転 男転がし

 ある日、ミサトは大きな仕事があるが一緒にどうか、と誘ってくれた。
 お金持ちの家にいって直接報酬をもらうのだという。
 アイは、喜んで加わった。

 その客は金にものをいわせ、誰にも邪魔されない別荘でのプレイを望んだ。
 二人はそこで、客を快楽漬けにして支配した。
 客は気が触れたように、二人の快楽責めを享受した。
 何度も二人を呼ぶうちに、客は快楽に支配され、その後完全な奴隷に墜ちた。

 奴隷に成り下がって、もっと快楽をと哀願する金持ちに、ミサト達は、代償たる財産の一切合切をさしださせることに成功した。

 全てを奪われる喪失感、苦痛を、究極の快感に昇華させる。
 犠牲者は狂喜し、ゆっくりと衰弱して最後をむかえるが、死ぬ前にミサトの事を他人に話す。
衰弱激しく、恍惚状態にあっても、ミサトの事に関してはハッキリと喋ることができた。
 ミサトがそれを許したのだ。

いまわの犠牲者は、知古の金持ちを見舞いに来させ、全てを捧げた愛人の話を聞かせた。
 欲望の果てに味わう極上の快楽。
 次の犠牲者は、関心を抱いた時点でミサトの網にかかっている。
 見舞いに来た知古の金持ちはミサトについて調べた。
 少し調べると、都市伝説のような噂を耳にした。
 素性についてくわしい事はわからないが、極上のセックスを生業とする商売女。
 この女に快楽で支配され、洗脳を施された者は枚挙にいとまがない。
 最後はみな、おかしな行動をとったあげく、破滅の道をたどるらしい。
 調査報告は、快楽に対する飽くなき欲求と、密かに抱えている破滅願望をチクリと刺激する内容だった。

 実在も確認出来た。

 同じ頃、ミサトは新しい獲物が網にかかったことを感知した。
 網にかかった獲物について調べるのはあっという間だ。
 道順を逆にたどるだげだ。

 まもなく二人は、引き合う磁石のように必然的に出会った。
 ミサトは巧みに興味を煽ってやり、獲物が近づいてきたら安心させ、じっくりと心をときほぐしてやり、癒して惹きつける。
 獲物は、危険な魔性の女にスリルを求めていたはずが、肩すかしを喰らい油断が生まれる。
 甘い砂糖漬けのような関係から、じわじわと毒を混ぜ与え、中毒にしてしまう。
 
 皮膚から受ける快楽だけではなく、毒が体内を駆けめぐり、内側からも汚染してゆく。
 こうして、新しい獲物は、危険な毒と知りつつ、そのとろけるような甘い汁に溺れてゆくのだ。

 関わった男は数知れず。
 みな一人の例外もなく快楽の地獄に堕ちた。
 みなミサトの言いなりになり、最後は全てをさしだして完結となる。

 そして金持ちは、更に金持ちにつながってゆく。
 似たもの同士が鎖で繋がっているのだ。
 二人は芋蔓をたぐるように、獲物達を収穫した。

 ミサトは巻き上げた資産はどこかに隠してしまう。
 それは、行き先が決まっているかのように、翌日にはごっそりと消える。
 詳しいことはわからないが、途方もない財産で何不自由ないはずだ。
 ミサトは大金持ちのはずなのだ。
 
 なのに、ミサトはアイが欲しがるものに代金は払ってくれるが、うず高く積まれた現金や、金塊、宝石は
 一度も触らせてくれないのだ。
 信用されていないのではないか。
 アイはそれが不満だった。
 パートナーの自分にもソレ相応の分け前は当然ではないか、アイはいつもそう感じる。

 いつか自分のお金で自由に欲しいものを手に入れたい。
 あと何回仕事をすれば、自分の望む「何不自由ない人生」が手に入るのだろう。
 ミサトなしで仕事ができれば、それは一回でかなうに違いない。
 まさか、ずっとこのままの人生が続くのでは。
 ミサトに従ってきたアイは、このごろ、ミサトに対する不満をくすぶらせていた。

 そんなある日、大きな決断を迫られた。

 国内最大の不動産会社を陰から操っている人物が網にかかったのだ。
 ミサトは浩一の父を最後の仕事に、国外に身を潜める頃合いだと漏らした。
 ミサトが言うには、この国も手狭になってきたらしい。 
 
 長期の仕事で、ミサトに綿密な計画をうち明けられたとき、犯罪色のかなり濃いものだと知った。
 そしてミサトは藤崎に整形を勧めた。
 
 「もう今までのあなたを卒業しましょう。」アイが気が進まないときは、ミサトはいつもアイにマッサージを施しながら話しを進めた。

 「まったくの別人になって最後の仕事に打ち込むの。」ズルイ、とアイは目を閉じた。 目を閉じるともっと気持ちよくなってしまう。 心地よいミサトの声が優しく諭すように語りかけてくると何も言い返せなくなる。

