転 男転がし

 


 責め具がカチャカチャと耳障りな音を立てた。
 二人の汗の匂いに変化が表れた。
 極度の興奮状態から強烈な絶頂に達した為、体調に変化をきたしたのだ。

 「じゃ〜、約束通り穴あけま〜す・・・ 」綺麗な手がキラキラと光る器具をクルリと持ち直し、皮膚にゆっくりと押しつけられた。
 「わ〜」浩一は大声をあげた。

 「ワ〜、ウワ〜〜! 」藤崎は浩一をマネてふざけた。 
 制服をだらしなくひっかけた姿は、気のふれた看護婦といった風情だった。

 「ヤメテ・・・ 」
 「フフフ、素直じゃないんだから・・・」チョロリと舌を覗かせると、銀色の玉が見え隠れした。
 「ま、そのうち、分かってきますから。 変わってきますよ、浩一さんは 」
 「ヤエテ・・・オネガひ・・・ 」
 「慣れるとね〜、細いのじゃ、物足りなくなってくるんですよ〜? 」
 ワナワナと全身を震わす浩一の懇願など、どこ吹く風に楽しそうに喋る。

 「オネガイ、ヤメッテッテバ・・・ 」
 「ミサトお姉様もしていたでしょ? 」藤崎は溜息混じりに諭した。
 「ウッウウウ・・・ 」誰に似ているのか、ようやくわかってきた。 ミサト。 メイドにそっくりなのだ。
 男をとことん責め抜く女。 
 巧みに誘い、深みに引き込んでゆく。
 男を弄び、嫐り、奪ってゆく。
 魔性の手管を駆使するメイドとうりふたつなのだ。

 拘束された浩一に大股開きでしゃがむと、制服をめくった。
 「ほら、わたしだって・・・」そう言ってラビアを開くと、ピンクの花びらに小さなリングが隠れていた。
 浩一の胸にゆっくりと膝をつく。
 「ね、どこがいい? 」その目は潤み、妖しく爛々と輝いていた。
 「ここ? 」ポツンと長い指先が耳たぶをはじく。
 「ヤエテ・・・ 」ウェーブのかかった髪がユラユラと揺れる奥から妖艶な笑みを浩一に注いでいた。
 「それともぉ・・・フフフ、こっち? 」鼻の穴に甲虫のような爪が差し込まれる。
 「フエェェ、ヤエテ・・・ 」首の皮をひっぱれる。
 「どこでもイッテ。どんなところでもつけてあげる・・・ 」ツルツルと光る爪の甲が、貫かれた乳首を避け下半身に向かう。
 トンと爪先が亀頭に到達した。
 「オチンコは早いかなー、初めてですものねぇ〜 」陰茎の皮をつままれた。
 「ヤメテ・・・ 」藤崎は舌を尖らせて、浩一の肌の上を強くなぞってゆく。
 「あ、ここ、オッパイははずせませんよね〜〜〜 」十字に差し貫かれた乳首を舌先でそっとつつく。
 「ああ・・・」
 もう片方の乳首は指でピンピン弾かれると、ビリビリと痺れた。
 「うん、乳首、とっても気持ちいいんですよ・・・ 」

 藤崎は手にした銀色の五寸釘のような器具で浩一の乳首を軽く弾いた。
 痛みとは違う何かが、どこかの触覚をそよがせた。
 (? )
 今まで感じたこともない未知の方角からその感覚は現れた。
 今まで気づかなかった触覚が何かを感じ取ったのだ。
 細い針で十字に貫かれた出来物のようなソレは、痛みに負けない妖しい胸騒ぎをかき立てた。 
 「ウッ! 」
 針が取り除かれた。
 シュッと針が抜かれた。
 プツンと糸がきれたような小さな喪失感だった。
 (あ? )口の中に甘味を感じた。
 そこは細い針が抜かれると火がついたように熱をはらんだ。
 (あ? あ・・・ )
 
