支配




それは峰の人間としての
心の隙間でもあった。その隙間は峰の心の奥に植えられた、
妖しい、「何か」が、内側からこじ開けたかのようであった。
小さな隙間だが、その心の奥に植えられた「何か」と確実に
つなっがた、深い、隙間でありそこから、「何か」は外に向かって
成長を始めていた。しかし、峰本人は「何か」の存在に
ついて知るよしもない。ただ、今の自分にとまどうだけであった。

反面、峰の前にいる魅力的な女性達は「何か」について、よく心得ており、
峰の微妙な変化にも気付いていた。
「何か」を峰に植え付けたのも彼女達の手によるものである。
彼女達は「何か」を植えられた男の扱いにも手慣れていた・・・・

(言い直さなくては、)
峰が何かを言おうとした刹那、
「あの、課長さん、もっと本格的なマッサージがご希望でしたら、
わたしのマッサージを試してもらえませんか?
ふふふ、こうみえてもわたし、部長に負けないくらい巧いんですよ。
部長が他の方に本格的に、されるのをわたし、見て覚えたんです。」
谷玲子はそういって身を乗り出してきた。
「部長、かまいませんよね。わたしも部長のように、
してみたいんです。」
須藤カンナは笑みをくずさず、

返答に困っている峰に流し目をくれると、
「かまいませんか?  」と肩をすくめて返事を促してきた。

峰はできれば谷玲子の申し出を受けたいところだが、
そろそろ、斉藤薫が部長に伴って戻ってくる手はずになっているのだ、
二人が商談室でマッサージを受けている峰を見たら、なんと
思うだろうか、部長も斉藤薫もいい気分はしないだろう。
商談の結果次第では変な噂にでもなるかもしれない。

しかし、谷玲子の指で本格的なマッサージを受けたら
その心地よさは格別だろう。
しかし、今は時間も場所も事情がよくない。
峰は断ろうとした。息を吸って声に出そうとしたとき、

「課長さん?もう、遠慮はいりませんわ、ここが、商談室でも
よろしいんじゃありません?」

峰が断りを口にしようとしたその刹那、
須藤カンナは鈴を転がすように峰の返事をさえぎった。
(は・はぁ・いや、しかし・・)

「さあ、こちらへ・・・」
須藤カンナは白い指をひらひらさせながら、
峰を手招きしている。

「さあ、いらっしゃいな・・・」
「課長さーーんこっち、こっちよ、」

(は・はい・・)
ひらひらと誘う須藤カンナと谷玲子の指をみた途端、
峰の頭の中は霞みがかかったように、
また、ぼんやりとしてきた。
先ほどと同じで下半身にジーンとした
微弱な快感が走った。

「こ・ち・ら・へ・・」
須藤カンナはうっとりするような笑顔で子供を呼び寄せるように
優しい声で峰を促した。
「来なさい・・・」
「ハ、ハイ」
(べべ、、別に見、みらられて困るようなことない。)
(こんなななチャンスないんだ。)

峰はふらふらと席を立つと向かいの二人の待つ
ソファーに引き寄せられるように進んだ。
二人は峰の為にソファーの端に寄って、場所を用意した。


「課長さん、ここ、ここに座って。」谷玲子は甘い声で
峰を誘う。

谷玲子が峰に向かって微笑みながら、腕をさしあげ、
妖しく指を小指から人差し指に順番に魔法の糸を
たぐるように蠢かしている。

もう、峰はその指に頭の中をかき混ぜられているような
感じになっていた。
(あの指ででで感じたい。か・かかまうものか。)
もはや峰に二人の魔性の魅力に逆らう術はなかった。
峰は二人の間に取り込まれるように腰をおろした。
「いらっしゃい、ふふふ・・」
谷玲子と須藤カンナの二人の香水と体臭の混じった
雌の匂いに峰は泥酔し、意識は二人の声に従うだけであった。

そんな峰を須藤玲子は満足気に笑みを浮かべ眺め、
谷玲子に視線で合図を送った。
谷玲子はかすかに頷いて答える。


「課長さん、すこし身体を起こしてもらえます?」
「そう、そう、」
谷玲子に促されるまま、、
峰はソファーにすわったままで上半身を少し起こした。
いいなりである。
「もう少し前に腰をずらしてください。」
谷玲子は席を立ち、
峰の後ろに周り込むようにソファーの背後に立った。

「はい、いいわよ、楽にして。」
須藤カンナがあやすように峰の上半身を倒す。
と同時に背後に位置した、谷玲子の手がたぐるように伸びてきて、
峰は上半身をソファーに預けた。
峰の背後から背もたれに浅く横座りの体勢をとった谷玲子が
そのまま、峰の背中を引き寄せ包み込むように柔らいヒップに頭をもたれさせた。
峰は後頭部を谷玲子のヒップに乗せたまま目をあげると
谷玲子の蠱惑的な瞳がじっと見つめ返していた。
逆さまに峰の顔を覗き込む表情は
深い井戸をのぞきこむように好奇心に満ち、
彼女の髪の毛は
峰の顔のすぐそばまでかぶさってくる
ゆらゆらとゆれ、彼女の匂いを発散していた。

そして白い指を峰の額から頬、首筋に這わせ
「力をぬいてリラックスしてくださーい。」
両手の指は峰の顔を愛撫し、峰のまぶたを這う。
「目は閉じていてくださーい。」
谷玲子の指の感触が瞼を弛緩させ、
峰は無意識に目を閉じた。

  
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