 (ああ・・・ズルイズルイ・・・ )焦れったい快楽に、アイは堅く目を閉じ身悶えした。
 「この最後の仕事が片づいたら、あなたは、好きにすればいい。」うん、そうしよう、そうしたかったのだ。
 アイはミサトの指がもっと核心に触れてくれるのを待ちこがれていた。
 (は、ア・・・早く早く! )アイは腰を浮かしたり、ぎこちなく位置をずらして催促した。

 ミサトの指が心地よさから快感へと編み方を変えてきた。
 指が焦らすようにアイの性感帯をソフトに刺激してくる。
 唇がしまらなくなり、口の中はヌルヌルになった。

 「そのときは、今までの儲けは仲良く半分こにしましょう 」ミサトの指先はアイの花心の側を執拗にくすぐった。

 それは、花びらの感触を探るような繊細な指使いだった。
 (プァア・・・)アイの唇がほころび、ツツーッと、よだれがあふれだす。 ミサトはアイの口に指を挿入した。

 ミサトの腕をつかもうとするが、もう片方の腕がアイの花びらをかきわけ、花心を指が到達した。
 (ヒャ・・・ )口の中をミサトの指がヌルヌルと嫐る。 口の中が性器になったようでアイは恍惚とした。

 クチュクチュとミサトの指が出入りする。 
 (アアアッ!) アイは声にならない悲鳴をのど元で押しとどめ、突っ張らせた両足を、バタンとベッドに落とした。
 (い、イッチャ、イッチャウゥ〜〜!! )

 ヒラリ、とミサトがポイントをはずした。
 絶頂寸前まで上り詰め、真っ白に視界が眩んだまま、アイは悶絶した。
 (ヒィ! い、いやっいやいぁ! )
 「フフ、イキそうだった? 」

 「ウウウッ! ブウウウウ・・・ 」アイはうなって抗議しようとした。

 「まだ話の途中でしょう? 」ニヤニヤとほくそ笑むミサトは、悪魔だとアイは思った。
 (ヒャァ! )ミサトの指が上下を同時にかき回した。
 (アアアア! )
 手に力が入らない。上も下もミサトの指にかき回され、世界がぐるぐる回り出した。

 アイの両手は、両手で幻をつかむ仕草をした。 目がうつろだった。
 (もっと・・・ )ミサトの指は甘かった。 スーッと口の中が涼しくなり、よだれがどんどん溢れてくる。
 (もっと!)アイは夢中で舐めしゃぶった。
 ミサトが指を抜こうとすると、アイは両手に抱えるようにしてむさぼった。
 その有様にミサトは冷たい笑みを浮かべながら話を続けた。

 「そして私についてくるのも自由。 この国に残るも自由。 元の自分の顔に戻るのなら、腕のいい人を紹介するわ」

 変だ。 アイの中で警告ランプが点滅した。
 ミサトは妙に気前のいいことを言う。

 そんなときのミサトは、必ず切り札になる一言を後ろ手に隠し持っている。
 ミサトの指を求めてアイは下半身をよじらせ、口の中のミサトの指を両手で激しく動かした。
 「ウウッ! ウウッ! 」

 ミサトは口の中から濡れた指を抜き出し、その手をあごから首、胸、更にその先に進めた。
気が遠くなるほど長い時間をかけて、ゆっくりと足の付け根に向かってくる。

 「でもね、もうあなたは過去を必要としないはずよ。やめられなくなっているはず。」
 指先がスルリと花心に滑り込んできた。
 「アアアッ! 」
 「男を征服する快楽から抜け出せなくなっているわ」ミサトがズボズボと指を前後させると、アイはブルブルとわなないた。
  
 「あなたも、私とおんなじ。」
 十分とどめになる言葉だった。

 ああ、そうなのだ。
 不平不満をくすぶらせながらも、ミサトに従ってきたのは、その為なのだ。
 アイもミサトも「それ」が好きでたまらない。
 自分たちになぶり尽くされて精神も肉体も屈服する過程がおもしろくて仕方がないのだ。

 ミサトの指が二本、三本と代わる代わる中をかき回し上下に擦り始めた。
 「ムアア! フアアッ!」男どももこんな快感を味わっているのだろうか。
 ミサトの指は魔法の指だった。 これを味わったらすべてが霞んでしまう。
 両手の指が下半身を無数の舌となってヌルヌルと性感帯をなぶり尽くす。
 (ヒッ、ヒッい、い、イッチャウゥ〜〜! )四肢の感覚がなくなり、アイはグゥゥっとのけぞった。

 「イキなさい」ミサトの低い命令口調に、ピーンと弦がはじかれたようにアイは絶頂に上り詰めた。
 「ヒヤァン! 」
 脳が激しい蒸気をあげながら、溶けていく。
 (アウフ、ファフ・・・)
ミサトの声が遠くかすかに聞こえる中、アイは真っ白になった。

 アイは整形手術を受ける決心をした。
 抵抗はあったが、ミサトの言うとおりだった。
 もう、跡にはもどれない。
 危険な匂いがしたがミサトについてゆく覚悟を決めた。

 

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メイド 魔性の快楽地獄