 藤崎は針を処分すると、代わりに例の箱からリングをとった。
 「見て・・・ 」
 藤崎は上半身裸だった。
 白い肌に青白い血管が浮き立っている。
 胸の真ん中と頬は、ほんのり桜色だった。
 汗でテラテラとぬめり、艶めかしかった。
 制服はしわくちゃになって腰に巻き付いていた。
 挑発するように、ゆっくりと自分の両乳房を両手にとり、親指と人差し指で軽く挟んだ。
 柔らかそうな乳房に、プックリと小豆色の乳首が突きだしていた。

 「見て・・・ 」
 見ると、藤崎の乳首は穴が小さく開けられていた。
 「マイリング!」先ほど手にとった金色のピアスを見せびらかした。 
 「こうやって・・・ 」
 針の先のような穴に、マッチ棒ほどの太いリングを通してゆく。
 浩一には理解できない自傷行為だった。
 「ほら、はいったはいった、はいったよホラ、全然痛くありませんよ 」
 藤崎の自慢気な笑顔は、浩一の心のどこかを凍てつかせた。
 「見て・・・ 」
 藤崎はリングに指をひっかけ、乳首を引っ張ってみせる。
 「ハ・・・フ・・・ンン・・・ 」目を背けたくなるほど乳首を引っ張って見せた。
 「ン・・・ア・・・フ・・・ 」
 ちぎれるのでは、と思えるほどひっぱった。
 「クフン・・・ン・・・ 」
 対照的にその表情は恍惚に緩んでいた。

 「ウ、感じちゃう・・・ 」
 ブドウのように乳首が突きあがり、勃起しているのが扇情的だった。
 自分で乳首をちぎれんばかりに釣り上げる。
 痛くないのか、と目を白黒させる浩一に、看護婦は誇らしげに笑みを返す。
 赤くなった乳輪が白い肌にはえた。

 「カワイイ? 」
 親指をひっかけ、しゃなりしゃなりと右構え、左構えになってみせた。
 「ほら、ちぎれるような感じがタマンナイよ?・・・ 」その目は恍惚にウットリと弛緩していた。
 「ね? しよ?」どんな苦痛も甘い砂糖菓子にしてしまう目をしていた。
 浩一は藤崎が気分を害するのが怖かった。
 無邪気なのか、残酷なのか、いかんともしがたい。
 
 「大丈夫、心配しないで、 」
 「初めは細いのから、始めましょ? 」
 唇を震わせる浩一は、真っ赤な照明の中にあっても蒼白になっていた。
 
 「これ・・・感じます? 」
 指先でミサトのマーキングをつねり上げたり、押し揉んだりしていたが、いきなり吸い付き、カリッと、小さく囓った。
 痛いほどの吸い付きで小さく歯ぎしりされると、浩一の中に熱い、えもいえない、甘い疼きがこみあげてきた。
 「さっきのお薬、痛みを快感とないまぜにしちゃう作用もありますから・・・ 」

 藤崎が唇を移動させた後には、ミサトのマーキングに被さるように新しいマーキングが誕生した。
 「ああっ、イタッ! ヒィ〜〜〜! 」ミサトのようなウットリさせられるマーキングではない。

 藤崎のマーキングは、ミサトのソレをを塗りつぶしてしまうようなマーキングだった。
 「痛っ! イタイ! 」全身を囓られてはたまらない、浩一がひどく嫌がるので、藤崎は少し不機嫌になった。

 「イタイイタイって・・・痛いのがいいのに〜 愛の痛みって甘美じゃありません? キュウ〜ンってきちゃう」
 「麻酔軟膏もあるけど、ここはあまり効きませんよ 」
 痛みを感じなくなっては元も子もない。 

 藤崎は器具を片手に、ミサトのマーキングをかじってほぐす。
 (囓られたその後は・・・ )片手に持った器具を突き刺されるのだと思った。 
 「ウワ〜〜〜! 」浩一は更に喉がかれるほど叫んだ。
 「ワ〜〜〜! フフフ・・・」看護婦はまったく動じなかった。 浩一がいくら叫んでも何も変わらなかった。 

 赤い部屋で、美人の若い看護婦から妖しい治療を受けている男の危機を救いに現れるヒーローなどいない。
 しかし、浩一に嫉妬する男は多々存在した。
 この部屋の持ち主、谷川は少なくともその一人、医者であり、藤崎とのプレイを楽しむ為にこの部屋を作ったのだ。
 あの医師もこの部屋で声をはりあげていたのだ。
 看護婦に責められ、大声をあげるのだろう。

