フフッ)
 
 「一杯出ましたね。スッキリしました? 」
 浩一の胸中を知りながらメイドは意地悪く訪ねてきた。
 ローブの乱れを直し、汗で頬に張り付いた髪の毛を払いながらメイドはとろけるような笑みを見せた。
 「・・・」精液を含んだブリーフはゆっくりと冷めてゆき、自分を卑下するような嫌悪感をはらみつつあった。
 
 「汚れた下着は洗っておきますので、こちらに脱いでくださいな」
メイドは更に言葉で責めながら、浩一を全裸に剥いてやった。
 全裸になった浩一のシンボルは今も勃起したままである。
 
 メイドは指を絡めると軽く扱いてやる。
 「まだ堅いままですね〜」と、ニヤニヤする。
 
 「着替えをお持ちしますので、シャワーを浴びててくださいな」
 
 メイドは浩一を浴室の入り口まで手を引いてやると、抱きついて
キスをしてきた。
 全裸の浩一をメイドのローブの肌触りが心地よく癒してくれる。 濃厚な年上に女のキスだった。密着した女の肉体と浩一の間で、勃起したシンボルが挟まれてグリグリと圧迫される。
 軽く舌を絡め、浩一をウットリとさせると、耳元に唇を寄せ低く囁いた。
 「後からわたしが、お背中を流してさしあげます」
 そう言ってメイドは浩一から離れると、浩一を残して廊下に出ていってしまった。
浩一はその後ろ姿を魅入られたように見送った。
 
 (わたしにかかれば、こんな風に意のままに操られちゃうのよ。
 あなたもいけない子になりそう、ね・・・ )
 メイドの企みなど、もう、どうでも良かった。
妖しい予感を胸一杯にした浩一は、何も考えずにメイドの言いつけに従い、浴室のドアをくぐっていた。

 

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メイド 魔性の快楽地獄