転 男転がし
看護婦になってからは、ようやく普通の生活を手に入れた。
はずだった。
アイの人生は救急治療専門の部署に移って一編した。
緊急事態の連続。
激しい緊張と、張りつめた空気に一人の新米看護婦はジワジワと侵されていった。
試練が懐かしそうにアイを訊ねてきた。
第三の試練は
一人になったアイに襲いかかった。
アイに家族、友人がいれば追い払えたかもしれない。
しかし、アイは孤独だった。
ストレスに弱った心に狡猾な男がつけ込んだ。
友達つきあいの不器用なアイは、たちの悪い男と知り合い、ねんごろになった。
その男の女をたらし込む手管に簡単にはまった。
男に依存するようになると、なしではやっていけなくなった。
男を繋ぎ止めるため、なんでも言いなりになった。
アイはある日現場から特殊な薬品を持ち出した。
男がどうしても必要だと迫ったからだ。
「太田!」それはすぐにばれた。
年輩の医師にばれた。
激しい叱責を受けた。
医師の剣幕は尋常ではなく、二時間にも及んだ。
それが、周到に口裏をあわせて行われていた罠だとは知るよしもない。
何かの薬を飲まされ、アイは意識を失った。
気が付くと、診察台の上で医師が覆い被さっていた。
病院内でアイは犯された。
その医師はアイの弱みにつけ込み、肉体関係を執拗に繰り返した。
やがて、変質者のような行為を要求するようになるまでさして時間はかからなかった。
立場はある日一転した。
この医師に心のほころびを見つけた。
「あ、先生こういうのがおスキなんですか」
医師を足下に寝かし、足で嫐った。
「じゃ、もっとしてあげます、フフフ・・・」
アイは慎重にそのほころびをほどいた。
「先生はもう普通じゃイケない身体になったんですよ」
そして、結び直した。
「オネガイします、イカせてください、って言えたら、フフフ・・・」
自分への服従をかたく結びつけた。
医師はアイにハマった。
「イ、カ、せ、て、あ・げ・る! 」アイの悪魔の笑みに医師は痺れた。
立場が完全にひっくり返された。
医師は藤崎と二人きりになると、奴隷同然に言いなりだった。
いい気分だった。
しかし、事態は思わぬ方向に向かった。
医師が壊れた。
モルヒネに似た特殊な薬を試用したところ、医師が元に戻らなくなった。
この医師と、男の関係も聞き及んだ。
何もかもしゃべり出した。
不慣れな看護婦の責めに精神崩壊を来したのだ。
このときハッキリと何かが覚醒するのを感じた。
アイはその足で自分を陥れた男のもとに出向くと、医師と同じ責めで嫐りあげた。
男を壊す看護婦。
噂は広まり、アイは病院にいられなくなってしまった。