 藤崎の態度には何人も相手にしてきた自信が感じられた。
 男がどんなに泣き叫ぼうが、最後は賞賛と歓喜の叫びに変わるのを確信していた。
 開かれることのなかった真っ赤に錆びた堅い扉を、鍵穴に油を注してやり、
 ギイギイとゆさぶって、開け放ってきたのだ。
 この扉が一度開かれると、男に劇的な変化が表れた。
 「開眼する」ともいう。
 ミサトは「開拓」または、「開発」と言っていた。
 その何百という開かずの扉を開けてきた。
 浩一の場合もそうなる。
 そして身も心も預けるようになるのだ。
 鍵穴をほじくられ、油が注がれるのだ。
 
 「ワァーーーー! ワァァァーーー! 」
 消毒用のアルコールの匂いが嗅覚を刺激する。
 乳首がスーッと冷たくなる。
 「わ〜〜〜っ、じゃありません、約束しましたよ 」
 ピンと清浄綿を指先で視界の外にはじき飛ばした。
 浩一は首を振って抗った。
 「浩一さんが悪いんです。 先にイカされちゃったんだから・・・ 」
 器具の突端は針の通った傷口をチクチクとさぐりあてた。
 「そ、そんな! 」
 「よって、約束は守っていただきますから。 ね? 」
 器具の突端が乳首のすぐ横から真下をくぐろうとしている。

 「あああ! い、い 」
 「心配しないで、看護婦さんは腕がいいんだから! 」
 大工のマネをして腕をポンポンと叩く。

 「イダイ! 」
 「イダクナイ! ハズありませんよねー? フフフッ! 」

 「ホントはなんだかんだ言いながら、興奮してるでしょ?」
 白い指がユラユラと下半身を滑り降りてシンボルにそっと触れてきた。
 浩一のシンボルは赤銅色にいきり立ち、先端は下腹部にピッタリと張り付いていた。
 「あ〜〜〜、フフフ、やっぱり・・・ 」

 堅く反り返ったシンボルを起こしてやると銀色の糸が光った。
 「濡れてますね? 」
 「ヤメロー! 」
 「穴をあけてほしかったんじゃありませかぁ?」乳首をつままれると皮膚の下からジワッと黒い血が沸き出した。
 「グッ! 」

 「浩一さん、じゃ、目をつぶっててもかまいませんよ 」
 藤崎は看護婦の制服を脚から抜き取ると、無造作に丸めて浩一の顔にかぶせてやった。
 ムワッと、女の色香に包まれ、浩一はむせんだ。
 「麻酔になるかも、ね? 」

 「力を抜いたほうが、すぐ終わりますよ 」

 浩一はその言葉にすがるように、深く深呼吸を繰り返した。
 「〜〜〜ゥゥ、ハァ〜、〜〜ゥゥ〜、ハァ〜 」
 本当に麻酔効果があるかもしれない。 あって欲しいと願った。

 と、乳首に激痛が走った。
 ここまでで最大の痛みだった。
 「グワ〜〜〜〜! 」
 「オーバーですね」
 クリクリと傷口を嫐られて浩一はもがいた。

 「ハイ、一個!」
 一瞬の早業で銀色のリングが乳首をかしめた。

 続けてトレイから次のリングを取り、手早く次の作業にかかった。
 「イダ〜〜〜! ダダ! 」
 「ハイ、二個! 」
 「ヒィ〜〜! やめでぇ〜〜! アイ、オネガヒ!」
 浩一を苦しめるのは、気が咎めたが、これさえ耐えらせれば浩一は完璧に自分のモノだ。
 ミサトにない自分だけの技術だ。

 「ああっ、イダイ、もう刺さないで!」
 「あと二、三回やったら、たまらなくなりますよ 」
 「我慢我慢、」浩一の嫌がりように藤崎も少し不安になってきた。
 「ああああ 」
 「約束します、あと三個」
 「あと三個から、きっと気持ちよくなるから 」薬の量は合っていただろうか。 すばやく記憶をたぐってチェックした。
 「絶対クセになるから、ヤラセテ。ね? 」
 浩一は泣いていた。
 「もぉう、こんなに痛がる人初めてよ? 」藤崎も泣きたくなってきた。
 「あとでお薬ぬってあげるからおとなしくして 」浩一はまったく資質のないタイプなのかもしれない。
 「じゃ、我慢できるよう、おまじないかけてあげます 」ミサトのような指先の魔法にしかかからないのかもしれない。

 藤崎は指先で性感を刺激してやることにした。
 シンボルに触れてやる。
 握ってはやらない。髪の毛でくすぐるように、繊細に刺激した。
 「あ・・・ 」
 カリの下を執拗に刺激してやると、浩一は泣きやんだ。
 「ヨチヨチ、気持ちいいね〜 」
 猫をじゃらすように、指先でくすぐってやる。
 「あ・・・」
 快楽のみ与えられた浩一は、みるみるトロけてきた。
 うっとり目を閉じさえしている。
 表情から苦悶が消えた。

 「はぁい、一個!」藤崎は一気に進めた。
 「グァァァアアン!」片方の乳首を銀色の切っ先が突き破った。

 「ツヨイ、ツヨイ! コウイチサン・・・とってもツヨイよ〜〜〜 」一瞬の早業でリングがかしめられた。
 藤崎は浩一のシンボルを撫で、褒めてやった。
 「アアッ! アアッ! 」

 「ホラッ二個目! 」リングの下にもう一つ新しいリングをかしめた。
 「ア〜〜〜! 」乳首にリングが二連並んだ。

 「エライな〜、コウイチサン・とってもエライなぁ〜」すぐに、シンボルにご褒美を与えてやった。
 「ハァァ〜〜ん! 」究極の飴と鞭、表裏一体の早業だった。

 「ん・・・ 」
 薬の量を間違えたかと真剣に悩み始めたところだった。
 浩一の声、その表情に微妙な変化が表れた。
 (あ! 感じてきた? )
 試しにリングをひっぱって様子を見ると、浩一は切なそうに眉をよせ、唇を震わせていた。

 「ンンン! 」
 鼻にかかった溜息を漏らすようになった。

 「どう? 」
 「なにか違ってきませんか? 」間違いなかった。
 「ンン〜〜〜ンンン・・・ 」浩一は悦楽の喘ぎを上げ始めた。

 「フフフ、感じてきたみたいですよ」シンボルがブルブルと震えてだしていた。

 「これからますます、たまらなくなってきますよ」藤崎は内心安堵の溜息をついた。

 「気持ちよくなってきますよね〜」クイクイ、と引き上げられるとズキッとシンボルが疼いた。

 「コウイチサン・・・これが、快感ですよ・・・ 」ツーンとリングをつまみ上げた。
 「ハッ、ハアァァ〜〜〜〜 」トロトロと下腹部に透明な粘液が拡がってゆく。

 「で、これが、苦痛・・・ 」キリキリとスパイラルをかけてやる。
 「アアアヒッ! 」ピーンと鋭い快感が走る。

 「結局、どっちもヨクなるでしょ? 」手のひらをシンボル全体にかぶせると、かき混ぜるようにさすってやった。
 「フゥ〜〜〜〜ンンン! 」
 亀頭がぬめった下腹部を滑ると鼻にかかった声をあげた。
 「ほ〜ら言ったとおりになった 」ついに浩一の扉の鍵が開いた。
 「どっちも好きになるでしょ? 」あとは、タップリと油を注して開いてやるだけである。
 「へ、い、いやだ! イッ痛いのに! イイイ! 」
 「そ〜ですよ〜、痛いのも気持ちよくなるんです」
 「いやだ! こんな! アアアッ! 」何かを失いそうになる快感だった。

 「痛いのは、こっち? 」クンッと乱暴にリングを吊り上げられる。
 「アアンッ! 」強烈な快感のあまり応えられなかった。
 「気持いい〜いのは、これ? 」思考が混乱してきた。
 「ヒィ〜〜! 」
 どっち?(わっ、わからない! )

 「合図して。 痛いのはどっち? 」
 (気持ちよすぎて! わからないよ! )
 「フフフ、浩一さん、どっち、だ? 」
 「アアアッ! 」(わからないよ〜〜〜! )
 「こっち? 」浩一はかろうじて頷いた。
 「ホラ間違えた 」(フフフ・・・どんどんオカシクなってる! )

 「どっち? 」また刺激される。
 「あああ! イイイ!」ビクビクと全身を快感に震わせた。

 「ブブ〜! ハズレです」うれしそうに藤崎は笑った。
 「フフフ、今のは、痛みを与えたんですよ 」
 「じゃ、これは? 」藤崎の指が、シンボルの先を軽くつまみ、前後に動かそうとした。

 「ああっ!  」浩一は電気ショックのような衝撃を感じた。
 「アグッフ! 」
 突然絶頂に達した。

 ビクッビクッとシンボルは射精運動を始めた。
 「アア〜〜〜〜ゥゥウ! 」トロッ、トロトロ、と、迸りにはほど遠い、つたない射精だった。
 しかし、息が出来なくなるほどの狂おしい快感を味わっていた。

 「いっ、ヒゥ! 」

 「・・・イッチャッタね・・・」
 肉体の奥深いところから警報ベルのような余韻が延々と響いていた。

 「ほ〜らね、浩一さん、どっちも曖昧になってるんです 」
 「どっちの刺激でも気持ちよくなってきたんです 」藤崎が乳首をパチンと弾くと、スイッチが入ったようにシンボルは跳ね上がった。
 「アア〜グッ! お、おれ! オカシクなってる! 変にナッテル! 」

 「変ですよね〜、でも、当然です。わたしのおかげでみんなこうなるんですから 」
 「変だ〜、変になってる! オカシクなってる! 壊れてる! 」  
 「ウン、オカシクなってます 」
 「オカシイ、オカシイよ! もうやめて! 元通りにならなくなる! メチャメチャになるよう! 
 「ウン! 変にしてあげます! メチャメチャにして元に戻らなくしちゃいます 」
 「ひぇ〜〜〜 」
 「でも」
 「そのうち、こっちのほうが、好きになりますよ」

 「お〜ん・・・オォ〜〜ン・・・って・・・・ 」藤崎はオオカミの遠吠えのマネをした。
 「って声がでるようになりますから 」おもしろくてしかたがないようだった。

 「痛みで得る快楽はこってりして、刺激的でしょう」

 「これでイッちゃえば、もう他ではイケなくなりますから」

 「物足りなくってイケませんよ」
 倒錯的な責めは痛みさえも甘美な麻薬にしてしまった。
 ますます浩一の欲情は燃え上がり、
 終わりなき絶頂状態にその身を黒こげに焦がしそうにうなされていた。

 苦しいんですか?
 苦しいに決まっている。 だが、ほろにがい甘さは浩一の心を捉えて離さなかった。
 (もっと苦しめてあげる・・・)
 (もっと・・・) 
 治まらない痛みが快感に変わってきたうえ、藤崎がシンボルをフェザータッチで刺激してきた。 
 (ああ!)もっと! 
 ゾクゾクと快感が下半身を覆ってゆく。
 「もっと! 」(もっときつくして! )
 (フフフ、目が訴えてますね・・・ もっと、って・・・ )

 「今日はこれくらいにしておきます?」
 「あ・・・ 」浩一は訴えるような眼差しで藤崎にすがった。

 「やめる? それとももっとよくなりたい?」
 (やめられませんよね・・・ こうなったら・・・フフッ・・・ )
 妖しい目でクスクスと笑いながら覗き込まれる。
 「・・・・・・」浩一は無言だった。
 (言えないかな? )
 「フフフ・・・」
 浩一の唇がわずかに動いた。 藤崎は何を望んでいるのかを読みとった。

 「じゃ、続けてあげます」ブスリと貫かれた。 
 浩一はグワッと、唾を噴き出して首を大きく仰け反らせた。
 「ううっ!ウブブブブゥ〜〜〜 」
 その反応の強さに藤崎は気をよくしたように笑みを漏らした。
 「フフ〜ンン 」鼻歌まじりの軽いタッチによって追いつめられてゆく。
 指使いが上下に優しくさするようにゆったりと動く。

 「ここちょっと太いの、イキマス」そう言ってへその端をつまむ。
 もうお薬がないから、このままイキマ〜ス
 「ガンバ! フフフ」
 アイスピックのような器具を清浄綿で消毒すると、皮一枚をひっぱりあげ、ブスリと貫いた。
 ズブズブと太く穴が拡げられる。
 「アアアアアッ」頭の中でストロボが瞬いたように真っ白になった。

 「ハァイ! 貫通しました! 浩一さん、みてみて、つきましたよ」
 ほら!
 「アアッ!」
 きれい・・・・
 がんばってね、今度はコッチ
 シンボルの皮をつまんだ。

 「アッ! ソコワッ! 」ズキッと貫かれた。
 浩一の顔はさながら福笑いの泣き笑いだった。
 苦痛と快楽がない交ぜになっていた。
 「あああ! 」
 とっても似合う!

 血を指先で伸ばして浩一の体に文様を描く。
 「おへそもネ! 」
 「ヌァッ! 」
 息つく暇もなかった。 熟練の皮職人のように皮を加工してゆく。
 
 「あと、あとここね! 」 玉の皮も輪ゴムをかけるように、一瞬の作業で処理された。
 「ひぃ〜〜〜〜! 」

 あと耳、
 お顔もいいですね〜
 鼻輪! つけちゃいましょうか?
 唇、
 舌、

 「フフフ、いい? もっと? ヤリだすと、止まらなくなっちゃいますね〜? 」
 アッという間だった。 めまぐるしくリングが付け加えられてゆく。
 浩一の体にキラキラと光るリングが並んだ。
 傷口から流れる血をテンテンと清浄綿でぬぐわれる。
 傷口に消毒液が浸みると、浩一のシンボルのピアスがカチャカチャと震えた。
 ピアスが倒錯的な快感をアンテナのように受信する。
 感度がどんどんあがってゆく。
 
 あ〜〜〜〜まぁたイキそうになってる?
 フフフ、アハ、浩一さんイキそうよ?
 ピクピクしてます
 イケなくて苦しくないですか?

 「こうすると、楽ですか?」指で作った筒を巧みにうねらせると、浩一は溺れた。
 「あぅっぐ! 」
 楽になりませんか?
 もっといい気持ちになりたくありません?
 フフフ、私看護婦だから看護は得意ですよ。
 浩一さんを看護してあげる。
 楽にしてあげる。
 
 浩一の前面にズラリと施されたリングに、藤崎は紐に結わえられた小さなナスカンをカチャリとはめた。
 カチャリ、カチャリ、まるで浩一を吊り橋にでもするように。
 
 「よくがんばった患者さんには〜、」チャリ、金属が冷たい音をゆらす。
 「看護婦さんから特別なご褒美。」

 「今からうんと気持ちよくしてあげる」

 あの人よりももっとイイ気持にしてあげる。
 芯から吸い上げられるように、快楽がしんぼるの先を吸い上げられてゆく。どこまで気持ちよくなれるのか、心配になるほど、快楽が体の管を通って吸い出される。

 特別にイイお薬を使ってあげますね。
 また、藤崎は別の注射器を手にとった。
 もう浩一は嫌がる素振りも見せなかった。
 藤崎の目をジッと見つめ、信頼を繋いでいた。 
 藤崎はうれしくなった。
 浩一は自分を受け入れたのだ。

 浩一の首筋に浮かぶ、血管を指先でコリコリとさぐり、
 「はい、チクッ! 」
 針を突き刺してやった。
 「ング! 」ビクリとこわばる挙動を抱き寄せて押さえ込む。
 「ン〜〜イイコイイコ〜・・・」
 かまわず、薬液を全部押し込んでやる。
 浩一の脳関門を抜け、薬は脳内をあっという間に汚染した。
 「あああ・・・ 」
 すぐに痛みは感じなくなりますよ・・・
 クイクイと刺した跡を押し揉む。

 今注射したのは、浩一さんから痛みを取り除くお薬・・・
 とっても良く効きます。
 ミサトさんの媚薬より効くことを願って愛の気持です。  
 コウイチサンにうんといい気分になってもらおうと思って、愛から浩一さんへのプレゼント。
 受け取ってくださいね。
 
 藤崎が、浩一に使用したのは、洗脳や自白に使われる特殊な薬だった。
 医療に関わる立場からさまざまなルートを使って入手したものだ。
 特殊というのは、精神操作ができるという意味で、被験者に思い通りの誘導が可能になる。
 
 今から浩一に呪縛をかけてやる。
 ミサトがやったように、強力な呪縛だ。
 リングは浩一に快楽を唱え続ける。
 浩一が忘れようとしても、リングが消えないかぎり浩一を悩ますのだ。
 自分でいじって刺激を得ようとするかもしれない。
 しかし、悶絶しながら自分を責めることなどできるわけがない。
 自慰行為ではこの快楽は得られないのだ。
 もう、誰も浩一をイカせることはできなくなり、浩一は自分だけがイカせてやれる特別な存在になるのだ。

 藤崎は努めて、甘くゆっくりと、くぎりながら、浩一に話しかけた。
 「リラックスしてくださーい 」
 「今は愛との気持ちいいことだけを感じてくださ〜い」
 みるみると、浩一の表情から力が抜け、だらしなく弛緩してゆく。
 浩一は再び、曖昧な朦朧とした精神状態に陥っていた。
 看護婦の声、匂い、痛み、全てが快感だった。
 どす黒く怒張したシンボルは鈴口をパックリと穿ち、トロトロと分泌液を垂れ流していた。

 浩一をなだめるように囁きながら、看護婦はいよいよ、先ほどの針金を手にとった。
 先に小さな玉がくっついている。
 その玉でシンボルの先をトントンとノックしてやる。
 シンボルの幹をツルツルとなぞり、巧みに性感を煽ってゆく。
 やがてその先は、シンボルの尿道を集中的に刺激しだした。
 「ンンン・・・ 」
 先ほどのフェラチオで入り口はパックリと口を開き、ドロドロと粘液を噴き出していた。
 玉はなんの抵抗もなくその入り口に潜り込んだ。
 浩一もむずがる様子はない。
 「フフフ・・・ 」
 まったく手応えはない。
 これから先、浩一が痛みに苦しむことはないだろう。
 藤崎は満面の笑みでロッドを深く挿入した。
 「アアアアア〜! 」
 途端に浩一の喘ぎがひときわ上がった。 その声は叫びではなく嬌声だった。
 スー、と、冷たく堅い棒が突き進んでくる。

 その先が、忘れられないあのスポットに到達したそのとき、
 「ヌアッ! 」
 手負いの獣のように喘ぐ浩一に、藤崎は妖しく囁いた。 
 「フフフ・・・ 覚えておいてくださいね、私の超マル秘テクニックですから・・・」
 人差し指でトントンと鍼灸を打つように更に深く奥深く差し込んでゆく。
 「あああ! あああっ! 」スッ、スススッとロッドが沈んでゆく。

 分身に挿入された魔法の杖は、全身から見れば耳かきほどだったが、浩一は串刺しにされたような淫激にショックが大きかった。

 診察台の下から背中を突き上げてくるようなうねりを予感した。
 「う・・・ 」大きな波動が背中に迫る感触を、体毛が真っ先に感じ取った。
 風にそよぐ木の葉のように、全身の体毛がざわめいた。
 すぐにうねりの核心が到達した。
 船底の竜骨を破砕せんばかりの波が盛り上がってきた。
 「むぉ・・・ 」
 背中全体が熱い。 熱い巨大な波に背中が押し上げられてゆく。
 診察台の上で浩一の全身が巨大なアーチが描いていた。
 「ぉおおお・・・ 」
 「フフッ、すご〜い・・・ 」

 藤崎は更に大胆な行動に移った。
 アーチを描く浩一を、はしたなく跨いだ。

 ロッドを完全に浩一の中に差し込むと、亀頭の先にロッドの端の玉がポツンとくっついた状態だ。
 そのまま、藤崎がラビアを左右に開くと、
 帽子をかぶせるように、

 挿入した。
 「フングググ! 」
 熱い看護婦の肉がぬめぬめと浩一を呑み込んでゆく。
 蠢く肉筒の中でロッドの先が当たるたび、ビリッと電撃のような快感が火花を散らす。

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メイド 魔性の快楽地獄